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2010年12月 9日 (木)

ツノ、ありますけど…(3) キリンのツノは何本あるの?

今回のタイトルをご覧になって「え?キリンにツノがあったっけ?」と
思われる方も少なくないと思います。

長~い首と長~い脚のキリン。その独特なスタイルの印象が強いため、
それ以外のキリンの特徴は、あんまり記憶に残っていない、というのも
無理からぬことです。

でも、キリンのぬいぐるみなどには、たいていツノが付いているので、
「うんうん、あるよね、ちゃんと頭に2本のツノが立っているよね」と、
おっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、そんなキリンのツノのお話です。

では、早速ですが、キリンのツノは何本あるでしょう!?

この質問に正確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。

Ohmoriyama_d30_7049
え?2本じゃないの?鏡を見たことがないから、わからないなぁ
(アミメキリン 大森山動物園・秋田市)

これまで「ツノ、ありますけど…」のシリーズでは、
◆ウシ科とシカ科のツノの違いのお話
◆サイのツノのお話
…をしてきました。

簡単に言えば、ウシ科のツノは骨の一部で、体格とともに成長し続け、
抜け落ちることがなく、シカ科のツノは骨と分かれていて、1年ごとに
生え変わります。

Tamazoo_d30_8175
ウシ科のツノは、骨の一部だから抜け落ちないんだよ!
(アジアスイギュウ 多摩動物公園・東京都)

ウシ科やシカ科のツノは、必ず頭の左右対称に1本ずつ生えるのに対し、
サイのツノは頭の真ん中に生えてくるのですが、それはサイのツノが
骨格に由来するものではなく、毛が変化してできたものだから…という
お話でした。

Tobe_d30_0454
サイのツノは真ん中…もともとは毛が変化したものだからねー。
(クロサイ とべ動物園・愛媛県)

ここで、キリンにお話を戻しましょう。

キリンはウシ亜目に属する動物で、ウシ科やシカ科の動物たちと同様に
反すう胃を持っています。(反すうはリンクさせる)
そして、やはり他のウシ科動物と同様に上顎歯がなく、長い舌を器用に
使って木の葉を絡め取って食べています。

そうした生態はウシ・シカ科そのものなのですが、キリンはどちらにも
属さず、「キリン科」という別のグループを構成しています。
「首が長いから?」「背が高いから?」と思われるかもしれませんが、
同じキリン科の中には首が短いオカピもいて、首の長さだけが分類の
基準ではありません。
(キリンの祖先は首が短かったと言われています→詳しくはコチラ!

Zoorasia_d30_0932_2
ボクもキリン科だよ~
(オカピ よこはま動物園ズーラシア)

では、ウシ科やシカ科と何が違うのか…
その違いのひとつが「ツノ」なのです。

しつこいようですが、もういちどおさらいをします。
【ウシ科のツノ】
 骨の一部で体格とともに成長し続け、抜け落ちることがない。
 →死んで骨になっても、ツノは頭骨とくっついたまま
【シカ科のツノ】
 骨と分かれていて、1年ごとに生え変わりる。
 →死んで骨になると、ツノは頭骨から離れてしまう

骨とくっついているか、離れているか…それが大きな違いなのですが、
実はキリンは、「ウシ科のツノ」と「シカ科のツノ」の両方の特徴を
持っているのです!!

…といっても、「離れている」けど「くっついている」というのは、
いったいどういうこと?と思われますよね。「もしかして謎かけ?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが…実は本当の話です。

D30_1157_2
離れているけど、くっついている!?どういうこと??
(アミメキリン サンブール国立保護区・ケニア)

キリンのツノは、子どもの頃は頭骨と離れていて、オトナになるに
ツノの中に骨の芯が出来てきて、それが頭骨とつながるのです。

今年の3~6月に国立科学博物館で開催された「大哺乳類展」の
「陸のなかまたち」では、子どもとオトナのキリンの頭骨の標本が
展示されていて、これを確かめる機会がありました。

たしかに…

それを見ると、確かに子どものキリンの頭部にはツノはあるものの
頭骨とはくっついていなくて、分離して展示されていました。
一方、オトナのキリンの頭骨にはしっかりとツノがついていました。

つまり、ツノという点に限って見てみれば…

子どものキリンの頭骨標本は、シカ科の頭骨と同じ
オトナのキリンの頭骨標本は、ウシ科の頭骨と同じ

ということになります。キリンは、そのツノの生成だけを見れば、
「最初はシカ科、あとでウシ科」ということになるのですね。

ただ、最終的に頭骨とツノがくっついていること、そしてシカ科の
ツノのように枝分かれしたり、頭骨にくっついていない子どもの頃
でもツノが抜け落ちないことを見ると、キリンのツノはウシ科に
近いもの、と言えるかもしれません。

D30_1413
ボクのツノは、まだ頭の骨にくっついていないんだ…
(マサイキリンの子ども マサイマラ国立保護区・ケニア)

ちなみに、ウシ科と同様に頭骨にツノがくっついている構造なのに
シカ科のようにツノが枝分かれして、さらに年に1回生え変わる…
という、これもまたウシ科とシカ科の中間みたいな動物もいます。

別名「エダツノ(=枝角)レイヨウ」と呼ばれる「ブロングホーン」
という動物で、ウシ、シカ、キリン等が属するウシ亜目の中にあって
「ブロングホーン科」という、これまたウシでもシカでもない科に
属しています。ブロングホーン科には、ブロングホーンしか属して
おらず、キリンとオカピの2種類が属すキリン科よりもさらに小さい
グループです。

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ボクがブロングホーンだよ。
(ブロングホーン 金沢動物園・横浜市)

このブロングホーン、日本の動物園では大変珍しい動物で、横浜市
金沢動物園にしか(それも1頭だけ!)いません。
ウシ科、シカ科、キリン科、サイ科の動物は、各地の動物園で見られ
ますが、ブロングホーンを見ないことには「ツノの全種類制覇」には
ならないですから、ぜひ横浜市立金沢動物園へ行ってみましょう!

「ツノ、ありますけど…」シリーズを書き始めてから、いろいろと
調べていくと、ひと言に「ツノ」と言っても様々な種類があることが
わかりました。

結局、ツノって何なの?ということなのですが、一般的には「武器」
としての役割が大きいようです。メスや縄張りを争うオス同士の戦い、
天敵に襲われたときの反撃に、ツノ使われることがあるのはご存知の
とおりですが、その他にライオンのタテガミと同様、その「立派さ」
でオスの優劣を決める(特にシカ科)ことにツノが使われることも
あるようです。

あと、もうひとつの使われ方は…

背中を掻くことにも、ツノはよく使われています。
もっとも、これはツノ本来の役割ではなく、「便利な使い方」という
ことなのですが…ツノで背中を、気持ち良さそうに掻いている様子は
サバンナでも動物園でも、よく見られる光景だったりします。

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カユイところにツノが届く…便利だね!
(ベイサオリックス サンブール国立保護区・ケニア)

さて、結局キリンのツノは何本か、ということですが。

なんと!キリンにはツノが5本もあるのです!!

「え~!?そんなにあるの?」と言う方も多いかと思いますが…
それも無理はありません。目立つのは頭の上の2本だけですから。
あとの3本は、目の間に1本と、後頭部に2本生えているのです。

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ここにツノがあります!
(アミメキリン サンブール国立保護区・ケニア)

ただ、「あとの3本のツノ」は、成長したオトナにしか生えておらず、
キリンの頭骨標本を見ても、ちょっとした隆起にしか見えませんから、
「そう言われれば…」というレベルのものです。

しかし、同じキリン科でもオカピにはツノが2本しかないところから、
どうやらこれはキリン科の特徴ではなく、キリンそのものの特徴、と
言うことができるかもしれません。

ツノは動物の分類にも使われるくらいに、奥深いものですが…

人間の世界でも「ツノ」というのは「例え」としてよく使われるのは
ご存知の通りで、花嫁さんがかぶる「角隠し」がその代表例でしょう。
もっとも、こちらは「嫁入りにあたって、怒りの象徴である角を隠す」
という意味(俗説)だそうで…

人間にとってのツノは、どうやら「女性の怒り」のシンボルであり、
男性陣からすると「怖さの象徴」というところは、哺乳類の他の動物
たちとは「ツノ」の意味が大きく異なりますね。

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男性のみなさん、ツノに攻撃されないように気を付けましょうね
(アミメキリン 宇都宮動物園・栃木県)

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