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2010年10月27日 (水)

クマの不幸

最近、連日のようにクマによる被害がニュースや新聞で報道されて
います。今年はクマのエサとなるドングリが全国的に不作なので、
冬ごもりを前に食欲旺盛なクマが人里までエサを求めて下りてきて
しまっているのが原因、と言われていますが…

北海道ではドングリが不作でないにもかかわらず、クマが人里まで
下りてきているそうです。

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最近、ニュースによく出ているんだけど…悲しいニュースだな。
(ツキノワグマ 盛岡市動物公園)

今年はたまたまドングリの事情があって、人里に下りてくるクマが
多くなり、ニュースになる機会が増えていますが…
実は、人とクマが遭遇してケガをしたり、人里に下りてきたクマが
農作物を荒らすといったことは、今に始まったことではありません。

環境省によると、「クマを目撃した」という報告があがった件数は
例年でも2000件以上もあり、その数は増加しているそうです。

これは、言うまでもなく人とクマの距離が短くなっているのが原因。

ドングリが不作でもない北海道でも、クマが人里に出没する件数が
増えているのは、人との距離が近くなるにつれ、人を恐れなくなる
クマが増え始めた…というのが原因のひとつと言われています。

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たしかに、このツメで襲われたら大怪我をしてしまいますが…
(ツキノワグマの手 盛岡市動物公園)

人に危害が加えられるような局面では、人里に下りてきたクマが
射殺されてしまうのは、やむを得ないと思います。
ただ、そうして射殺されたクマの映像を見る度に、いたたまれない
気持ちになります。

開発によって狭められた住み処の森に、食べ物が少なくなる一方で、
人里には農作物や残飯などの食べ物が豊富にあるわけですから、
食べ物を求めて人里に下りてくるのは、クマにとっては自然な行動。

こうして射殺されたクマたちも、決して人を襲おうとか、農作物を
荒らそうと思って人里に下りてきたワケではないのですから。

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ホントは、人を襲おうなんて、思ってもいないんだけどな。
(ツキノワグマ 上野動物園)

私がいちばん心配なのは、こうしたニュースが数多く出ることで、
「クマは人を襲う危険な動物だ」「危険な動物は駆除して当然だ」
といった「クマ=悪者」という声があがることです。

本州全域の森林に住むツキノワグマは、雑食性ではあるものの、
基本的には草食性で春は木の芽、夏は昆虫類やアザミなどの草花、
秋はドングリなどの木の実、アケビなどの果実を食べています。

北海道に住むヒグマは、シカやイノシシなどを捕食することもあり、
ツキノワグマよりは肉食性が強い雑食ですが、それでも人間を襲う
ということはありません。

野生のライオンが人間を襲おうとしないのと同様に、ヒグマたちは
「人間=食べる対象」とは思っていないからなのです(→注1)

そんなツキノワグマやヒグマが、なぜ人を襲うことがあるのか…
それは、クマが身の危険を感じ、自分や子供たちを守るために、
接近してきた人を襲ってしまうのです。

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実はノンビリ、ゆったり、大人しいんだよ。
(ツキノワグマ とべ動物園・愛媛県)

大切なことは、人にとってもクマにとっても幸せな環境を作ること。

人里にクマをおびき寄せたのは、人間が原因です。

例えば里山の荒廃。かつて森と里との境目にあった里山は、動物と
人間との境界線の役割(緩衝地帯)を果たしていました。

でも、山村の過疎化・高齢化が進み、里山を手入れする人が少なく
なったことで緩衝地帯がなくなり、クマがいきなり人里へ出没する
ようになってしまった…というのは、ご存知の方も多いでしょう。

また、後継者がいなくなって放置された果樹園も、クマにとっては
絶好のエサ場になります。放置されたとはいっても、毎年ミカンや
リンゴなどの果実が実り、食べ放題なワケですから…

過疎化や高齢化が進む山村では、こうした問題は何とも解決し難い
ことだとは思いますが、少なくともクマが人里に出没するように
なった背景には、そうした問題があることは認識しておきたいです。

さらに、最近の登山やアウトドアブームで人間が山林の中に入り、
そこに残していった残飯をクマが食べて味を覚え、人里まで下りて
くるようになった…といったケースもあるようです。(注2)

そんなことが、人にとってもクマにとっても不幸な環境を作って
しまっているのですね。

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ホッキョクグマも、生息地のアラスカでは、人里に出現して
同じような問題が起きているとか。
(ホッキョクグマ 上野動物園)

クマが人里に下りてくる原因を作っているのが私たち人間ならば、
人里に下りて来ないようにするのも私たちの役割です。

かつては、九州全域にいたツキノワグマも、ここ50年ほどは九州での
目撃情報がなく、熊本、大分、宮崎の各県では絶滅宣言が出ています。
ここ数年急増している人里での捕獲(捕獲されたクマは、ほとんどが
殺処分されているのが現実)により、野生のクマの数が激減している
地域もあると聞いています。

このままでは、またひとつ、日本から野生動物が消えてしまうことに
なりかねません。

そうならないよう、野生動物たちと私たちが共存できる環境とは何か、
そして、私たちにできることは何なのか…今回のクマ出没ニュースが
そんなことを考えるきっかけになれば、と願うばかりです。

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クマは、本来は私たちと共存できる存在なのですから。
(ツキノワグマ 盛岡市動物公園)

(注1)人食いライオンと人食いクマ
過去には人食いライオンや人食いクマがいたことは事実です。
これらは、不用意に近づいた人間を自己防衛のために襲った動物が、
人を食べてしまい「人間=食べ物」という認識を持ってしまったため、
その後も人を襲うようになったものです。

そのため、ケニアではライオンが人を襲う事故が発生すると、襲った
個体を徹底的に探し出し、そのライオンの一家全員を射殺します。
やむを得ない処置ではありますが、これも不注意な人間がライオンの
領域に近づき過ぎて起こったことで、生命を絶たれたライオンにも、
貴重な野生動物を失った私たちにも、両方にとって不幸な出来事です。

(注2)森林で残飯を捨てること
私たちにとっては食べ残しでも、森林の動物にとってはご馳走です。
いくら穴を掘って埋めても、鼻の良いクマやイノシシにとっては、
見つけるのは容易なことで、隠しても何の意味もありません。

また、キャンプ場や河原のバーベキュー場も、日中は人でいっぱい
でも、夜はすぐ近くの森から野生動物が下りてくることもあり、
そこでいったん残飯を見つけると、また再び下りてきてしまいます。

残飯やゴミは一切残さず、持ち帰る。
そんなことも、実は野生動物たちを保護するために役立つことです。

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コメント

私はクマがだいすきなのでニュースを見る度、とても悲しくなります。

投稿: | 2010年11月15日 (月) 01時03分

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