« サバンナの風に聴く(11) 草食動物の共存(1) | トップページ | 小さな動物園から(1) 桐生が岡動物園 »

2010年7月14日 (水)

サバンナの風に聴く(12) 草食動物の共存(2)

決して「豊かな大草原」とはいえないサバンナ。
なのに、どうしてこんなに多くの種類の草食動物たちが生きていけるのか…

前回の「草食動物の共存(1)」は、「草食動物には共存のスタイルがある」
と言ったところで、第1話が終わってしまいました。

D30_8281
だって、それ以上続けたら長くなっちゃうからね。
(ハーテビースト ケニア・マサイマラ国立保護区)

そうなんです、おっしゃる通り…というワケで。

これから2回に分けて、その「共存のスタイル」について、お話することに
しましょう。今回はその1回目ということで、「背が高い動物と低い動物」
というお話です。

サバンナには大小さまざまな動物たちがいます。
ウサギやリスなどの小動物を除けば、いちばん小型のアンテロープである
「キルクディクディク」が体長50センチ程度。

Image146
ボクがサバンナでもっとも小さいアンテロープだよ。
(キルクディクディク ケニア・サンブール国立保護区)

いっぽう、サバンナ最大の動物といえば何といってもアフリカゾウで、
その体長は6~7mですから、ディクディクの12倍以上の大きさです。

D31_2086
大きいことはイイことだ~
(アフリカゾウ ケニア・マサイマラ国立保護区)

「体長」としてはアフリカゾウが最大級ですが、「体高」として最大なのは
キリンですよね。キリンは大きなものになると体高が5m以上あります。
キルクディクディクの体高も50センチ程度ですから、これまた10倍以上。

D31_2821
毎日、眺めの良い生活をしています。
(マサイキリン ケニア・マサイマラ国立保護区)

もし、仮に私たちがディクディクの立場だとしたら…

大型トラック並みの大きさのゾウが私たちの横を歩き、奈良の大仏ほどの
高さのキリンが目の前を横切って行くことになるのですから、サバンナの
動物たちの大きさの違いといったら…すごいものですね。

さて、そんな大きなゾウも、高いキリンも、小さなディクディクもみんな
草食動物として、サバンナで共存をしています。これまでにキリンが
シマウマを追い払ったり、ゾウが鼻を高く上げてヌーを威嚇している姿を
見たことがありません。

Image156
ゾウに踏まれそうになったこと?そういえば、そんなコトないなぁ
(キルクディクディク サンブール国立保護区)

なぜ、食べ物を巡っての争いが起きないのか。

それは、その「大きさの差」がひとつの理由になっています。

普通に考えると、体の大きい動物が強く、体の小さい動物は大きな動物に
追い立てられているように思えるのですが…

でも、サバンナでは、
 「体が大きいから食べられるもの」を食べる
 「体が小さいから食べられるもの」を食べる

という「食べ分け」が見事にできています。これは、逆に言えば、
 「体が大きいと食べにくいもの」は食べない
 「体が小さいと食べにくいもの」は食べない

ということでもあります。

いちばんわかりやすいのはキリンです。

以前に、「キリンの首はなぜ長い」で、キリンは首が長いので草食動物が
主に食べる草ではなく、高い木の葉を食べることができる…ということを
ご紹介しました。

これが典型的な「体の大きさによる食べ分け」の一例です。

ちなみに、キリンの特徴は「首が長い」と考えがちですが、脚もとっても
長いのです。小さい体と長い脚、そして細い首…見事なプロポーション!

D30_1419
かあちゃんも、若い頃からモデル体型だったんだよね。
(マサイキリン マサイマラ国立保護区)

でも、そんな見事なプロポーションがゆえに、地面に首を近付けるのは
至難の技…とても地面に生える草を食べることはできません。

小型のアンテロープが食べる草を食べずに、高い木の葉を食べることで、
キリンは他の草食動物との「共存」ができている、ということですね。

キリンの他にサバンナで木の葉を食べる動物といえば、クロサイもいます。

サバンナにはクロサイとシロサイの2種類がいて、それぞれの違いについて
なんでシロサイ?どうしてクロサイ?」でご紹介したことがありますが…

クロサイは体は大きいものの、キリンと違って脚も首も短いので、地面に
生える草を食べやすい体型なのですが、低木の葉を主に食べています。

そのため、口先でつまみ取って食べやすいように、クロサイの上唇部分は
尖っていて、口先が三角形になっているのが特徴です。

Ke07110008_32
シロサイさんは、地面の草を食べているんだけどね。
(クロサイ マサイマラ国立保護区)

クロサイも、数が多いアンテロープやシマウマたちが食べる草ではなく、
低木の葉を食べることで「共存」ができていることになります。

クロサイは絶滅危惧種で、サバンナには現在2千数百頭しかいませんが、
実は100年ほど前には数十万頭いたと言われています。
こんなに大型の動物が数十万頭もいると、食べる量も半端じゃないハズ。

でも、こうして他の草食動物が食べない低木の葉を食べることによって、
食物の競合を避け、共存ができたからこそ、数十万頭も存在しえたのだ
と思います。

数十万頭もいたクロサイが、たった100年ほどで2千数百頭にまで
数が減ってしまった原因は、言うまでもなく「人間」なのですが…
(詳しい内容についてはコチラをぜひご覧ください)

さて、体が大きい動物の代表格で忘れてはイケナイのが、ゾウです。

D30_1077
忘れちゃいけないゾウ~ (アフリカゾウ サンブール国立保護区)

ゾウといえば、その特徴はなんと言っても長い鼻です。
長い鼻を器用に使う姿を動物園でご覧になった方も多いと思いますが…

実はその「器用な鼻」が、野生動物界ではちょっと問題になっています。
というのも、ゾウは他の草食動物と「共存」ができていないからです。

陸上最大の哺乳類であるゾウは、体も大きいぶん食べる量も半端ではなく、
野生のアフリカゾウは1日に150Kgもの量を食べると言われています。
それだけの量を食べようとすると、ほぼ1日中を「食べること」に費やし、
食べるものも地面に生える草から高い木の葉まで、およそ植物というもの
すべてを選り好みせずに食べないと、巨大な体を維持できません。

Ke08080003_21
食べ物を選り好みしていたら、ダメなんです…
(アフリカゾウ サンブール国立保護区)

ゾウの鼻が長くなったのは、地面の草をむしり取ったり、高い木の葉を
ちぎったりして大量の食物を確保し、その巨体を維持するためであり、
逆にゾウが巨大であることができるのも、その長く器用な鼻のおかげ、
ということでもあるのですね。

ところが、その器用な鼻で、植物なら何でも大量に食べてしまうゆえに、
ゾウが他の草食動物との「共存」どころか、「圧迫」をしてしまっている、
という現実があります。

人間がサバンナに進出してくる以前は、ゾウが移動するサバンナの範囲が
とても広大だったので、たとえ大量に草や木の葉を食べても、ゾウが他の
地域に移動している間に、植物は再生をすることができました。

でも、人間の生活地域がサバンナに進出し、ゾウの生息地域が限られて
くると、ゾウは狭い地域に留まるようになり、植物の再生が追いつかなく
なってしまい…挙句の果てにはサバンナが砂漠化してしまい、他の動物が
生きていけなくなっている、つまり、「共存ができない」ということが現実に
起こっています。

ケニアのアンボセリ国立保護区ではその傾向が強く、増えすぎたゾウを
他の動物保護区に移送するなどの対応が取られていますが、地球温暖化の
影響も相まって砂漠化が止まらず、対応に苦慮しているそうです。

Ke03090025_32
かつては「共存」できていたはずのゾウなのですが…
(アフリカゾウの家族 ケニア・アンボセリ国立保護区)

他の草食動物と共存できなくなりつつあるゾウではありますが。

でも、ゾウは「何でも食べてしまう、草食動物の敵!!」ということでも
ありません。というのも、食べる量も半端でなければ、「出す量」も
半端ではないからです。

1日150kgの植物を食べるゾウですから、糞の量も100kg前後にもなります。
それだけ大量の糞をサバンナに落としながら移動していくということは、
それだけ優良な肥料を撒きながら移動していることと同じこと。
そこにはやがて、草食動物たちが好む柔らかな草が生えてくるのです。

つまり…バランスの良い状況であれば、ゾウもやはり他の草食動物たちと
ちゃんと「共存」しているワケですね。

こうして体の大きい草食動物たちは、小さい草食動物たちと食べるものを
分けることによって共存したり、同じ草を食べたとしても、その後にまた
草が生えてくるようなサイクルを保つことによって、「共存」しています。

そうした「食べ分け」をするために、体の型にもそれぞれの特徴がある、
というのも、これまた進化の驚くべき姿と言えるかもしれません。

では…

サバンナの草食動物の中では、圧倒的多数を占めるシマウマやヌーなど、
小型の草食動物たちは、いったいどうやって共存しているのか!?

D31_2428_1
次回は、いよいよ僕らのアンテロープのお話だよ。
(ウォーターバック マサイマラ国立保護区)

その話はまた次の機会にすることにしましょう。
ちょっと難しくてわかり辛い話題が続いていますが、そこには驚くべき
事実がありますので、お楽しみに!


【「草食動物の共存」つづきとこれまでの記事】
草食動物の共存(1)はコチラ
草食動物の共存(3)はコチラ
草食動物の共存(4・最終回)はコチラ

savanna_grass

|

« サバンナの風に聴く(11) 草食動物の共存(1) | トップページ | 小さな動物園から(1) 桐生が岡動物園 »

サバンナの風に聴く」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/547433/48878682

この記事へのトラックバック一覧です: サバンナの風に聴く(12) 草食動物の共存(2):

« サバンナの風に聴く(11) 草食動物の共存(1) | トップページ | 小さな動物園から(1) 桐生が岡動物園 »