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2010年1月 1日 (金)

サバンナの風に聴く(4) 動物たちの「時間」

新年あけましておめでとうございます。

2010年になりました。

年末は私たちにとってひとつの句読点であり、年始にまた新たな
ストーリーを綴りはじめる…まだ白紙の原稿用紙にどんな物語が
描かれていくのか、楽しみです。

さて、お正月ということで、それに関連した動物のお話でも…と
思ったのですが、なかなか思いつきません。

干支のトラにまつわる話は、いろいろな方がブログなどで書かれて
いるでしょうから、そちらにゆずることにして…さて、何を書こうか?

うーん、と、パソコンを前にしてしばらく考え込んでいましたが、
やはり思いつきません。

というのも、アタリマエの話ですが、動物たちにとっては「元旦」とか
「新年」といった歳時の概念がなく、「新年明けたから」といって特に
なにかがあるワケでもないからです。

新年早々、そんな風に言い切ってしまうと、身も蓋も無いですが…

でも、動物たちにも「時間」というモノがあるんじゃないか、と思います。
ただし、この場合の「時間」とは、私たち人間が定義した「24時間」とか
「60分」という時間ではなく、自然のサイクルのことです。

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【サバンナの日の出】(ケニア・マサイマラ国立保護区)

野生動物たちは、「生きる」「子孫を残す」ために時を重ねています。
「生きている」という瞬間の積み重ねが、野生動物たちにとっての
「時間」であり、その集積が「一生」という区切りになっているのです。

では、野生動物たちは「現在」しか生きていないのか、というと、そうでも
ないように思います。

生まれた子供たちは、厳しい自然界の中で生きて行く術を学び、そして
経験を積み重ねながら生きていきます。

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【ハンティングをするチーターの兄弟】(ケニア・マサイマラ国立保護区)
まだ若いチーターで、この時はヌーのハンティングに失敗。
こうした失敗を重ねながら、ハンティングを学んでいきます。

経験を積み重ね、生きていくための知恵を得ていく…
野生動物は、本能で生きているように見えますが、私たちと同様に
やはり過去の経験から学ぶことで現在を生き、未来に命をつないで
いくのです。

チーターやライオンが狩りをする方法も。
ゾウの群れが豊かな草を求めて移動していく方法も。
ヌーが命がけでマラ川を渡っていくことも。

それらは本能だけでなく、世代に引き継がれてきたもの、つまり、
過去から学び、積み重ねられ、未来に引き継がれていくものです。
そういう意味では、野生動物たちにも「過去」と「未来」があるのです。

しかし、動物たちの「過去」と「未来」は自然のサイクルと深く関わって
おり、私たちが考える「過去と未来」とは大きく異なるものです。
もし、その自然のサイクルが崩れてしまったら…
野生動物たちは、生きていくことができなくなってしまいます。

地球の歴史の中には、これまでに大きな気候変動がありました。
ヒトを含め、現在地球上にいる生物はすべて、そうした気候変動を
生き延びてきた結果、存在しています。

しかし、これまでの気候変動は「万」単位の年数で起こったもので、
その間に生物は進化することで変動に対応し、生き延びてくることが
できました。

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【サバンナの百獣の王、ライオン】(ケニア・マサイマラ国立保護区)
食物連鎖の頂点に立つライオンも、自然のサイクルが崩れると
生きていけなくなります。


百年単位での気候変動では、生物の進化は追いつかず、ましてや
数十年単位の気候変動になると、野生動物たちの「経験」と「知恵」
の積み重ねでは、とても追いついていけなくなってしまう…

そして、生態系のどこか一部が崩れてしまうと、食物連鎖が断絶し、
野生動物の全てが生きていけなくなってしまうのです。

数万年もの間、淡々と積み重ねられてきた自然のサイクルがいま、
私たち人間によって崩される危機にあります。

私たちは、文明を築き上げたことによって、自然のサイクルから
離脱して生きることができるようになりました。
それによって享受できたものは大きく、文明社会をことさらに否定
するつもりはありませんが、自然のサイクルから離脱して得たものが
ある一方で、失われていくものもあるという意識は持ちたいものです。

野生動物が生きていけなくなった地球というのは、人間にとっても
決して「住みやすい地球」ではありません。

野生動物が生きていける環境を作るということは、人間にとっても
住みやすい環境を作る、ということに他なりません。

動物たちと、私たちが生きていくために何をしていくべきなのか…
まずは身近なこと、私たちでもできることから、取組んでいきたいと
思います。

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【人間と動物たちの共存】(ケニア・マサイマラ国立保護区)
サバンナの真ん中をマサイ族の牛たちが通過していきました。
人間と動物たちは、必ず共存できると信じています。


年始早々、重たい話題になってしまいましたが…

今年は国連が定めた「国際生物多様性年」にあたり、10月には
名古屋市で「生物多様性条約締約国会議」が開催されます。

あまり聞きなれない条約の会議ですが、湿地保存を目的とした
「ラムサール条約」や、絶滅のおそれがある生物の国際取引を
厳しく制限している「ワシントン条約」などの限定的な条約を包括し、
地球上の生物全体の多様性を保全し、人間と共存していくことを
目的とした、とても大きく重要な国際条約です。

その会議が日本で開催されることで、私たちの「生物の多様性」、
つまり、大きな意味での「自然のサイクル」への関心が高くなる
ことを願っています。

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【この子たちが、次の世代につながる】(ケニア・マサイマラ国立保護区)
子供たちが次の世代を作っていくのは、人間も野生動物も同じです。


今年もまた、動物たちからのさまざまなメッセージを写真に載せて
お伝えするべく、ケニアや日本各地の動物園へ行って動物たちの
表情を撮り続けたいと思います。

本年もよろしくお願いいたします。

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