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2010年5月26日 (水)

いつも、ウトウト(4) コアラは今日もお昼寝

「せっかく楽しみに来たのに、寝ている姿しか見られな~い」
と、嘆きの声をよく動物の代表格…それがコアラです。

フワフワとした丸っこい体つき、まん丸の顔につぶらな瞳と小さな口。
その姿はまるでぬいぐるみのような愛くるしさ…

コアラはどこの動物園でも、老若男女問わず大人気です。

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ん?  (写真はすべて埼玉県こども自然動物公園)

ご存知のとおりコアラはカンガルーと同じく、オーストラリア固有の
動物です。

そのオーストラリアでは、フサフサの毛皮を目的とした乱獲が続き、
20世紀半ば頃には絶滅の危機に瀕し、保護が始まります。
その後は、コアラそのものを国外に出すことが長い間禁止され、
世界各地の動物園で見られるようになったのは、わずか30年ほど
前からです。

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「ぶーぶー」 …と、コアラは鳴きます
(ブタとウシの鳴き声が合わさったような、表現しにくい鳴き声です)

日本に初めてコアラがやってきたのが1984年の秋。
オーストラリアのタロンガ動物園から東京都立多摩動物公園へ2頭の
オスのコアラ「タムタム」と「トムトム」がやってきた時は、上野動物園に
パンダが初めてやってきた時を思わせるような大行列ができました。

今では当時の大行列こそできませんが、「好きな動物ランキング」で
イヌやネコなどの身近な動物や、その時どきのブームになった動物に
混ざって常に上位に入るほど、コアラは今でも人気者です。

ちなみに…

ロッテの「コアラのマーチ」も1984年発売。もちろん、コアラの来日を
機に発売されたものですが、発売から四半世紀を経た今でも人気の
お菓子として、ロングセラーが続いています。

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コアラのマーチ? どんな味がするのかな。

コアラはたいてい「コアラ館」という空調完備の立派な建物の中で
展示されています。そして館内は薄暗く、中途半端な明るさです。
「コアラは夜行性の動物です」と説明されていることが多いので、
「夜行性だから昼間は寝ているんだね」と思う方が多いのですが…

それにしても、もっと暗くすれば「動くコアラ」を見られるだろうし、
どうせ寝ている姿しか見られないなら、展示施設をもっと明るくして
くれればいいの…と思われる方も少なくないのでは、と思います。

実は、コアラは真っ暗になってから活動する「夜行性」なのではなく、
夕方から夜にかけて活動する「薄暮性」と呼ばれる動物なのです。
そのため、動物園ではコアラが活動する「薄暮」の明るさに合わせ、
展示施設を中途半端な明るさにしているのです。

中途半端な明るさには、実はちゃんと理由があったのですね。

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さて、そろそろ寝ようかな…

しかし「夕方から夜に活動」といったら、コアラが活動する時間は
わずか数時間しかないことになります。ということは、逆に言えば
睡眠時間が1日18時間~20時間ということになります。

これまでの「いつも、ウトウト」の第2回でご紹介したライオンや、
第3回でご紹介したフェネックのように、「次の活動のために寝る」
と言うにしては活動時間が短すぎるし、睡眠時間が長すぎるように
思いませんか?

それに、第1回では「草食動物は一般的に睡眠時間が短い」という
お話をしましたが、コアラも草食動物…なのに睡眠時間が長い!?

実は…コアラがこんなに寝るのは、他の動物たちとはちょっと違う
理由があるのです。

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他の仲間は睡眠時間が短いの? 寝不足にならないのかな…

コアラはユーカリの葉を食べる、ということをご存知の方も多いと
思いますが…

さて、そのユーカリの葉。

動物園によっては、コアラが食べるものとして生木が展示されて
いるところもあるのですが、実際にユーカリの葉に触ってみると
若葉といえども厚みがあって、とても堅いことに驚きます。
堅いだけでなく、試しに葉をちぎってみると繊維質が非常に多く、
明らかに消化が悪そうな葉です。

そのため、ユーカリの葉は他の動物たちの食べ物にはなりません。

オーストラリアは全体的に乾燥していて植生も豊富ではないので、
コアラは進化の過程で、他の動物がほとんど食べないユーカリを
食べるようになり、他の動物との食物の奪い合いを避けることで、
厳しい自然の中を生き延びてきたのでしょう。

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ユーカリの若葉が、これまたおいしいんだよねー

そんなユーカリの葉を、コアラは1日に500gほど食べている
のですが、コアラは消化が悪いユーカリの葉を消化するために、
特別な体の構造を持っています。

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コッチの葉っぱの方がおいしそうだなー
(ちなみにたぐり寄せているのはユーカリではありません…)

それは…盲腸です。

草食動物は、草を消化していくために盲腸が発達しています。
草食動物の代表格であるウマの盲腸は1mくらい。ウサギでも
50センチくらいの長さがあります。(ちなみに人間の盲腸は
5センチくらい)

それに対して、コアラの盲腸は…なんと2m!!
体が大きいウマで盲腸が1mなのですから、コアラの2mという
長さそのものもさることながら、体の大きさとの比率でいったら
ものすごい長さ…たぶん哺乳類最長でしょう。

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埼玉県こども動物自然公園には、こんな看板がありました。

コアラはユーカリの葉をこの長大な盲腸でゆっくりと消化して、
栄養分を体に吸収しているのです。
さらに驚くことに、その「ゆっくりと消化」する時間がすごい!
なんと約1週間かけてユーカリの葉を消化するのだとか!!

つまり、今日食べたユーカリの葉がウンチになって出てくるのは
1週間後、ということになるのですね。

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この葉っぱも、1週間かけて消化するんだよ。

しかし、1週間もかけてゆっくりと消化しても、ユーカリの葉は
栄養分が少ないので、摂取できるエネルギーはほんのわずか。
もし、消費するエネルギー量が摂取するエネルギー量を上回って
しまったら…コアラに限らず、生き物は死んでしまいます。

そこでコアラはどうするか…

摂取できるエネルギーが少ないならば、消費するエネルギーを
減らせば良い…そう、要するに「寝る」のです。

生き物にとって、寝ている間は基礎代謝だけにしかエネルギーが
使われていませんから、もっともエネルギー消費が少ない状態。
エネルギー消費を抑えるためには「寝るのがイチバン」という
ことなのです。

他の草食動物は、摂食時間を長く取って草をたくさん食べないと
十分なエネルギーを摂取できないため、睡眠時間が短くなる、と
言われていますが、コアラはその逆です。
つまり、エネルギー摂取量が少ないために睡眠時間が長くなる、
というワケです。

他の草食動物たちとの競合を避けて、消化が悪く栄養素が少ない
ユーカリの葉を食物に選んだ結果、他の草食動物よりもはるかに
長い睡眠時間になった…というのも、面白いことですね。

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だからコアラは、今日もひたすら眠るのです…

しかし…20時間近くも寝ていたら、夢を見る時間も長いはず。
コアラにとっては、夢が現実なのか、現実が夢なのか…

その辺のことは、コアラにぜひ聞いてみたいものです。


※【いつも、ウトウト】シリーズ
【いつも、ウトウト(1) プロローグ】
【いつも、ウトウト(2) ライオンは今日もお昼寝】
【いつも、ウトウト(3) フェネックは今日もお昼寝】
【いつも、ウトウト(4) コアラは今日もお昼寝】

コアラ

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