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2010年6月

2010年6月30日 (水)

また再び感動と出会いたい…

昨夜のワールドカップ「日本対パラグアイ」の余韻が、まだ醒めません。

私は普段はJリーグも見ていないし、サッカーについてもそれほど詳しい
ワケではありませんが、それでも、今回のワールドカップは日本代表の試合
だけでなく、その他の国々の予選もテレビ観戦してしまいました。

サッカーに限らないことなのでしょうけれど、世界一流レベルのスポーツの
試合で見せてくれる選手たちの「技」は、無条件に素晴らしいものですし、
大きな感動を与えてくれるものです。

ワールドカップでは、その素晴らしい技をたくさん堪能しましたが…

やはり日本人としては日本代表チームの活躍を祈り、勝利を喜びました。
試合を重ねるごとにチーム力がアップしていく日本代表チームに感動し、
「この調子ならパラグアイ戦もイケるのでは?」と秘かに期待を膨らませて
いたのですが。

とても残念でした。

とはいえ、日本代表チームは、まさしく「完全燃焼」だったと思います。
それは、今回のパラグアイ戦だけでなく、これまでのひと試合ひと試合に
チーム全員で挑み、結束力を高めながら力を昇華させていった結果としての
「完全燃焼」だったと思うのです。

それゆえに、パラグアイに負けたこと自体も「残念」でしたが、私としては
「もう、このチームの試合を見られない…」ということが、とても残念に
思えたのでした。

そのいっぽうで、「4年後に、再び素晴らしい試合を見ることが楽しみ」と
思ったのも事実です。

話は飛びますが…

サバンナで素晴らしい光景に出会った話をすると、「そんなに素晴らしい
光景と出会ったら、もう帰りたくなくなるでしょう」とよく言われます。

確かにサバンナで過ごす最終日は、後ろ髪を引かれる思いになるのは
事実なのですが、実は「帰りたくないな~」というよりも「また次回、この
光景に出会える日が楽しみ」という思いの方が大きいのです。

Ke06090003_17
素晴らしい光景と出会ったときは、「去りたくない」という思いより、
むしろ「また会いたい」という思いの方が、強いものです。
(ケニア・マサイマラ国立保護区)

素晴らしいシーンが与えてくれる大きな感動は、心を豊かにしてくれる
だけでなく、さらに次回の感動への懸け橋になってくれるように思います。

今回のパラグアイ戦を見届けたあと、サバンナを去る日に私が感じている
「また出会いたい」という、清々しさに似た思いを心に感じたのでした。

サムライJAPAN、たくさんの感動をありがとう!
そしてまた4年後、大きな感動をたくさん与えてくれる日々が来ることを、
今から楽しみにしています。

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2010年6月27日 (日)

自然体であること ~白川義員さんに思う

私が尊敬する写真家のひとり、白川義員(しらかわよしかず)さん。

地球規模の壮大な自然を撮る、世界的にも有名な写真家です。
白川義員さんの写真は主に山や滝など、地球がつくりあげた造形美を
壮大かつ荘厳に撮ったもので、美しさを超越して神々しさを感じさせる
たいへんすばらしい写真です。

先日、白川義員さんが7年の歳月を費やして2002年に完成させた
山岳写真集「世界百名山」の制作ドキュメンタリー番組を見ました。

「世界百名山」ですから、中には標高8千メートルを超える山々もあり、
それらを空中から撮影するというのは、並大抵の仕事ではありません。
1935年生まれの白川さんが、酸素マスクを着けながら大判カメラを抱え、
エベレストやカラコルムの山々の空中撮影に臨むその姿には、「尊敬」
という言葉でもまだ足らない畏敬の念を禁じえませんでした、

しかし、山と向き合う白川さんは淡々としていたのが印象的でした。

撮影している時の白川さんの、目の前に繰り広げられる大地と光の美に
真正面から向き合いながら、銀塩フィルムに記録を取っていく姿には
「気負い」といったものが感じらません。

大自然の光景と対峙する、という感じではなく…
大自然の光景を全身でしなやかに受け止めながら、自分の眼に映った
壮大な光景を、レンズという「もうひとつの眼」を通してフィルムに
写しこんでいる、という感じなのです。

ありふれた表現かもしれませんが、そんな白川さんの姿には、まさに
「自然体」という表現が相応しいように思えました。

白川さんと私を比較するなど、おそれ多いことなのですが…

動物を相手に写真を撮っている私も、「自然体で光景を受け容れる」
ことを信条にしています。出会った光景に抵抗をせず、誇張をせず、
自分がその光景の中に置かれ、感じたことをそのまま表現したい…と
思いながら写真を撮っています。

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自分が感じたことをそのまま表現する…それは難しいことなのですが。
(早暁のフラミンゴ ケニア・ナクル湖国立公園)

正直に言えば、ケニアのサバンナで写真を撮り始めた頃は、美しい写真、
迫力ある写真を撮ろうと頑張っていました。

美しい光景と出会ったときは、アタマの中にタイトルみたいなものを
思い浮かべながら、シャッターを切っていたものです。
また、動物と出会っても「撮る動物」「撮らない動物」を選り好みして
自分のイメージに合う動物しか狙っていませんでした。

でも…そうやって撮った写真には、なぜか「チカラ」がない。
とってもキレイな色や構図だけど、ただそれだけ。時間が経って改めて
見てみると、「なんでこの写真を撮ったのかなぁ」という写真ばかり…。

そうした「どうして?」を何度も繰り返し、納得がいかず悔しい思いを
何度もしていくうちに…私は自分自身の愚かさに気付きました。

「出会った光景に、自分の思い込みを入れてどうする?」

出会った光景は、もう二度と出会うことができない一瞬。
その瞬間を大切にして、与えられたチャンスの中で自分が感じた一瞬の
思いを、そのまま素直にフレームの中に写しこむことが大切だと。

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いま出会った光景は、もう二度と出会うことはできないのですから…
(アフリカゾウの家族 ケニア・サンブール国立保護区)

たとえ凡庸に見える光景であっても、いま目の前に広がっている光景は
ひとつの光景に過ぎない。そうした光景の連続の中に、胸を打つような
美しい光景が現れる「一瞬」が必ずある…

そう考ると、自然の中で「光景を選ぶ」などというのは畏れ多い話で、
むしろ大切なのは「選ぶ眼」ではなく「一瞬を感じ取る心」なのではないか、
と思うのです。

そしてその「感じ取る心」とは、光景に挑んで得られるものではなく、
目の前に広がる光景を自然体で受け容れ、連続する一瞬一瞬の延長
線上に自分の身を置くことから得られるものだ、と思うのです。

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写真は「作り出すもの」ではなく「感じ取るもの」だと思います。
(夕陽の中のマサイキリン ケニア・マサイマラ国立保護区) 

白川義員さんの写真には、唖然とするほどのスケール感があります。
そうした写真を撮り続ける背景には…

 地球は悠久無限の宇宙にあって芥子粒のごとき一点の存在だ。
 人類はこの一点の命である宇宙船地球号に乗り合わせていることを
 心底認識したら、民族紛争や国境紛争や戦争そのものが馬鹿らしく
 なりはしないか、そこまで思いが到るほどの写真が撮れないか?

という思いがあるそうです。

そもそも、その壮大なスケールの「思い」自体にも敬服しますが、
その思いが「地球がつくりあげた造形美」にまで昇華し、これまで
誰もがきっと眼にすることができなかった美しい光景と出会っても、
「自然体で光景と向き合う」ことを失わずに淡々と撮り続けてきた
白川さんの姿勢に、私は敬服せざるを得ません。

そんな白川さんのドキュメンタリー番組を見ながら…

サバンナでヒョウと出会うと、我を忘れて無我夢中でシャッターを
切ってしまう自分を思い起こし、「あー、まだまだだなぁ…」と
思ってしまうのでした。

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まだまだ、修行が足らんねぇ、だいぴんさん。
(お昼寝ヒョウ ケニア・マサイマラ国立保護区)

ポレポレですが、少しでも白川義員さんの「自然体」に近付くべく、
もっともっと写真を撮って修行をしたいと思います。

polepole

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2010年6月23日 (水)

なんでシロサイ?どうしてクロサイ?

前回の記事で、何の根拠もない「ツノの効能」が信じられて乱獲され、
絶滅の危機に瀕しているサイについて書きました。

サイは、もしかしたら地球上で野生の個体がもっとも少ない動物のひとつ
になってしまったのかもしれません。

さて、その記事の中で「アフリカにはクロサイとシロサイがいる」という
ことを書きましたが…今回はその「シロサイ」「クロサイ」にまつわる
エピソードをご紹介することにしましょう。

D31_1642
ぼくがシロサイです~ (ケニア・ナクル湖国立公園)

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よいしょ…ボクがクロサイだよ。 (ケニア・マサイマラ国立保護区)

シロサイとクロサイ。

写真を見ると、確かにシロサイは色が白っぽいし、クロサイは色が黒く
見えます。でも、実はこの色から「シロサイ」「クロサイ」という名前が
付いたのではないのです。

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え~、色が黒いからクロサイじゃないんだぁ…
(クロサイ 横浜市金沢動物園)

私がこれまで写真に撮ることができた「シロサイ」は確かに白っぽいし、
「クロサイ」は黒っぽかったのですが、動物園で見てみると、色の差は
あまり見られません。

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長崎バイオパークのシロサイで~す。大きいでしょ?

Kanazawa_d30_5389
横浜市金沢動物園のクロサイで~す。シロサイより少し小柄でしょ?

こうして見てみると、あまり「色の差」はないように見えます。

では、なぜ「シロサイ」と「クロサイ」なのでしょうか!?

答えのヒントは、コチラの写真の中にあります。

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ん?いま、食事中なんですけど~ (シロサイ 静岡市日本平動物園)

シロサイの口の形に注目してみてください。横に広いですよね。
シロサイは地面に生えている草を食べるため、食べやすいようにこうした
幅広い口の形をしています。

そして、いっぽうのクロサイはというと…

Kamine_d30_7509
ワタシたちも食事中なんだけど (クロサイ 日立市かみね動物園)

クロサイは体格の割りには口が小さくて、とんがっていますよね。
クロサイは低木の葉を食べるため、やはり食べやすいようにこうして
少しとんがった口の形をしているのです。

この口の形が、なんで、どうしたら「シロ」と「クロ」につながるのか
…ますます疑問に思われることでしょう。

まずはシロサイ。

サバンナを訪れたヨーロッパの人が、ツノを持った巨大な動物を見つけ、
地元に住む人に「あれはナンだ?」と聞いたところ、地元の人が口が広い
サイということで「wide」と言ったのを「white」と聞き間違えた…のだとか。

それがそのまま「White rhinoceros」…つまり「シロサイ」になったという話。
色が白っぽいから「シロサイ」というのではないのですね。

「んじゃ、なんでクロサイなの?」と、当然思われますよね。

こちらはもっと単純な理由で、サバンナにいる2種類のサイのうち、一方が
「シロサイ」なのだから、もういっぽうを「クロサイ」と名付けた…というのが、
「クロサイ」の名前の由来だそうです。

Nihondaira_d31_9084
そんな名前の付け方って、そんなのアリなのかねぇ…
(シロサイ 静岡市日本平動物園)

まぁ確かに…「聞き間違え」で「シロサイ」となり、「シロサイ」がいる
から別の種類が「クロサイ」になったというのでは、サイたちから見れば
「もうちょっと考えてよねー」ということになるのかもしれませんが。

でも、私個人的には、「Wide lipped rhinoceros(クチビロサイ)」とか、
「Sharp lipped rhinoceros(トガリクチサイ)」とかよりは、覚えやすく
親しみやすくて良いと思います。

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「トガリクチサイ」だなんて、イケてない名前だよね
(クロサイ 愛媛県立とべ動物園)

シロサイとクロサイは、聞き間違いがその名の由来、というワケですが。

こうした「勘違い」から名前が付いてしまった動物っていないのかなぁ…
と、調べてみたところ、ありました!それも「日本語の勘違い」で。

その名は「トウキョウトガリネズミ」です。
地球上最小の哺乳類のひとつ、と言われているネズミで、体長は2センチ、
尻尾は3センチ、体重は2gにも満たないのだとか。

このネズミ、「トウキョウ」と付くのに日本では北海道にしかいません。
でも、なんで「トウキョウ」なのか!?

実は新種として発表されたときの標本のラベルに「Yezo(蝦夷)」と
書くべきところを「Yedo(江戸)」と間違えて記してしまったために、
「江戸→東京(トウキョウ)」と何の疑いもなく名付けられてしまった
のだとか。「Yezo→Yedo→トウキョウ」という、まるで三段活用のような
「勘違い」ですね。

ちなみに、この名前が由来で混乱も起きたのだそうです。

1906年に北海道で最初に発見されて以来、次にトウキョウトガリネズミが
発見されたのが、なんと約50年後。
その間、「トウキョウトガリネズミ」という名前だけがひとり歩きをしてしまい、
「本州ではまったく発見できない謎のネズミ」と考えられていたとか…。

この「トウキョウトガリネズミ」、環境省のレッドデータブックによると
絶滅危惧種に指定されていました。多摩動物公園にもいるようなので、
次回行ったときに、会ってみたいと思います。

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東京都のガリネズミさんと一緒に遊んでみたいな…
(クロサイの子供 日立市かみね動物園) 

あ、クロサイのサニーちゃん
「東京都のガリネズミ」じゃなくて、「トウキョウトガリネズミ」なんだけど…
こんな感じで「勘違い」が起こっていくわけですね。

アフリカのサバンナと北海道の草地で発見され、名前の由来が「勘違い」
という2つの動物。片や地上最大級の哺乳類、もう一方は地上最小級の
哺乳類…というのも、なんとも奇遇なことですね。

「勘違いで名前がついた動物展」なんていう企画をしたら、どんな光景に
なるのでしょう。大きなシロサイの横に、ちっちゃなトウキョウトガリネズミが
並んでいて…なんて、想像するだけでも楽しいものです。

white & black

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2010年6月20日 (日)

ツノ、ありますけど…(2) ツノがあるゆえに

ツノがある動物はイロイロいるけれど、そのツノの種類をイロイロとご紹介
する「ツノ、ありますけど…」シリーズ。

前回はツノを持つ代表的な動物「ウシ科とシカ科」についてご紹介しました。

その中で、「アフリカのサバンナにシカ科はいない」というお話をしましたが、
では、サバンナでツノを持つ動物はすべて「ウシ科」なのかというと…
いえ、いるんです。シカの仲間でもウシの仲間でもない動物が。

それも巨大な動物…そう、サイです。

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どもー、サイです~。 (クロサイ 愛媛県立とべ動物園)

サイはアフリカと東南アジアにすむ動物で、陸上に住む動物としてはゾウに
次ぐ大きさの大型動物です。
東南アジアにはスマトラサイ、インドサイ、ジャワサイ、アフリカにはクロサイ、
シロサイの計5種類のサイがいますが、その全てが絶滅危惧種に指定されて
います。

スマトラサイ、ジャワサイ、クロサイは絶滅危惧種の中でも「絶滅寸前」の
ランクに指定されており、中でもジャワサイの野生個体はもはや数十頭しか
いない、「地球上でもっとも少ない野生哺乳類」とまで言われています。

なぜ、そんなに数が減ってしまったのか…

それは、言うまでもなく人間による乱獲が主な原因です。

「サイのツノは漢方薬に使われている」…という話をご存知の方もいるかと
思います。調べてみると、サイのツノは2千年以上も前から解熱や強壮に
効果があるとして、漢方薬に使われていたようです。

サイのツノをよく知れば、そうした効果は何もないことは明白なのですが…

Nihondaira_d31_9077 
サイのツノ? 何かに効くとは思えないけどなぁ…
(シロサイ 静岡市日本平動物園)

ここで、もういちど上の写真を見てみてください。

たいてい、動物のツノといえば左右対称にあるものですが、サイのツノは
頭の真ん中に「ドーン」とありますよね。

地球上にはツノを持つ動物は数多くあります。

形状も短いものから長いもの…

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オリックスのツノは1mにもなりますが…左右対称にあります。
(ベイサオリックス ケニア・サンブール国立保護区)

見事にグルグルと巻いているもの…

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見事と言える巻きっぷり…ですが、左右対称にあります。
(ムフロン 千葉市動物公園)

とにかく、ものすごく巨大なもの…

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どんなに巨大なツノでも、ちゃんと左右対称にあります。
(ヘラジカのはく製 大哺乳類展・国立科学博物館)

しかし、サイの角は…

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ボクのツノはアタマの真ん中にあるんよー
(クロサイ 愛媛県立とべ動物園)

たぶん、私が知る限りでは「ツノ」と呼ばれるもので、左右対称の位置に
ツノがない動物というのは、サイが唯一ではないかと思います。
(「イッカク」というクジラの仲間は、ツノ状のものが頭の真ん中から1本だけ
出ていますが、それはツノではなく歯(牙)です)

サイのツノが、他の動物たちとツノの生え方が違うのは…
前回「シカですか?ウシですか?」で説明したツノの成り立ちとはまったく
違うものだから、なのです。

ウシやシカのように、骨格に由来するツノとはちがい、サイのツノは「皮角」と
呼ばれるもので、皮膚が角質化して何層にも積み重なってできたもです。
つまり、骨よりはむしろ「毛」に近いもので、実際にサイのツノの成分は毛の
成分とほぼ同じ「ケラチン」というタンパク質から構成されています。

ということは…

もし漢方薬で「サイのツノが効く」とすれば、「毛が効く」と同じことにもなり、
サイのツノに解熱効果や強壮効果があるならば、「自分の毛を粉末にして
飲んでも効く」ということになってしまうのですが…

実際にそんなことをする人はいませんよね。

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ツノが「毛」ということは…ツノはヘアスタイルってこと!?
(クロサイ 横浜市金沢動物園)

イイこと言いますねぇ…その表現は正しいかもしれません。

サイのツノは「皮膚が角質化して何層にも積み重なったもの」ですから…
そうなんです、どんどんと伸びてくるんです、サイのツノは。

たとえば子供のサイは…

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こんにちは、かみね動物園のサニーです!
(クロサイ 日立市かみね動物園)

いちおう、ツノのようなものがありますが、まだ平べったいですよね。
「積み重なってできていく」ワケですから、子供の頃はまだ平べったいのです。

この子供のサイは、「いつも一緒だね」でご紹介したクロサイの子供ですが、
お母さんと比べてみると…

Kamine_d31_1029 
お母さんのツノは大きいねぇ…
(クロサイの親子 日立市かみね動物園)

成長していくにつれ、ツノもどんどん「伸びて」いくことがわかりますね。

動物園で見るサイも立派なツノを持っていますが、野生のサイはもっと立派な
ツノを持っています。

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こちらが野生のシロサイ (ケニア・ナクル湖国立公園)

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こちらが野生のクロサイ (ケニア・マサイマラ国立保護区)

野生のサイはツノが長く、そして鋭いですね。これが本来のサイのツノです。
でも、こんなツノで突かれたら、大ケガしてしまう…ということで、動物園では
サイのツノを短く切ることがあるそうです。

Tama_d30_0398 
飼育員をケガから守るために、動物園ではサイのツノを短くすることも…
(インドサイ 多摩動物公園)

「え!?そんなコトをして大丈夫なの?」「かわいそうじゃない?」と思われる
かもしれませんね。でも、大丈夫なんです。サイのツノは「毛」なのですから、
感覚的には私たちが定期的に髪を切るのと同じこと。

野生のサイのように、動物園のサイのツノも伸び放題、尖がり放題にするに
越したことはないですが、それよりも、飼育員がケガをして、サイの飼育を
続けられなくなる方が問題です。

なにせ、サイは絶滅危惧種。
世界各地の動物園でも繁殖が試みられ、地球上からサイそのものが消滅
しないように努力が続けられています。
そのためには、安全に飼育できることも、非常に大切な要素なのですから。

さて、なんの根拠もない「効能」や「迷信」が信じられ、人間の乱獲によって
絶滅の危機にまで追い込まれてしまったサイ。

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ジャワサイは75頭、クロサイは2,600頭…ケタ数のちがいはあれど、
「数えられるほど」しか地球上に存在しないことには変わりありません。
(多摩動物公園の掲示板から)

その原因はツノにあったワケですが…現在でもサイのツノは、闇市場で高値で
取引されているという実態があり、密猟が絶えないのが事実です。

密猟されるのが「ツノが目当て」ということもあり、保護地域によっては野生の
サイのツノをわざと切ってしてしまい、密猟を防いでいるところもあるのだとか。

いくら「毛と同じで、また生えてくるから…」とはいえ、野生のサイのツノを
そうした理由で切らなくてはいけない、というのは何とも悲しいことです。

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こんな光景が、サバンナから消えてしまいませんように…
(クロサイ ケニア・マサイマラ国立保護区)


Tsuno

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2010年6月16日 (水)

いつも、ウトウト(番外編) その寝姿は…

「動物って、なんでいつも寝ているんだろう」というお話を、4回に分けて
「いつも、ウトウト」シリーズでご紹介しました。

動物たちが昼間からよく寝ている理由は、体力の消耗を抑るためだったり、
夜に活動するためだったり、摂取するエネルギーが少ないためだったり…
と、いろんな理由があって「寝ている」ということをご紹介したのですが。

今回はそうした「理由」はさておき、その寝ている姿があまりにも楽しい
(と、私は思う)動物をご紹介しましょう。

その動物とは…アカカンガルーです。

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「ZZZ…」  (アカカンガルー 多摩動物公園)

国内の動物園で主に見られカンガルーの種類は、オオカンガルー、ワラビー、
そしてこのアカガンガルーなのですが、中でもこのアカカンガルーは寝姿が
きわ立って「豪快」というか、人間くさいというか。

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アカカンガルー? ああ、アイツは確かに豪快だね。
(オオカンガルー 長崎バイオパーク)

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人間もあんな風に寝るの? う~ん、そうなんだ…
(ワラビー 埼玉県こども動物自然公園)

私もいろいろな動物の、いろんな寝姿を見てきました。
大型の動物でも、その寝姿というものは、それなりに可愛いモノなのですが…

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「寝ててもカワイイなんて、そんな…照れくさくて寝ちゃうよ」
(マレーバク よこはま動物園ズーラシア)

このアカカンガルーに限っては、可愛いというよりも「親しみ」というか、
「共感」にも似た気持ちになるのです。

Tama_d31_0045
「・・・」 (アカカンガルー 多摩動物公園)

なぜ「共感」なのか…

それは、その寝姿が「人間くさい」というよりも、さらにそれを超えて…
寝姿がなんとも「気持ちよさそう」だからなのです。寝姿を見ていると、

「あ~、気持ち良さそうに寝ている~!」

と思ってしまうのです。

Tama_d30_5675
この気持ちよさ、わかる気がします。 (多摩動物公園)

これぞまさしく「共感」です。
こんなに気持ちを共有できる動物は、他にいないかもしれません。
だって…間違いなく、アカカンガルーも気持ちよく寝ているハズですから。

多摩動物公園のアカカンガルーは、半開放型(人との間は膝丈ほどの植込み
で仕切られているだけ)のパドックの中にいて、とても間近にカンガルーを
見ることができるのですが、それだけに「共感度合い」も抜群。

ちなみに愛媛県立とべ動物園にもアカカンガルーがいて…

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オトナのアカカンガルーがこうならば…

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子供のアカカンガルーもこうです。
(どちらの写真も 愛媛県立とべ動物園)

どうやら、この寝姿は多摩動物公園のアカカンガルーの固有文化ではなく、
アカカンガルーの生態そのもののようですね。

この寝姿を見た人からは「なんだか、酔っぱらいオヤジみたいだ…」という
声をよく聞くのですが、それも親しみをおぼえる要素なのかもしれません。

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アカカンガルーには、毎日がお昼寝日和です。 (多摩動物公園)

もっとも、酔っ払ってこうして寝ているオジサンを見ても、親しみや共感は
おぼえる人は少ないでしょうから、飲みすぎて「アカカンガルーの真似だ~」
などと、くれぐれもなさらぬよう…お酒は適量を。

kangaroo

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2010年6月13日 (日)

動物たちが見る光景は…

動物写真は「目にフォーカスを合わせる」のが基本です。

これまで、私は動物たちの目をファインダー越しに見つめ、シャッターを
何万回も切り続けてきました。

ある時は、私のことをじーっと見つめるような眼差しを…

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レンズ越しでも、見つめられると思わずドキっとすることもあります。
(ライオン ケニア・マサイマラ国立保護区)

そしてある時は、遠くを見つめている眼差しを…

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遠くをみつめる野生動物の眼差しには、凛としたものを感じます。
(ヒョウ ケニア・マサイマラ国立保護区)

こうして動物たちの目を見つめていると、「動物たちの目にはどんな風に
光景が映っているのだろうか…」…と思うことがよくあります。

「動物たちの目は、私たちと見え方が違う」ということをご存知の方は
多いと思います。「動物は色の判別ができない」ともよく言われてますが、
これは哺乳類に関してのことで、たとえば鳥類は人間よりも色の判別力が
優れており、人間が見えない光の波長(例えば紫外線)も判別することが
できる種類までいるのだとか。

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一般的には、鮮やかな色の動物は色の識別ができるのだそうです。
(ライラックニシブッポウソウ ケニア・ナクル湖国立公園)

ちなみに哺乳類は…

哺乳類が出現した中生代(約2億5千万年前~約6500万年前)は、
昼間の陸上は恐竜に制覇されていて、恐竜に比べて小さくて弱い哺乳類は
夜に活動する「夜行性」という生き方を選ばざるを得ませんでした。

そのため、暗いところでもモノを識別できる能力が必要でした。
わずかな光でもエサや天敵を見分ける視力…そこに色を識別する能力は
必要ありません。だって、光がなければ色は元々見えないのですから。

むしろ、光が少なくても影響がない、嗅覚や聴覚が発達してきたのです。

人間のように微妙な色彩まで判別する動物は、哺乳類としては例外的で、
「動物は色の判別ができない」というのは、夜行性だったという先祖を
持つ哺乳類としては、当然の結果なのかもしれません。

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哺乳類は、もともと夜行性だったのですね。
(アミメキリン ケニア・サンブール国立保護区)

色の見え方以外にも、動物と私たちとは視界の広さも異なります。

例えば、シマウマの視界は300度近くあると言われています。
シマウマがそんなに広い視界を持っているのは、草原にいる肉食動物を
いち早く見つけられるため、と考えられているのですが…

それにしても、そんなに広い視野を持っていたら、私たちが見ても広く
見えるサバンナが、もっともっと広く見えているハズです。

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シマウマはいったい、サバンナのどこまで見渡せるのでしょう。
(グラントゼブラ ケニア・マサイマラ国立保護区)

いったい、シマウマの目にはサバンナがどんな風に見えているのか!?
300度の視界は、想像できそうでなかなか想像がつかない世界です。

そして、私たちに見えない「色」も見ることができるという鳥たちが見る
風景の「色合い」というものも、なかなか想像がつきません。

もっとも、彼らから見れば「正面しか見えない人間の視界」というのも、
想像がつかないことでしょうけれど…

もし、シマウマや鳥たちに私の写真を見せたら、

 「こんなに狭い範囲の写真の、どこがイイの?」
 「こんなに色合いが乏しい写真の、どこがイイの?」

と、酷評されてしまうことでしょう。

animal's eyes

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2010年6月 9日 (水)

行って参りました、大哺乳類展

2010年3月から国立科学博物館で開催されていた「大哺乳類展」。

動物写真を撮る者としては「行かねば!」と思っていた一方で…
「剥製が並んでいるだけでしょう?」というのを言い訳にして
足が向かずにいましたが。

でも、いよいよ会期末となると「やっぱり行っておかなくちゃ!」
という思いが強くなってきて…行って参りました、大哺乳類展へ。

結論から言えば、剥製とはいえあれだけの数の動物が一同に勢揃い
すると「大迫力」「圧巻」のひと言に尽きました。
だって…アフリカ、アジア、アメリカ各地の動物たちが密集して、
至近距離で、私の方を向いて迫ってくるのですから。

こんな光景、動物園でもあり得ません。

そんな大迫力の剥製は大人気で、人だかりができていましたが…
私がとても興味を持ったのは、骨格標本の方でした。
「これでもか!」というほどの並んでいる「ホネ」は、今にも
カタカタと音を立てながら動き出しそうなほどの美しさ。

大きいものはアフリカゾウから、小さいものはネズミまで。
骨格を眺めていると、どの哺乳類も基本的な骨格の構造が同じ
であることに、改めて驚かされました。

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大きいホネから、小さいホネまで…

カピバラライオンも、インドオオコウモリレッサーパンダも…
みんな「ホネ」になっちゃうと、「同じ哺乳類なんだなぁ」という
実感が湧いてくるから、不思議なものです。

やはり…進化というのは、壮大なひとつのストーリーなのですね。

残念ながら、ホネが密集しすぎていて、写真に上手く収めることが
できなかったのですが…(会場内は一部を除き撮影はOKでした)

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これ、何の骨格標本だかわかりますか?
ホネだけになると、わからなくなっちゃいますよね。

この骨格標本になっている動物はコチラ。

Nagasakibp_d30_2383
「あら、それ、ワタシ?や~ねぇ」「かぁちゃん、ホネってな~に?」
(オオカンガルー 長崎バイオパーク)

骨格標本の展示で面白かったのが、その動物の生態をそのままに
展示してあることです。コウモリの骨格は、ちゃんと空を飛んで
いましたし、ナマケモノの骨格標本は…

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ナマケモノ、といえばこのスタイルでしょ。(タテガミナマケモノ)

Saitama_d30_5767
ホネなんて、知らないもーん。スタスタ…
(フタユビナマケモノ 埼玉県こども動物自然公園)

…という具合です。

哺乳類は首の骨(頚椎)が原則として7個ある、というお話を以前に
しました。キリンもヒトもライオンもネズミも、頚椎は7個なのです。
でも、陸上に住む哺乳類では「ナマケモノ」だけがその例外。
ナマケモノの頚椎は、種類によって6~9個の頚椎を持っています。

展示されていたタテガミナマケモノの頚椎を数えてみると…
たしかに頚椎は6個しかありません!
そして、他の哺乳類たちは、やはりみんな頚椎が7個あります。

哺乳類なのに、ナマケモノって変わった動物だよなぁ…

そんなオドロキをリアルに体験できたのも、かなり楽しかったです。

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タテガミナマケモノの頚椎部分アップ。たしかに頚椎が6個です。

さて、大哺乳類展では、前半は哺乳類の進化の過程に沿って展示が
されており、そのあとは動物の体の特徴を分類しながら現代に生きる
哺乳類を展示していたのですが。

展示されていた標本もさることながら、進化の順番にそった解説や、
分類ごとにポイントが簡潔に説明されていたキャプションが、私には
とても勉強になりました。

「また行きたいなぁ」と思ったものの…

「大哺乳類展~陸のなかまたち」は6月13日で終了。
でも、会場内に展示してあった標本と解説がほぼすべて網羅されている
図録をしっかりと買いこんできたので、当分は何度も読み返しながら、
勉強をしてみたいと思います。

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けっこう読み応えのある図録です…

大哺乳類展、次回は7月10日から「海のなかまたち」が始まります。
こんどは早めに足を運んで、また勉強してみたいと思っています。

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2010年6月 6日 (日)

ナマケモノって、誰のこと?

ナマケモノって、スゴイ!」では、埼玉県こども自然動物公園で撮影した
フタユビナマケモノを掲載しながら、ナマケモノについてご紹介しました。


Saitama_d31_0283
フタユビナマケモノでーす。
(写真はすべて埼玉県こども自然動物公園)

「ナマケモノ」…よくよく考えてみるとスゴい名前です。
ちなみにナマケモノの英語名は「Sloth」で、この単語を英和辞典を引くと
「怠惰・物ぐさ・不精」という意味なのです。

動きが遅い動物は他にもたくさんいるというのに、こんな名前をつけられて
しまった「ナマケモノ」は、なんとも可哀そうな気がします。

Saitama_d31_0382
別に自分では、怠けているつもりじゃないんだけどね…

その名前のせいか、よほど「ぐーたらして、動かない動物」という印象が
あるようですが、先日撮影した埼玉こども自然動物公園のナマケモノは、
けっこうよく動いていて、むしろお隣に住んで(?)いたコアリクイの方が
ほとんど動かずに「怠け者」になっていました。

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コアリクイは数時間、ほとんどこの状態で動かず…

いっぽうのフタユビナマケモノは、

Saitama_d31_0359_2
はいはい、今日はサービスして動いちゃいますよ~

と、あっちへ動いたかと思えば…

Saitama_d31_0372
こんどは、こっちへ行っちゃいますよ~

…と、予想外に(?)よく動いてくれるフタユビナマケモノ。

動いている途中で突然止まり、眠ってしまったりするところはいかにも
「ナマケモノ」っぽいですが、でもコアリクイよりは活発に動いていて、
「コアリクイ」と「ナマケモノ」の看板を入れ替えてしまいたいくらいでした。

さて、その「ナマケモノ」という看板を見たときに交わされる親子の会話が、
なかなか面白いのです。

お父さんの場合は、たいてい「お、○○○(←子供の名前)がいるぞ」と
言うことが多いのですが、お母さんの場合は…

「あ、お父さんがいるよ」

と言う人が多いのです。そして、子供の場合もやはり…

「あ、お父さんがいる!」

と言うことが多いのですが、「お母さんがいる」とは言わないんですよね。

数ある動物の名前の中で、ナマケモノほどダイレクトな名前はありません。
その意味が「怠け者」だけに、「ナマケモノ」の看板を見ては「おっ!」と
ひらめいて、何かを言いたくなるのはわかるのですが…。

多くのお母さんや子供たちが、「ナマケモノ=お父さん」とひらめいてしまう
事実を目の当たりにすると、同じ男性の私としてはちょっぴり複雑な思いが
するのでした。

Saitama_d31_0324
ま、お父さん、ポレポレで行きましょうや。

でも、「ナマケモノ」と呼ばれちゃう世のお父さんたち!ナマケモノって、
実はとってもスゴイ動物なんですよ。コチラのブログをお読みになって、
「おっ、オレはナマケモノそのものだ」と思われたお父さんは、正々堂々と
「オレ様はナマケモノじゃ!」と名乗りましょう。

ちなみに。

ナマケモノに関してネットで調べるときに、「ナマケモノ 生態」という
キーワードで検索してみると、「ナマケモノの飼い方は…」とか「ウチの
ナマケモノは…」といったサイトがけっこうヒットしてきました。

「ナマケモノをペットとして飼っている人って、いるんだなぁ」と思って
そうしたサイトを見てみると…

それは動物のナマケモノではなく、ダンナ様のことだったり、彼氏のこと
だったり、はたまた自分のことだったり…その生態や「取り扱い方」を
つづったブログがけっこう多くありました。

ナマケモノって、なじみの薄い動物かと思いきや、我が家に生息している
身近な動物だったりするんですね、意外と。

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2010年6月 2日 (水)

ナマケモノって…すごい!

「いつも、ウトウト」シリーズに登場させる動物について考えているとき、
最初に思い付いたのが「ナマケモノ」でした。

ナマケモノ…その名前からして、一日中何もせずに寝ていそうな雰囲気!

いろいろと下調べをしていくと…

「あまりに動かないので体にコケが生えることがある」
「木から降りてくるのは、排泄のために週に1回程度」
「ほとんど食べないため、中世の頃は『空気をから栄養分を摂っている』
…と言われていた」

などなど、すごい記述を見かけます。
そもそも、コケが生えるほど動かないなんて、尋常じゃありません。

「動かない鳥」として有名な、あのハシビロくんでさえ、コケが体に生える
という話は、さすがに聞いたことありません。

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ん? ボクのことですか? (ハシビロコウ 千葉市動物公園)

しかし…調べていくうちに「ナマケモノはタダモノではない」ということが
だんだんわかってきました。

このブログを書くようになってから、いろんな動物の生態について調べては、
「へぇ~」「ほ~」と改めて感心することしきりなのですが…
このナマケモノについては、「衝撃的」とも言える「発見」の連続でした。

最初は「いつも、ウトウト」の登場動物のひとつとして、このナマケモノを
取り扱おうと思ったのですが…そうではなく、「ナマケモノって、スゴイ!」
ということで、別の話題として今回取り上げることにしました。

Saitama_d31_0301
ボクが、フタユビナマケモノです。
(以下、写真はすべて埼玉県こども自然動物公園)

でも…ナマケモノについて書こうと思っても、これまで撮った写真の中に
ナマケモノの写真が手元にありません。

そこで「ナマケモノを写真に撮りたい!」と思い、フタユビナマケモノを
屋外展示している埼玉県こども自然動物公園へ向かいました。

5月の天気に恵まれたある日、いつものとおり開園前に動物公園に到着。
開園と同時に、他の動物には目もくれず、動物園の奥にいるナマケモノを
目指してスタスタと歩き、お目当てのナマケモノの前に到着すると…

ナマケモノは案の定、飼育舎のガラスの中でブラリとぶら下がり中。
ガラスの反射が激しくて、写真撮影どころか肉眼でも見にくい状態です。

相手はナマケモノ、動かないだろうから長時間の待機は覚悟の上。
「隣のコアラでも撮りながら待つか」と、横目でナマケモノを気にしながら
コアラをしばらく撮っていると…

Saitama_d31_0275
そろそろ、外に出てみようかな。

なんと!待つこと1時間余りで、飼育舎の中から外に向かって張られた
ロープを伝って、フタユビナマケモノが動き始めました。

コアラを撮っているときに、飼育担当の方が「最近、ナマケモノの調子が
いまひとつで、なかなか出てきてくれないんだよね…」と話されているのを
小耳にはさみ、「今日は無理かもなー」と思っていただけにラッキーです。

とはいえ…

Saitama_d31_0282
でも、やっぱり眠いかも…

動き出してくれたものの、途中で休んでしまったり…

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あー、カユイ、カユイ。

長いツメでグルーミングしてみたり…

Saitama_d31_0289
ふぁ~、やっぱり春は暖かくて気持ちがいいねー

と、あくびをしてみたり…やっぱり、なんともマイペース。

しかし、動き始めると意外と動きが早く、目の前のナマケモノをカメラで
追うのもちょっと慌てるほどでした。

Saitama_d30_5732
さ、お出かけ、おでかけ。今日はサービスしまっせ~!

では、ナマケモノについてご紹介しましょう。

ナマケモノは中南米の熱帯雨林に住む動物。
大きく分けると「ミツユビナマケモノ」と「フタユビナマケモノ」がいて、
動きがスローで「怠け者らしいナマケモノ」と呼ばれるのは前者の方。

フタユビナマケモノは動きが早く、あまり怠け者っぽくないらしいですが、
それはあくまでもミツユビナマケモノに比べての話。他の動物に比べると、
フタユビナマケモノも十分に「ナマケモノらしく」スローペースです。

そもそも「ナマケモノ」と名付けておいて「怠け者っぽくない」というのも、
何ともおかしな感じがしますけど…

ナマケモノはほとんど樹上で生活しており、寝るときも、食べるときも、
子育てをするときも、とにかく木から降りてきません。
ただ、排泄をするときだけ、週に1度ほど木から降りてくるのだとか。
それ以外は木の上で過ごし、その生涯のほとんどが樹上生活なのです。

Saitama_d31_0295
よいしょ、よいしょ…

ナマケモノは草食動物ですが、ほんのわずかの木の葉しか食べません。

「ほんのわずかって、どのくらいわずか?」と思って調べてみたのですが、
資料によって「8g」とか「10g」など記述がまちまちでした。

とはいえ、この体の大きさ(体長40~70センチ、体重5~10kg)で、食べる
木の葉が10g程度というのは、「ほんのわずか」に相違ありません。

なんで、こんなに少量しか食べなくても生きていけるのか…

そこにナマケモノのスゴさがあります。

Saitama_d31_0327
スゴい?そっかなー、ナマケモノ流に生きているだけなんだけど。

その、ナマケモノ流の生き方とは…ひと言でいえば「省エネルギー」です。

哺乳類といえば、「恒温動物」と考える方が多いと思います。
たしかに哺乳類のほとんどの動物たちは、体温を一定に保つ恒温動物で、
気温によって体温が変動する変温動物は、爬虫類や魚類、昆虫…という
のが一般的な考え方ですね。

しかし、ナマケモノは哺乳類なのに体温を一定に保つことをせず、まるで
変温動物のように、気温に合わせて体温が変動するのです。

実は、この「体温を一定に保たない」というのが、ナマケモノが極少食でも
生きていける最大の理由です。

恒温動物は体内で熱を発生させて、体温を一定に保っています。
そのためには、エネルギーを体内で燃焼する必要があるワケで、その分
エネルギーの補給が必要になります。

ところが、体温を一定に保つ必要がなければ、体内でエネルギー燃焼し、
熱を発生させる必要もなく、その分のエネルギー補給も少なくて済む…
つまり「食べる量も少なくてすむ」というワケです。

もちろん、「ゆっくり動く」ということも、省エネルギーに効果的ですが、
1日に20時間近く寝ているコアラでさえ、食べる葉っぱの量は500g以上
なのですから、「体温を一定に保たないこと」によるエネルギー節約が、
いかに大きいことがわかりますね。

Saitama_d31_0388
スローライフだと、省エネできるんだよね…

しかし…

いくらエネルギーの消費量が少ないからといって、1日の食物摂取量が
わずか10g程度…それも高エネルギーの肉ではなく、木の葉ですから、
あまりに少ないように思います。

…と思って調べてみたら、なんとエネルギーの消費も徹底して抑制して
いるだけでなく、エネルギーの吸収も徹底していることがわかりました。

ほんの少ししか食べないナマケモノですが、その消化には約1ヶ月もの
時間をかけているのだとか!

ゆっくりと消化してエネルギーを少しずつ吸収していく…ある意味では
非常に効率の良いエネルギー吸収の方法です。

Saitama_d31_0408
よっこらせ、よっこらせ…

この徹底した「省エネ」ぶりには驚きますが…いちばん驚くべきことは、
ナマケモノがこのように「進化」してきた、という事実だと思います。

多くの動物たちは、生存競争を勝ち抜いていくために、進化の過程で
「より強く」「より大きく」「より早く」なってきました。

しかし、ナマケモノは「体温を一定に保たない」という、およそ哺乳類とは
思えないような選択までしてエネルギー消費を抑え、スローライフを送る
といった、一見「退化?」とも思える方向に進化してきた、ということは、
大変な驚きだと思うのです。

でも、そんなナマケモノを見ていると、私たち人間が「より早く」
「より便利に」を目指して、地球上の資源を多く消費してきたことが、
果たして「進化の結果」と言えるのかどうか、疑問に思えてきます。

省エネルギーに徹することで、厳しい自然界の中で生き抜いていく術を
身に着けたナマケモノ。これが進化の結果のひとつならば、私たちにも
見習うべきところが多いように思います。

ちなみに、野生のナマケモノは糞をする際に、自分が住んでいる木の
根元に降りてきて穴を掘り、そこに糞をしてから穴を埋めるのだとか。
自分たちの生命を養ってくれている木に、ちゃんとお返しをしている、
ということですね。

やはり、ナマケモノってスゴイ!と思うのです。

namakemono

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