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2010年7月25日 (日)

サバンナの風に聴く(14) 草食動物の共存(4・最終回)

サバンナに生きる多くの種類の草食動物たち。
その草食動物たちが、どのように共存しているのか?

このテーマを取り上げてみたら、あまりにも壮大になってしまいました。
今回はこのテーマの4回目。

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草食動物の話題で4回も続けるなんてねぇ…

まぁ、確かにそうですが…それも草食動物の「共存」などという、お堅い
テーマで4回も連続で恐縮です。が、今回で「最終章」になりますので、
どうかお付き合いください。

さて、前回はサバンナの草食動物の中心を成しているアンテロープ類や、
シマウマなどを「大きなアンテロープ類」「中型Aグループ」「中型B
グループ」と、大まかに3つのグループに分けて、それぞれの「食べ方」
についてお話をしました。

おおまかに言えば、前回のグループ分けで「それぞれが食べ分けをして
いるから、これだけ多くの草食動物たちが共存できる」という結論に
まとめることもできるのですが…

実は草食動物たちは、それぞれの体の特徴によってさらに細かく、草を
食べワケしている、というのが今回のお話です。

以下の話の中で「中型Aグループ」「中型Bグループ」と出てきますが、
「それって何のこと?」という方は、まずコチラをご覧ください。

さて…

中型Aグループは、サバンナ一面に生えるイネ科の植物を主食として
いるのですが、サバンナでも数が多いヌーとシマウマが同じ草を食べて
いたら、あっというまに食べ尽くしてしまうことになります。

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サバンナ一面に生えるイネ科の同じ草を食べているのですが…

でも、現実にはそうなっていません。それはなぜか…。

シマウマは、サバンナで唯一の「ウマ科」の動物です。
ウマ科の特徴のひとつに「門歯」があります。ウマ科の上下の顎には
門歯(つまり前歯)があって、モノを噛み切ることができます。

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ウマの上下の顎には、門歯があるのです。(長野県 滝沢牧場)

シマウマにも上下の門歯があって、草を噛み切ることができます。
そのため、シマウマは草の先端の柔らかい部分だけを好んで噛み切って
食べています。

いっぽう、ウシ科の動物には上あごに門歯がありません。
そのぶん舌が長くなっていて、舌先と下の門歯を使って、草の真ん中を
刈り取るようにして食べるのが特徴です。

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ウシ科のバッファローにも、上の門歯がありません。

唐突ですが、田んぼのイネを想像してみてください。

たわわに実ったイネの穂先部分を、ハサミで切り取っていく…これが、
シマウマの食べ方です。

そして、穂先が切り取られた後に残った茎や葉の部分を、手でたぐり
寄せながら鎌(かま)で刈り取っていく…これがヌーたちの食べ方です。

この「ハサミ」にあたる部分がシマウマの上下の門歯で、「手でたぐり
寄せる」のがヌーたちの「長い舌」の役割で、刈り取る「鎌」にあたる
部分が下の門歯、ということになります。

この食べ方の特徴は口の形にも現れていて、草の先端をつまみ食いする
シマウマは口先が細くなっているのに対し、草をかき込みながら食べる
ヌーやバッファローの口先は幅広くなっています。

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ヌーの口は幅広くなっていているので、草を効率よく食べられます。

こうして同じイネ科の草を食べているシマウマやヌーは、食べる部分が
違うために「共存」することができているのですね。

さて、イネ科の草の先端部分をシマウマが、茎や葉の部分をヌーたちが
食べたあとに、トムソンガゼルやインパラといった「Bグループ」の
動物たちが草を食べるのですが…。

この「Bグループ」の体にも、共通した特徴があります。

トムソンガゼルとインパラの「口の形」に注目してみてください。

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こちらはトムソンガゼルです。

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こちらはインパラです。

ヌーに比べると口先が尖っていて、小さいですよね?

これが「(3)中型Bグループ」の特徴なのです。彼らはヌーたちが
刈り取るようにして食べた後に生えてくる、柔らかい草の部分を好んで
食べています。そのため、選んで食べやすいように口先が小さく尖って
いるのですね。

イボイノシシも、インパラたちと同じように根元に生える柔らかい草を
好んで食べていますが、彼らの場合はその食べ方に特徴があります。

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イボイノシシの食べ方といえば…

前脚を折って食べる、この食べ方!これがイボイノシシの特徴でね。

家族そろって、こうした食べ方をしている光景は、なんとも微笑ましい
ものですが、イボイノシシも警戒心が非常に強いため、そんな光景を
写真に収めることが、なかなか難しい動物です。

小難しい話を長々と書き綴ってしまいましたが…

こうして、同じサバンナに住む草食動物でも「木の葉」「草」という
食べ分けがあり、さらに「木の葉」でも「高い木」「低い木」という
食べ分けが、「草」でも「先端」「真ん中」「根元」という食べ分け
があるからこそ、多種多様な草食動物が共存できるワケです。

さらに、そこに「草を求めて移動する」ということが加わることで、
草は食べつくされることなく再生され、多様な草食動物を養うだけの
植物が保たれていく、ということにつながっています。

自然界の「共存」というのは、本当に見事なものです。

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その共存は、途方もなく長い時間をかけてできたものです

しかし、こうした共存は草食動物どうしだけでなく、植物や気候との
微妙なバランスの上に成り立っていて、その一部が崩れてしまうと、
すべてが崩れてしまう、という脆さを同時に持っています。

地球温暖化、環境破壊、密猟など…私たちがそうしたバランスを崩す
原因を作っているのは悲しい現実ですが、いっぽうで人知を以って
すれば、バランスを維持することが可能なのも事実です。

そういう意味では、草食動物たちの「共存」とは、私たち人間との
「共存」と同じ意味なのかもしれません。

【これまでの「草食動物の共存」記事】
草食動物の共存(1)はコチラ
草食動物の共存(2)はコチラ
草食動物の共存(3)はコチラ

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