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2010年9月26日 (日)

ライオンのたてがみ

たてがみ…漢字で書くと「鬣」と、何とも難しい漢字になりますが、
もともとは「立つ髪」という言葉が変化したものだそうで、辞書を
調べてみると…
 ウマ、ライオンなどに見られる、頚部背面の比較的長い毛の総称。
 雌性ホルモンの支配を受けるものと、受けないものとがある。

とあります。

ウマのたてがみは、オスにもメスにもありますが…

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ウマのたてがみは、雌性ホルモンの支配を受けません。
(サラブレット マザー牧場・千葉県)

ライオンのたてがみはオスにしかありません。

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ライオンのたてがみは、雌性ホルモンの支配を受けるものです。
(ライオンのオス マサイマラ国立保護区・ケニア)

つまり…ライオンにとって、たてがみは「オスのシンボル」なワケ
ですが、このたてがみは、成熟したオスになればなるほど立派に
なっていき、若いうちはまだ貧弱なものです。

D30_8904
このライオンは「若い」というよりは、まだ子供に近いかも…
(若いオスライオン マサイマラ国立保護区・ケニア)

さて、このオスライオンのたてがみ。何のためにあるのでしょう。

ライオンに限らず、オスだけの特徴が体にある場合は、たいていは
「メスの目を引くため」です。ライオンのたてがみも、そのためと
言われており、メスは立派なたてがみのオスを選ぶ傾向があります。

動物は子孫を残していくことが、生存の目的のすべて。
より多くの、そして健康な子供を残していくためには、健康で強い
オスが選ばれるのは当然のこと。

そのため、立派なたてがみのオスライオンが選ばれるのは、自然の
摂理にかなったことなのです。

D30_2000
つまり、立派なたてがみは「強さのシンボル」なのですね。
(ライオンの夫婦 マサイマラ国立保護区・ケニア)

この「強さのシンボル」は、メスにモテるためだけではありません。

ライオンのオスは、メスをめぐって争いをします。
「百獣の王」ライオンが争うのですから、かなり激しい戦いです。
下手をすれば、致命的な傷を負いかねない…

そんな争いを避けるためにも、たてがみは役に立っている、という
説もあります。

つまり。

見るからに、自分より立派なたてがみを持った相手との争いを避け、
致命傷を負わないようにする…ということなのでしょうけど。

ただ、自分がどれだけのたてがみを持っているのか、鏡を見ないと
わからないと思うのですが…どうなんでしょう?

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鏡なんて、サバンナでは見たことないねぇ
(マサイマラ国立保護区のオスライオン)

さて。

ここまでのお話は、動物に興味関心がある方ならば「想定内」の
お話だと思います。ここからが、今回の本題です。

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え?まだ本題じゃないの? 長いブログは読み飽きちゃうよ。
(若いオスライオン マサイマラ国立保護区・ケニア)

先日、動物園に向かうクルマの中で、こんな話を聞いたのです。

気温が低いところに住むライオンは、たてがみが長く豊かになる。
そんな研究結果が、アメリカで発表されている。

とても気になる話だったので、家に戻ってから調べてみると、
たしかに2006年にそうした論文がアメリカで発表されていました。

論文によれば、全米17ヵ所の動物園のオスライオンのたてがみを
調査したところ、特に寒い1月の気温差がたてがみの密度と強い
相関関係を持っており、「寒さ」がたてがみに影響をしていると
考えることができる、ということなのです。

ポイントは「寒さ」に相関関係があるということ。
もちろん「暑さ」も関係するのでしょうけれど、論文には「暑さ
よりも寒さに強い相関関係がある」と書いてありました。

アメリカ国内だけの、それもたった17ヵ所の動物園のライオン
だけで、そんな結論が出せるのか?という疑問はあるものの、
私自身の実感としては、その説に納得です。

というのも、ケニアへ通い始めてからというもの、日本の動物園
にいるオスライオンを見ると、「なんだかモコモコしているなぁ」
と、いつも思っていたからです。

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日本の動物園のライオンは、モコモコしていると思うのです。
(秋田市大森山動物園のオスライオン)

日本の夏は、東アフリカのサバンナと同等、又はそれ以上に暑く、
特に今年の夏は明らかにケニアのサバンナ以上の気温でした。

もし、ライオンのたてがみが「暑さ」に関係するものならば、
日本の動物園のライオンたちは、サバンナの野生のライオンと
同じようなたてがみを持っているハズです。

ところが、比べた印象としては「モコモコ」です。

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モコモコの、とこが悪いんだよ。
(愛媛県立とべ動物園のオスライオン)

いっぽう、日本の冬の気温は東アフリカのサバンナとは比べモノに
ならないくらい低いものです。(ある意味、日本の方がケニアより
過酷な気候なのかもしれません)

「ライオンのたてがみは、寒さによって密度が違う」というなら、
日本の動物園のライオンたちが「モコモコ」なのも納得ですよね。

もし、このブログをサバンナに住むライオンたちが読んだら…

きっと「あー、日本の動物園へ行ってモコモコになりたいなぁ」と
思うことでしょうね。

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日本へ行ってみたいなぁ…
(マサイマラ国立保護区のオスライオン)

ちなみに。

この話は、ただ単に「寒いとたてがみがモコモコになる」という話
で終わるワケではありません。もっと大きな影響があるのです。

ライオンの種や亜種の分類は、外見が基準になっており、たてがみも
その基準のひとつになっていました。ところが、同じライオンでも、
たてがみが住んでいる気候によって違うとなると、たてがみを基準
とした分類は改めて見直さないとイケナイのです。

さらに、かつて氷河期にヨーロッパの洞窟に住んでいた「ホラアナ
ライオン(洞穴ライオン~つい2000年ほど前まで生きていたらしい)」
には、たてがみがなかったとされていますが、氷河期という寒い時期に
「たてがみが無い」となると、それは現在のライオンの亜種ではなく、
まったくの別種である可能性が出てくるのです。

「寒いとたてがみがモコモコになる」という研究結果は、実は分類学上
おおきな影響を与えるものなのですね。

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個人的には、やっぱり野生のライオンのたてがみが、好きです。
(マサイマラ国立保護区のオスライオン)

Lions

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