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2010年6月20日 (日)

ツノ、ありますけど…(2) ツノがあるゆえに

ツノがある動物はイロイロいるけれど、そのツノの種類をイロイロとご紹介
する「ツノ、ありますけど…」シリーズ。

前回はツノを持つ代表的な動物「ウシ科とシカ科」についてご紹介しました。

その中で、「アフリカのサバンナにシカ科はいない」というお話をしましたが、
では、サバンナでツノを持つ動物はすべて「ウシ科」なのかというと…
いえ、いるんです。シカの仲間でもウシの仲間でもない動物が。

それも巨大な動物…そう、サイです。

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どもー、サイです~。 (クロサイ 愛媛県立とべ動物園)

サイはアフリカと東南アジアにすむ動物で、陸上に住む動物としてはゾウに
次ぐ大きさの大型動物です。
東南アジアにはスマトラサイ、インドサイ、ジャワサイ、アフリカにはクロサイ、
シロサイの計5種類のサイがいますが、その全てが絶滅危惧種に指定されて
います。

スマトラサイ、ジャワサイ、クロサイは絶滅危惧種の中でも「絶滅寸前」の
ランクに指定されており、中でもジャワサイの野生個体はもはや数十頭しか
いない、「地球上でもっとも少ない野生哺乳類」とまで言われています。

なぜ、そんなに数が減ってしまったのか…

それは、言うまでもなく人間による乱獲が主な原因です。

「サイのツノは漢方薬に使われている」…という話をご存知の方もいるかと
思います。調べてみると、サイのツノは2千年以上も前から解熱や強壮に
効果があるとして、漢方薬に使われていたようです。

サイのツノをよく知れば、そうした効果は何もないことは明白なのですが…

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サイのツノ? 何かに効くとは思えないけどなぁ…
(シロサイ 静岡市日本平動物園)

ここで、もういちど上の写真を見てみてください。

たいてい、動物のツノといえば左右対称にあるものですが、サイのツノは
頭の真ん中に「ドーン」とありますよね。

地球上にはツノを持つ動物は数多くあります。

形状も短いものから長いもの…

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オリックスのツノは1mにもなりますが…左右対称にあります。
(ベイサオリックス ケニア・サンブール国立保護区)

見事にグルグルと巻いているもの…

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見事と言える巻きっぷり…ですが、左右対称にあります。
(ムフロン 千葉市動物公園)

とにかく、ものすごく巨大なもの…

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どんなに巨大なツノでも、ちゃんと左右対称にあります。
(ヘラジカのはく製 大哺乳類展・国立科学博物館)

しかし、サイの角は…

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ボクのツノはアタマの真ん中にあるんよー
(クロサイ 愛媛県立とべ動物園)

たぶん、私が知る限りでは「ツノ」と呼ばれるもので、左右対称の位置に
ツノがない動物というのは、サイが唯一ではないかと思います。
(「イッカク」というクジラの仲間は、ツノ状のものが頭の真ん中から1本だけ
出ていますが、それはツノではなく歯(牙)です)

サイのツノが、他の動物たちとツノの生え方が違うのは…
前回「シカですか?ウシですか?」で説明したツノの成り立ちとはまったく
違うものだから、なのです。

ウシやシカのように、骨格に由来するツノとはちがい、サイのツノは「皮角」と
呼ばれるもので、皮膚が角質化して何層にも積み重なってできたもです。
つまり、骨よりはむしろ「毛」に近いもので、実際にサイのツノの成分は毛の
成分とほぼ同じ「ケラチン」というタンパク質から構成されています。

ということは…

もし漢方薬で「サイのツノが効く」とすれば、「毛が効く」と同じことにもなり、
サイのツノに解熱効果や強壮効果があるならば、「自分の毛を粉末にして
飲んでも効く」ということになってしまうのですが…

実際にそんなことをする人はいませんよね。

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ツノが「毛」ということは…ツノはヘアスタイルってこと!?
(クロサイ 横浜市金沢動物園)

イイこと言いますねぇ…その表現は正しいかもしれません。

サイのツノは「皮膚が角質化して何層にも積み重なったもの」ですから…
そうなんです、どんどんと伸びてくるんです、サイのツノは。

たとえば子供のサイは…

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こんにちは、かみね動物園のサニーです!
(クロサイ 日立市かみね動物園)

いちおう、ツノのようなものがありますが、まだ平べったいですよね。
「積み重なってできていく」ワケですから、子供の頃はまだ平べったいのです。

この子供のサイは、「いつも一緒だね」でご紹介したクロサイの子供ですが、
お母さんと比べてみると…

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お母さんのツノは大きいねぇ…
(クロサイの親子 日立市かみね動物園)

成長していくにつれ、ツノもどんどん「伸びて」いくことがわかりますね。

動物園で見るサイも立派なツノを持っていますが、野生のサイはもっと立派な
ツノを持っています。

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こちらが野生のシロサイ (ケニア・ナクル湖国立公園)

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こちらが野生のクロサイ (ケニア・マサイマラ国立保護区)

野生のサイはツノが長く、そして鋭いですね。これが本来のサイのツノです。
でも、こんなツノで突かれたら、大ケガしてしまう…ということで、動物園では
サイのツノを短く切ることがあるそうです。

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飼育員をケガから守るために、動物園ではサイのツノを短くすることも…
(インドサイ 多摩動物公園)

「え!?そんなコトをして大丈夫なの?」「かわいそうじゃない?」と思われる
かもしれませんね。でも、大丈夫なんです。サイのツノは「毛」なのですから、
感覚的には私たちが定期的に髪を切るのと同じこと。

野生のサイのように、動物園のサイのツノも伸び放題、尖がり放題にするに
越したことはないですが、それよりも、飼育員がケガをして、サイの飼育を
続けられなくなる方が問題です。

なにせ、サイは絶滅危惧種。
世界各地の動物園でも繁殖が試みられ、地球上からサイそのものが消滅
しないように努力が続けられています。
そのためには、安全に飼育できることも、非常に大切な要素なのですから。

さて、なんの根拠もない「効能」や「迷信」が信じられ、人間の乱獲によって
絶滅の危機にまで追い込まれてしまったサイ。

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ジャワサイは75頭、クロサイは2,600頭…ケタ数のちがいはあれど、
「数えられるほど」しか地球上に存在しないことには変わりありません。
(多摩動物公園の掲示板から)

その原因はツノにあったワケですが…現在でもサイのツノは、闇市場で高値で
取引されているという実態があり、密猟が絶えないのが事実です。

密猟されるのが「ツノが目当て」ということもあり、保護地域によっては野生の
サイのツノをわざと切ってしてしまい、密猟を防いでいるところもあるのだとか。

いくら「毛と同じで、また生えてくるから…」とはいえ、野生のサイのツノを
そうした理由で切らなくてはいけない、というのは何とも悲しいことです。

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こんな光景が、サバンナから消えてしまいませんように…
(クロサイ ケニア・マサイマラ国立保護区)


Tsuno

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