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2010年3月

2010年3月29日 (月)

「シマウマの強制引っ越し」に思う

3月25日の朝日新聞「世界発2010」に、干ばつが続き草食動物が
激減したケニアのアンボセリ国立公園へ、ライオンのエサとするために
ケニア各地からシマウマとヌーを計7000頭「引っ越し」させる計画が
始まった…という記事が掲載されていました。

以前にこのブログでも、ケニアでは昨年雨季に雨が降らず、大干ばつ
になって多くの草食動物が死んだ、という話を書きましたが(その時の
コラムはコチラ)、キリマンジャロを望むアンボセリ国立公園では2007年
以降、年に2回の雨季にほとんど雨が降らず、他の地域よりも深刻な
干ばつが続いています。

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キリマンジャロを望むアンボセリ国立公園

干ばつが続くと草や水が不足し、草食動物が生きていけなくなります。

新聞記事によると、アンボセリ国立公園では「シマウマが約7000頭から
982頭に」「ヌーは約1万2千頭から143頭に」減ったというのですから、
これはもう「激減」というよりは「全滅」に近い状況です。

ここまで草食動物が激減すると、ライオンなどの肉食動物も食べ物に困り、
国立公園周辺で遊牧をしているマサイ族の家畜を襲いはじめてしまいます。

家畜が襲われるというのは、住民にとっては死活問題ですから、相手が
貴重な野生動物であるライオンであっても、自分たちの生活を守るため
には殺してしまうことがあります。

いっぽう、ライオンは観光立国であるケニアにとって貴重な「観光資源」。
観光客に人気があるライオンが周辺住民に殺され、減ってしまっては、
観光客も減り、ひいては国の経済にも悪影響を与えかねない…。

今回の「引っ越し作戦」は、住民とライオンたちとのそうした軋轢を防ぎ、
両者の「共存」を図ることで国の経済を守る、苦肉の策ということでしょう。

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観光立国のケニアにとって、確かにライオンは重要ですが…
(マサイマラ国立保護区)

ただ、草食動物が激減した今回の原因は、気候変動や異常気象が原因で、
シマウマやヌーを引っ越しさせるというのでは、根本的な解決になりません。

今回のような引っ越し作戦では、再び干ばつが起きたら同じことの繰り返し
になるし、狩りやすい家畜の味をおぼえた肉食動物が、そう簡単に元通り
野生動物を狩るようになるとも思えません。

そういう点で、この「引っ越し作戦」はかなり場当たり的な策なのですが、
私には「なぜ、そんな対策を…?」と批判をする気にはなれません。
それは、こうした対策を採らざるを得なくなった背景には、私たち自身も
決して無縁ではない、と思うからです。

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ヌーやシマウマは、サバンナの生態系を支える動物です。
(マサイマラ国立保護区)

地球温暖化の原因は二酸化炭素などの温室効果ガスにある、というのが
有力な説ですが、アフリカ全53カ国が排出する二酸化炭素の総排出量は
全世界のたった3.6%に過ぎず、アメリカ、中国、ロシアはもちろん、EU、日本、
インド各国の総排出量にも満たないのです。

いっぽうサバンナの生態系は、乾燥化ギリギリの気候の下に成り立っており、
わずかな気温の上昇であっても乾燥化が進行し、生態系を崩しかねない…
という、非常に脆く微妙なバランスの上に成り立っています。

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サバンナの動物たちは、微妙なバランスの上で生きています。
(マサイマラ国立保護区)

二酸化炭素の排出が少ないはずのアフリカが、アフリカ以外の国々の
影響で温暖化(=乾燥化)が進み、野生動物の生態系が崩れつつある…

さらに言えば、乾燥化が進むことによってアフリカの人々が耕作できる
地域がどんどん狭まり、野生動物たちが住む場所をさらに追われていく
だけでなく、アフリカの人々の貧困が加速度的に進んでいる、とも言われ
ています。

つまり私たちは、アフリカの野生動物や人々の生活と無縁ではない…
と言っても過言ではないのです。

幸いなことに、私たちの身の回りでは温暖化の直接的な影響がまだ少なく、
リアリティに欠ける部分がありますが、地球上では既に影響が顕在化して
いる場所があり、野生動物たちも危機的な状況に陥っています。

そんな現実を知りながら、私たちに何ができるのか考え、小さなことから
でも取組んでいきたいものです。

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この子たちが成長していける環境を守るのも、私たちです。
(マサイマラ国立保護区)

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2010年3月24日 (水)

サバンナの風に聴く(9) キリンの首は長いけど…

以前に「キリンの首とゾウの鼻」というお話を書いたことがあります。
2部構成だったのですが、第1話は「キリンが長くなった理由」について、
第2話は「ゾウの仲間には鼻が短い動物がいる」という内容でした。

この2つのお話は、今でもよくご覧になってくださる方が多いので…
今回は、その続編をお話しようと思います。

今回の主役も、キリンです。

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マサイキリン (ケニア・マサイマラ国立保護区)

キリンだから首が長いのか、首が長いからキリンなのか…
まぁ、そんなことはどうであれ、キリンの特徴といえば誰が言っても
「首が長い」ということになるでしょう。

地球上でもっとも背が高い動物であることは言うまでもありません。
体の高さは5メートル以上にもなりますから、もし日本の道路を
オトナのキリンが散歩している時に、目の前に歩道橋が現れたら…
キリンは頭を下げないと、ぶつかってしまうのです。
(日本の歩道橋は、路面からの高さが4.7mです)

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ロスチャイルドキリン (ケニア・ナクル湖国立公園)

長い首が特徴のキリンですが、脚もとっても長い動物です。
その長い脚でサバンナをゆっくりと歩いていくキリンの姿はとても優雅で、
サバンナの悠然とした空気の流れを感じさせてくれます。

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朝陽の中のマサイキリンの群れ (ケニア・マサイマラ国立保護区)

その背の高さゆえに、他の動物が食べられない、木の上にある葉を
食べることができて、サバンナで生きていく上では有利なのですが…

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背が高いからこそできる、こんな食べ方!
マサイキリン (ケニア・マサイマラ国立保護区)


逆に不便な時もあります。それは、「水を飲むとき」です。

あたり前の話ですが、サバンナでは水は地面に、さらに実際には地表より
やや窪んだ低い場所にあります。逆にキリンの口は、これまたあたり前の
話ですがキリンの頭…つまり、キリンの体のいちばん上の部分にあります。

…ということは、キリンが水を飲むためには、5mもの高さにある頭を0m、
いや、地表面よりさらに下まで下げないといけないのです。
でも、キリンは脚が長いので、首を下げただけでは地表に口が届きません。

さて、どうするのでしょう。

前脚を折りたたんで背を低くして飲む?

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イボイノシシは、前脚を折りたたんで地面の草を食べます。
キリンもこんな風に前脚をたたむ!?(マサイマラ国立保護区)


それとも、腹ばいになって背を低くする?

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ライオンは大胆にも腹ばいになって水を飲みます。
キリンもこうすれば、水を飲めるかも!?(マサイマラ国立保護区)


では、実際にアミメキリンさんにやっていただきましょう!

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まずは脚を大きく開きまして~
アミメキリン(ケニア・サンブール国立保護区)


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こうして水を飲みま~す (同上)

ちょっと…辛そうですね。

キリンは脚が長いため、前脚を折った姿勢を取ると、立ち上がるときに
時間がかかってしまいます。水を飲む時は油断をしている時なので、
ライオンなどに襲われやすい時でもあります。

危険を感じたら、すぐに逃げなくてはいけない…というワケで、前脚を
折って水を飲むなどということは、とうていできないのです。

でも、そのキリンが前脚を折るだけでなく、後脚も折りたたんでしまう
こともあります。

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疲れたなぁ~ マサイキリン(マサイマラ国立保護区)

キリンも、四六時中立っているワケではなく、時々こうして座り込んで
休むことがあります。そして…

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むむ、ナンだかちょっとカユイかも… (同上)

などと、すっかりとくつろいでいるキリンもいたりします。

よく、「野生の草食動物は立ったまま寝ている」と言われますが、
キリン以外の草食動物でも、座り込んでいる光景をよく見ることが
あります。シマウマでは大胆にも…

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ゴロ~ン  グラントゼブラ(ケニア・マサイマラ国立保護区)

…と、横になってしまうことも。

ただ、こんなことをしているのも短い時間だったり、周囲に仲間や
親兄弟などの見張り役がいたりして、比較的安全な場合だけで、
いつもいつも、こんなことができるワケではありません。

さて、キリンに話を戻しましょう。

ここで、ちょっと意外なお話をひとつ。

キリンは、とっても首が長いのですが…実はキリンの首の骨の数と、
私たち人間の首の骨の数は同じだ、ということをご存知でしょうか。
さらに言えば、実は哺乳動物というのはナマケモノとマナティを除き、
全て首の骨の数が同じなのです。

つまり…

小さなネズミも、首が長いキリンも、首がほとんど無いようなカバも、
そして私たちヒトも、みんな首の骨の数は7つなのです。

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キリンの首の骨…7つあります (埼玉県こども動物自然公園)

キリンもあんなに首が長いんだから、もっと首の骨の数が増えれば、
もしかしたら水だって簡単に飲めたかもしれないのに…

と、思うところもあるのですが、それが進化の不思議なところです。
「なぜ、哺乳類は首の骨が7つなのか」という明快な理由については、
私が少し調べた限りでは見つかりませんでしたが。

でも、首の骨が私たちと同じ数だからこそ、あの美しいキリンの姿がある
と言うこともできるわけで、そう考えるとキリンの首の骨が進化して9つや
12個になっていなくて良かった…とも思うのです。

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long neck

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2010年3月21日 (日)

コウモリのさか立ち

ここのところ、長崎バイオパークの動物の話題が多くて恐縮ですが…

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ん?また長崎バイオパークの話題かい?

おっといきなりコンゴウインコに睨まれてしまいました。

はい、すみません…
そうなんです、また長崎バイオパークのお話なんです。

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長崎バイオパークといえば、ボクのことでしょー!んがーっ!!

いや、でも、今回はカピバラさんのお話ではないのです。

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今回は、誰のお話かい?

はい、今回は…コウモリのお話です。

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ん?ボクのこと??

そう、コウモリさんのことですよ。

カピバラたちがいる広場に行く途中にある、「フラワードーム」という
温室の中に2匹のインドオオコウモリがいて、いつも木からぶら~んと
ぶらさがって私を迎えてくれます。

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また来たの?遠路はるばる、よく来るねぇ…

ご存知のとおり、コウモリは「さかさま」に下がっています。
もっとも、コウモリたちにとっては、その姿勢が「さかさま」ではなく、
「いつもどおり」の姿勢なのでしょうけれど…

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ん?ボクから見れば、みんながさかさまに立ってるんだよ。

うーん、確かにそうかも。

さて、先日のブログで「悪役のイメージがある動物」としてオオカミ
ご紹介しましたが…コウモリもまた、同じようなイメージを持たれて
しまう動物のひとつではないでしょうか。

イソップ童話には「卑怯なコウモリ」という、コウモリにとってはなんとも
かわいそうな題名の話があったり、吸血鬼のイメージだったり…。
典型的な「悪魔」のスタイルは、コウモリをイメージしているものが多く、
「悪役」というよりは「怖い」というイメージが多いようです。

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ボクは血なんか吸わないのになー

そうなんです。
コウモリには約1000もの種類があり、確かに中には血を吸う種も
いるのですが、それはほんのわずか。ほとんどのコウモリは、果実や
虫を食べています。

オオカミと同様、「コウモリ=怖い」というイメージは西洋からの影響で、
中国では幸福や長寿の象徴とされており、日本においても歴史的には
縁起の良い動物のひとつとされてきました。

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長崎の唐寺のひとつ「崇福寺(そうふくじ)」の門には、
縁起の良い動物としてコウモリが描かれています。


さて、インドオオコウモリ。

コウモリは非常に高い周波数の音波を出し、物体に当たって反射してくる
音波を使って障害物や餌を察知し、暗い夜空や洞窟の中を飛び回る、
ということをご存知な方も多いと思います。

しかし、インドオオコウモリはそうした「音波探知」はしないのです。
その代わり、大きな目で視覚的に障害物を察知し、嗅覚で餌を探します。

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ふぁ~っ、また話が長くなってきたねぇ…

あらら…インドオオコウモリくんにも、あくびをされてしまいましたか…

さてさて、いつも頭を下にしてぶら下がっているインドオオコウモリですが、
おしっこをする時はいたいどうするんでしょう?

ぶら下がったまますると、自分にかかっちゃいますよね。

実は、おしっこをする時は、ちゃんと「さかだち」をするんです。

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おしっこ中を撮るなんて、失礼しちゃうよなー

す、すみません…

これがコウモリの「さかだち」です。
こうすれば、おしっこをしても自分にはかかりませんね。

長崎バイオパークのインドオオコウモリは、けっこういろんな姿勢を
してくれて、見ていて飽きません。それに、よく見ると目が大きくて
鼻先もとんがっていて、けっこうカワイイ!(と、私は思います)

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カワイイだなんて、嬉しいことを言ってくれるねぇ

その顔つきや体つきが、小型のキツネに似ているということで、
インドオオコウモリの英語名は、なんと「Indian Flying Fox」なのです。

いろんな表情を見せてくれるので、けっこう長い時間粘って写真を
撮るのですが、実はコウモリのおしっこはアンモニア臭が強烈で、
最後はその刺激に耐え切れなくなって退散してしまいます。

でも、「ぶら~ん」とぶら下がって迎えてくれる2匹のコウモリを見ると、
カピバラたちの所へと急ぐ足がついつい止まり、呼吸を止めながらも
写真を撮りたくなってしまうのです。

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たまには「さかだち」して、運動でもしないとねー

ちなみに…
インドオオコウモリはけっこう長寿で、だいたい20年くらい、中には
30年も生きた記録があるそうです。

夏の暑い時期に、長崎バイオパークのインドオオコウモリに会いに
行くと、「暑い、暑い~」と翼でバタバタと扇いでいる姿を見ることが
できるので、ぜひ見に行ってみてくださいね!

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2010年3月18日 (木)

いつも一緒だね(3) クロサイのサニー

サイはゾウやカバと並ぶ大型動物として、お馴染みの動物ですが、
野生のサイは非常に数が少なく、絶滅が危惧されています。

数が少なくなった理由は、言うまでもなく立派な角を目的とした乱獲で、
野生のサイが分布しているアフリカ、東南アジアでは現在でも密猟が
絶えないそうです。

現在、地球上には5種類のサイがおり、アフリカにいるのはシロサイと
クロサイの2種。クロサイはサバンナのBIG FIVEのひとつに挙げられて
います…ということは、クロサイはかつては「ハンティング対象の大物」
とされていたワケで、現在はその数も非常に少なく、アフリカ全域でも
3000頭程度しかいない、と言われています。

ケニアへ10回以上行っている私も、クロサイには数回しか出会った
ことがなく、サファリでクロサイを発見したときは大喜び、いや、大興奮
してしまいます。

世界の動物園で、種を絶やさぬようにクロサイの繁殖が試みられており、
日本でもいくつかの動物園でクロサイが飼育されています。

そんな動物園のひとつ、茨城県の日立市かみね動物園で、2009年の
3月にクロサイの赤ちゃんが生まれ、公開されているとう情報を聞きいて、
さっそく5月に会いに行ってきました。

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クロサイのサニーで~す

クロサイの子供はメスで、名前はサニー。
その名に相応しく、元気いっぱいにパドックを跳びまわっていました。

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ランランラ~ン♪

時おり、お母さんのマキから離れてピョンピョンと跳びまわりますが、
やはり大好きなお母さんと一緒が良いようで…

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かあちゃ~ん、どこいくの?

ちょっと離れても、スグにお母さんのところに戻り、どこに行くにも
お母さんのあとをついていきます。

お母さんが木の葉を食べようとすると…

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かあちゃん、コレ、何なの~?

…と、一緒に食べる真似をしてみたり。

お母さんがひと休みしようとすると…、

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かあちゃん、わたしも一緒に休むぅ~

…と、お母さんの横で休んでみたり。

そしてまたお母さんが動き始めると…

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かあちゃん、どこ行くの~?

…と、また後ろをついてきたり。

とにかく、お母さんが大好きで、お母さんと同じことをしたがります。

お母さんもそんなサニーに、愛情たっぷりに接してあげていて…

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かあちゃんに付いてまわって、疲れたよ…

…と、へたり込んでしまったサニーちゃんを、

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あらら、サニー、そんな所で寝たらダメよ~

…と、サニーを角でやさしく押し上げて、

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さあさあ、行きましょ

と、サニーに動くようにうながしてみたり。

お母さんも、いつもサニーを気に掛けていて、サニーが離れていくと
何気なく近くに寄り添っていきます。

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まったくサニーは、おてんばなんだから…。

そんなおてんばサニーも、やっぱりお母さんのお乳が大好きです。

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どんどん、大きくなりなさいねー

このサニーも、今はもう1歳になります。
きっと、ずいぶんと大きくなっていることでしょう。

かみね動物園のサイのパドックには、桜の木が植えられています。
桜が咲く頃に、また会いに行ってみようと思います。

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いつも一緒だね!


Black Rhino

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2010年3月14日 (日)

オオカミって、悪者なの?

私たちは動物をいろいろな例えに使ったり、象徴的なものとして崇めたり、
時には忌み嫌ったりします。

ひと頃、「動物占い」という占いが流行りましたが…
その頃は、「私はタヌキなんだけど、あなたは?」「僕はクロヒョウ」などと
いった会話が飛び交っていました。(ちなみに私はトラです)

古くは神話や伝説の世界にも動物たちは頻繁に登場し、童話などにも
様々な動物たちが現れてきます。それは、家畜だけでなく、野生動物も
私たちにとって古くから身近な存在で、生活にも深いかかわりがあった
からに他なりません。

さて、そんな「登場人物」ならぬ「登場動物」の中で、いつも「悪役」になって
しまう動物のひとつが…オオカミでしょう。

実はオオカミは、古代ローマでは豊穣の神として神格化されていたり、
「民族の始祖」とする伝承が各地に残っていたりするそうです。

それはたぶん、農作物を荒らす動物を捕食する益獣として「豊穣の神」
とされたり、野山を駆け回り、集団で狩りをする姿を強さの象徴として
「民族の始祖」としたのかもしれません。

しかし…

私たちがオオカミに持つイメージは、「悪役」が強いのではないでしょうか。

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なんでボクはいつも悪役になっちゃうんだろう…
(ヨーロッパオオカミ 多摩動物公園 ~以下全て同じです)

私たちが親しんできた童話の中にも、オオカミはよく出てきますが、
「赤ずきんちゃん」「おおかみと七匹の小やぎ」「三匹の子ぶた」…
どれをとっても、オオカミはやはり悪役です。

たぶん、そんな童話の世界から「オオカミ=悪役」というイメージが
私たちには定着してしまったのでしょう。

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かあちゃん、ボクは何も悪いことしていないよ…

ところが、日本の伝説には、オオカミが悪役として出て来ることは
あまりありません。むしろ、「オオカミ」の語源は「大神」であるとされ、
古くは日本書紀の中にも「貴神(かしこき神)」としてオオカミが
登場してきます。

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日本でもヨーロッパでも、昔は「神」だったんだよねー。

これは、あくまでも私の推察の域を出ないのですが…

農耕が盛んであった時代には、農作物を荒らす動物を捕食する
「益獣」としてオオカミは考えられ、その後ヨーロッパを中心に
牧畜が盛んになると、オオカミは家畜を襲う「害獣」になってしまい、
悪者の代名詞になってしまったのかもしれません。

他の野生動物と同じく、オオカミも決して好き好んで家畜を襲って
いたわけではなく、人間がオオカミの住処である森林を切り払って
生活領域を広げた結果、オオカミと人間との間に軋轢ができて
しまった…というのは言うまでもありませんが。

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うーむ、だんだん話が難しくなってきたんじゃないかい?

実際のオオカミの生態はどうか、というと…

シートン動物記の「オオカミ王ロボ」という話を読まれた方も多いと
思いますが、動物記の中でも、オオカミは家族の絆が非常に強く、
厳しい自然環境の中で協力し合いながら、たくましく生きていく姿が
描かれています。

その姿には「悪者」といったイメージは全くなく、むしろ愛情にあふれ、
気高く生きている野生動物…といった印象が残ります。

20081122tama_d30_4041
そんなことまで言われると、照れるじゃんかねー。

多摩動物公園にいるヨーロッパオオカミたちは、その名も「ロボ」を
中心とした大家族。動物園なのでさすがに「たくましく生きていく姿」を
見ることはできませんが、家族の絆の強さを見ることができます。

現在では、オオカミが野生動物の生態系を維持するために重要な
役割をしていたことが再認識され、既に絶滅してしまった(実際には
害獣として駆逐してしまった)地域でオオカミを再導入し、生態系を
復活させる試みがされています。

アメリカのイエローストーン国立公園では、この試みが成功しており、
日本でも大型草食獣の食害が激しい知床半島で、オオカミを再導入
して生態系の回復を図ってはどうか、という計画が提唱されています。

20081122tama_d30_4056
どれどれ、ちゃんと歯をみがいているかい?
(本文の主旨とは関係ありません)

しかしその話も、絶滅させるのも復活させるのも、結局は人間の都合
ということですから、個人的にはとても複雑な思いです。

やはり「野生動物と共存できる環境が、人間にとっても最良の環境」と
いうことであり、生きとし生ける物のすべてに「人の都合」を当てはめる
というのは、最終的に私たちに「不都合」という結果を生み出すことに
ほかならない…そんな気がしてなりません。

結局、オオカミが「悪者」か「神」か、ということも…
農作物を荒らす動物を捕食すれば「益獣」、家畜を捕食すれば「害獣」
という、人の都合で「神」にも「悪者」にもなっているだけのこと。

当のオオカミにとっては、相手がシカであれヒツジであれ、お腹が空いた
家族を養うために、たまたま目の前にいた動物を襲っただけのことで、
オオカミには何の罪もありません。

オオカミさん、ちょっと哀れ…という感じでしょうか。

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wolf

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2010年3月10日 (水)

サバンナの風に聴く(8) 空はキャンバス

私たちが何気に見上げる空。

都会で見上げる空は、建物に区切られて四角く見えます。

北海道などへ行くと、建物にさえぎられることもなく、広い大空を
見ることができますが…周囲をぐるっと見回すと、山や丘の稜線で
やはり空が区切られてしまいます。

何にも区切られることのない、広い広い大空。
そんな大空が360度に広がるところ…

それがマサイマラ国立保護区です。

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大草原が広がるマサイマラ国立保護区

マサイマラ国立保護区は、見渡す限りの大草原。
そして、まさに「視界の90%が空」という表現が相応しいほどに、
大空が視界いっぱいに広がります。

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マサイマラは、視界の90%が空です。

ケニアへ通いはじめたころ…
私は、実はこの広い空に気付いていませんでした。
いや、もちろん空の存在は知っていましたが、マサイマラの空が
とってもフォトジェニックだ、ということに気付いていなかったのです。

サバンナに行くと、どうしても野生動物たちに夢中になってしまい、
広い空などはあまり意識しないものです。
私自身も、ケニアで写真を撮り始めた当初は、レンズは常に望遠、
レンズを向ける先は地面にいる動物たちでした。

でも、ある時、限りなく広がる大草原をぼーっと眺めていたら…
広い空を背景にした動物たちが、とても美しいことに気付いたのです。

   「マサイマラの空は、キャンバスだなぁ」

そう思って、改めて空を見つめてみると、そこにサバンナの空気を
感じるようになりました。

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この広い空が、マサイマラのキャンバスです。

野生動物たちは、「生きる」「子孫を残す」「死ぬ」というサイクルを
何千年、いや、何万年ものあいだ、淡々と紡いできました。
その壮大な時間の中でも、変わらずに繰り返されてきた光景が
目の前に広がっている…

時に恵みを、そして、時に試練を動物たちに与えてきた「空」は、
生命の営みを淡々と続ける動物たちの、背景そのものなのです。

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広い草原を、草を求めて移動していくヌーとシマウマの列

サバンナの空は、表情がとても豊かです。
いつも、突き抜けるような青空が広がっている、というわけではなく…

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光と雲と雨… 写真左下に見える霧のようなものは雨です。

時おり、重たい雲が垂れ込んで、神秘的な光景を見せてくれたり…

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虹に向かって… この時は虹が二重にかかっていました。

雨の後には、大きな大きな虹を架けてくれたりします。

そして何よりも美しいのはサバンナの夕陽です。

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大きな夕陽が、サバンナの向こうに落ちていきます。

マサイマラの夕陽はたいへん美しく、マサイマラに毎年通うのは、
この美しい夕陽を見たいから…と言っても過言ではありません。

夕陽だけ見ても美しいのですが、やはり野生動物がそこにいると、
もっと美しい光景が広がります。

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まさに、空がキャンバス…夕陽を撮ると、それを実感します。

マサイマラに行くと、この「空」というキャンバスに動物をどう描こうか、
いつも頭を悩ませまするのですが、同時に楽しみでもあります。

それは、マサイマラの空がとても表情豊かでフォトジェニックだから、
ということもあるのですが、空は動物たちが住むサバンナの空気…
つまり、野生動物たちと一体化した存在だからなのだと思います。

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広い空は、サバンナの「空気」そのものなのです。

「空というキャンバスに、野生動物たちを描きたい…」
そんな思いで、またマサイマラに立ったときに、私はレンズを空に
向けたり、地面に向けたりしながら「う~ん」と悩むことでしょう。

Sky is a canvas

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2010年3月 7日 (日)

サファリへ行こう(1) サファリのいろいろ

これまで、主に「サバンナの風に聴く」シリーズの中で、ケニアで撮影した
動物や風景の写真をいくつかご紹介してきました。

そんな写真をご覧になった方から、「実際に動物を見に行く時の様子を
教えてください」というご要望をいただきました。

そういえば…私がどんな風にケニアで写真を撮っているのか、現地での
様子はご紹介していませんでした。

ということで。

ケニアへ動物を見に行くときの様子などを、これから数回に分けて
ご紹介しようと思います。

…とは思ったものの、私自身は現地で動物写真ばかり撮っているので、
現地での様子を撮った写真があまりにも少ない!

そんなワケで、この「サファリへ行こう」シリーズでは、私が主催している
ツアーにご参加いただいた皆様から提供いただいた写真も織り交ぜながら
ご紹介していこうと思います。
(コメントに(※)がある写真が、ご提供いただいた写真です)

さて、「サファリ(Safari)」という言葉をご存知でしょうか。

「サファリ」とは、ケニアをはじめとする東アフリカの国々の公用語である
スワヒリ語で「旅、旅行」という意味です。

かつて、アフリカがヨーロッパ諸国の植民地だった頃は、野生動物は
ハンティング(狩猟)の対象となっていました。その頃「サファリ」といえば
「ハンティングの対象となる動物を探すこと」を意味しましたが、現在では
「観察する動物を探すこと」を意味しています。

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【サファリカー】屋根が開くワンボックスのバンでサバンナを走ります。

ケニアでのサファリの起点は、首都ナイロビです。
フラミンゴの大群で有名なナクル湖国立公園までは、約3時間半。
キリマンジャロを背景にするアンボセリ国立公園までも、約4時間。
野生の王国マサイマラ国立保護区までは、ちょっと遠くて約6時間。
たいていの場合は、ナイロビからサファリカーで目的地へ向かいます。

ナイロビから動物保護区に向かう幹線道路は舗装が行き届いており、
途中までは快適なドライブが続きますが…

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ナイロビからしばらくは、舗装されている幹線道路を走ります
(ナイロビ郊外の幹線道路~サンブール国立保護区に向かう途中)


幹線道路から外れ、動物保護区に近付いていくと舗装が途切れて、
砂利道の悪路に一変します。

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幹線道路から外れると、サファリカーは悪路を疾走していきます。
(サンブール国立保護区へ向かう道路)


もっとも、どの動物保護区へ行くにしても悪路を走っていくのかというと
決してそんなことはなく、ナクル湖国立公園の場合は悪路は一切なく、
マサイマラ国立保護区へのルートも整備が進んでいて、悪路区間は
だいぶ短くなりました。

向かう動物保護区によっては体が左右に揺さぶられるような極悪路を
抜けることもありますが、それもまたケニアの大地を走る醍醐味です。
ちなみに、これまで私のツアーに参加された方で「車酔い」になった人は
一人もいませんでした。たぶん、ガタガタと小刻みに振動する揺れ方が
車酔いをするような揺れ方ではないのでしょう。

さて、サファリカーでの移動も4時間~6時間と長時間になるので、
移動する時間帯によっては、途中でお弁当を食べることもあります。

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サファリは、とにかくお腹が空くんです!(ナクル湖国立公園内)

そして、ナイロビから走り続けること4~6時間。
「早く野生動物たちに会いたい!」という思いを募らせながら、
ようやく野生動物保護区に到着です。

ここからが動物たちとの出会いの始まりになります。

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やっと着いた~!!(サンブール国立保護区のゲート)

いよいよサファリの始まりです。

サファリ中は、基本的にクルマから降りることはできません。
サファリカーの中から動物を観察したり、写真を撮るのが原則です。

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このようにサファリカーの屋根から頭を出して…撮影中の私です。
(ナクル湖国立公園にて(※))


「動物とは、どのくらい近くに近付くことができるのですか?」という
ご質問をよく受けます。ライオンやチーターなどの肉食獣の場合は、
動物にかなり近付くことができますが、草食動物の場合は動物との
距離を詰めると、逃げていってしまいます。

また、肉食獣の場合でも、いくら近付いても逃げないとはいえ、
あまり近付くと動物たちにストレスを与えてしまうことになるため、
厳しい動物保護区では接近距離や、動物の前にいられる時間まで
規定されている場合があり、違反すると罰金を取られてしまいます。

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食後のライオンを撮影中。このくらいの距離まで近づけます。
(マサイマラ国立保護区(※))


サファリは、あくまでも動物たちが住んでいるところへ、私たちが
「お邪魔をしている」という意識を忘れてはいけません。
私たちが傍若無人に振舞うと、動物たちが逃げていくだけでなく、
過度のストレスを与えてしまったり、動物たちが生きている環境を
崩してしまうことになりかねないのです。

さて、サファリをしていると、どうしても遠くばかりを見てしまいますが、
実はこんな光景もあったりして…

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足元にカメ!!サファリ中は、遠くばかりを見ていてはイケマセン。
(マサイマラ国立保護区(※))


以前に、私のツアーに参加された方が、サファリ中に「あっ!!」と
声を上げたので、何か動物でも見つけたのかと思ったら…

なんとその方は、地面にいた「フンコロガシ」を見つけたのです。
フンコロゴガシは体長2センチ程度の小さな昆虫…そんな昆虫を、
走っているサファリカーから見つけたなんて、スゴイ視力ですね。

保護区内では、サファリカーはどこを走っても良いということはなく、
定められた「サーキット」と呼ばれる道しか走ることができません。
中には、お客さんからのチップ欲しさに、道路から外れてサバンナを
走り回るドライバーや、それを強要するお客さんもいるようですが…

そんなことをしてしまうとサバンナは荒れてしまい、動物の生態にも
大きな影響を与えてしまいます。

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定められた道といっても、こんな場所を通過したりもします。
(メルー国立公園)


原則として、サファリは車の中からなのですが、場所によっては
サファリカーから降りることができる場合もあります。

たとえば、ナクル湖国立公園では、湖畔エリアに限ってはクルマから
降りることができ、フラミンゴやペリカンに近付いて観察や写真撮影を
することができます。

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湖畔に降りることができる、ナクル湖国立公園

また、完全にサファリカーから離れ、歩いてサファリを楽しむ
「ウォーキングサファリ」というサファリもあります。

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動物たちと同じ目線で見るサバンナは、また格別なものです。
(メルー国立公園でのウォーキングサファリ(※))


ウォーキングサファリは、もちろん熟練ガイドに同行してもらい、
肉食獣など危険な動物がいない、安全なエリアで行います。

たいていの場合は、肉食獣どころか草食動物も遠くにしか
見ることができないのですが、ガイドに植物のことや動物の足跡の
判別方法を教えてもらいながら、普段は歩くことのないサバンナを
自分の足でノンビリと歩く時間は、なかなか楽しいものです。

その他、面白いサファリといえば「バルーンサファリ」があります。
文字通り、気球に乗って空からサファリをするのですが…

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空からサバンナを眺める…まるで鳥になった気分です。
(マサイマラ国立保護区のバルーンサファリ)


気球ですから、滑空中に聞こえてくるのは風の音だけ。
まさに「鳥になった気分」で、眼下のサバンナを見下ろします。

バルーンサファリは、気流が安定している早朝に行います。
夜明け前にバルーンに乗り込み、空が明るくなる頃にテイクオフ。
空からサバンナの地平線に昇る太陽を見ることになるのですが、
その光景はまさに荘厳で、感動的です。
また、日の出だけでなく、眼下にサバンナを駆け抜ける動物たちを
眺めるのも、また素晴らしいものです。

出発が非常に朝早く、料金が高額(約4万円)なのが難点ですが、
サバンナを訪れたら、一度は体験してみたいバルーンサファリです。

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Safari Njema!! (スワヒリ語で”良い旅を”という意味)
(ナクル湖国立公園)


野生動物たちの姿を、そして彼らがいる美しい光景を探し求める、
それが「サファリ」です。そしてサファリの楽しみ方は人それぞれです。
とにかく沢山の種類の動物を見る、サバンナの風に吹かれながら
ぼーっと風景を眺める、じっくりとひとつの動物を追いかけていく…

ぜひ、アフリカのサバンナを訪れて、自分なりに「サファリ」を楽しみ、
たくさんの感動を持って帰っていただけたら、と思います。

現地での宿泊の様子などは、コチラでご案内しています!


Safari Njema

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