« サバンナの風に聴く(9) キリンの首は長いけど… | トップページ | ネコはネコでも… »

2010年3月29日 (月)

「シマウマの強制引っ越し」に思う

3月25日の朝日新聞「世界発2010」に、干ばつが続き草食動物が
激減したケニアのアンボセリ国立公園へ、ライオンのエサとするために
ケニア各地からシマウマとヌーを計7000頭「引っ越し」させる計画が
始まった…という記事が掲載されていました。

以前にこのブログでも、ケニアでは昨年雨季に雨が降らず、大干ばつ
になって多くの草食動物が死んだ、という話を書きましたが(その時の
コラムはコチラ)、キリマンジャロを望むアンボセリ国立公園では2007年
以降、年に2回の雨季にほとんど雨が降らず、他の地域よりも深刻な
干ばつが続いています。

E_14
キリマンジャロを望むアンボセリ国立公園

干ばつが続くと草や水が不足し、草食動物が生きていけなくなります。

新聞記事によると、アンボセリ国立公園では「シマウマが約7000頭から
982頭に」「ヌーは約1万2千頭から143頭に」減ったというのですから、
これはもう「激減」というよりは「全滅」に近い状況です。

ここまで草食動物が激減すると、ライオンなどの肉食動物も食べ物に困り、
国立公園周辺で遊牧をしているマサイ族の家畜を襲いはじめてしまいます。

家畜が襲われるというのは、住民にとっては死活問題ですから、相手が
貴重な野生動物であるライオンであっても、自分たちの生活を守るため
には殺してしまうことがあります。

いっぽう、ライオンは観光立国であるケニアにとって貴重な「観光資源」。
観光客に人気があるライオンが周辺住民に殺され、減ってしまっては、
観光客も減り、ひいては国の経済にも悪影響を与えかねない…。

今回の「引っ越し作戦」は、住民とライオンたちとのそうした軋轢を防ぎ、
両者の「共存」を図ることで国の経済を守る、苦肉の策ということでしょう。

D30_1911
観光立国のケニアにとって、確かにライオンは重要ですが…
(マサイマラ国立保護区)

ただ、草食動物が激減した今回の原因は、気候変動や異常気象が原因で、
シマウマやヌーを引っ越しさせるというのでは、根本的な解決になりません。

今回のような引っ越し作戦では、再び干ばつが起きたら同じことの繰り返し
になるし、狩りやすい家畜の味をおぼえた肉食動物が、そう簡単に元通り
野生動物を狩るようになるとも思えません。

そういう点で、この「引っ越し作戦」はかなり場当たり的な策なのですが、
私には「なぜ、そんな対策を…?」と批判をする気にはなれません。
それは、こうした対策を採らざるを得なくなった背景には、私たち自身も
決して無縁ではない、と思うからです。

D30_1934
ヌーやシマウマは、サバンナの生態系を支える動物です。
(マサイマラ国立保護区)

地球温暖化の原因は二酸化炭素などの温室効果ガスにある、というのが
有力な説ですが、アフリカ全53カ国が排出する二酸化炭素の総排出量は
全世界のたった3.6%に過ぎず、アメリカ、中国、ロシアはもちろん、EU、日本、
インド各国の総排出量にも満たないのです。

いっぽうサバンナの生態系は、乾燥化ギリギリの気候の下に成り立っており、
わずかな気温の上昇であっても乾燥化が進行し、生態系を崩しかねない…
という、非常に脆く微妙なバランスの上に成り立っています。

Ke08080008_11
サバンナの動物たちは、微妙なバランスの上で生きています。
(マサイマラ国立保護区)

二酸化炭素の排出が少ないはずのアフリカが、アフリカ以外の国々の
影響で温暖化(=乾燥化)が進み、野生動物の生態系が崩れつつある…

さらに言えば、乾燥化が進むことによってアフリカの人々が耕作できる
地域がどんどん狭まり、野生動物たちが住む場所をさらに追われていく
だけでなく、アフリカの人々の貧困が加速度的に進んでいる、とも言われ
ています。

つまり私たちは、アフリカの野生動物や人々の生活と無縁ではない…
と言っても過言ではないのです。

幸いなことに、私たちの身の回りでは温暖化の直接的な影響がまだ少なく、
リアリティに欠ける部分がありますが、地球上では既に影響が顕在化して
いる場所があり、野生動物たちも危機的な状況に陥っています。

そんな現実を知りながら、私たちに何ができるのか考え、小さなことから
でも取組んでいきたいものです。

D30_2156
この子たちが成長していける環境を守るのも、私たちです。
(マサイマラ国立保護区)

|

« サバンナの風に聴く(9) キリンの首は長いけど… | トップページ | ネコはネコでも… »

ひとりごと」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/547433/47945667

この記事へのトラックバック一覧です: 「シマウマの強制引っ越し」に思う:

« サバンナの風に聴く(9) キリンの首は長いけど… | トップページ | ネコはネコでも… »