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2011年1月 3日 (月)

ホワイトタイガーのお話

新年あけまして、おめでとうございます。

今年も「ポレポレで行こう!」を、よろしくお願いいたします。

…と言いつつ、昨年11月の一時休止以降、記事更新が停滞気味で
大変申し訳ありません。秋以降、仕事が忙しくなってしまったのも
あるのですが、もうひとつのブログ「一枚の動物写真」の更新や、
ふだん動物園で撮影した写真のデータ整理などを整理していたら、
睡眠時間が大幅に削られるという状況に陥り…

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睡眠不足はいかんねぇ。
(コツメカワウソ 多摩動物公園・東京都)

言い訳がましくて恐縮なのですが、「ポレポレで行こう!」の方も
ホントにポレポレ(スワヒリ語で「ゆっくりゆっくり」の意味)で
更新させていただくことにしました。

とはいえ、当ブログ「ポレポレで行こう!」は、私自身にとっても、
動物のことを調べながら書いているので、勉強になっております。
ポレポレの更新になっても、しっかりと続けて行こうと思います。

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お、決意表明だね? (モルモット 安佐動物公園・広島市)

さて、今回は…

12月31日をもって干支はトラからウサギへバトンタッチしましたが、
昨年末、「一枚の動物写真」の方にホワイトタイガーの写真を掲載
したところ、「これはアルビノ?」という質問をいただきました。

「そういえば、ホワイトタイガーのことって、書いていないな…」
ということで、今回はホワイトタイガーにまつわるお話です。
(昨年末にこのテーマで書いておくべきでした!)

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昨年末でようやくお仕事終わったのに…
(ホワイトタイガー 東武動物公園)

ホワイトタイガーの写真を撮っていると、周囲からこんな声を聞く
ことが、たしかによくあります。

「コレって、アルビノって言うんでしょう?」
「アルビノのトラなんて、珍しいよね」

ご存知の方も多いかと思いますが、アルビノは遺伝子情報の欠損を
原因とした遺伝子疾患のために、メラニンの欠如してしまった動物
(人間を含む)のことを言います。

メラニンが欠如するため、肌や体毛が白くなるので体中が「真っ白」
になってしまいます。そのため、体が白い動物を見ると「アルビノ」
と思われる方が多いのでしょう。

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カンガルーのアルビノです (金沢動物園・横浜市)

動物におけるアルビノは、

・白くて目立つために、捕食動物に狙われやすい
 →動物の色や模様は保護色の役割をしていますが、メラニンが
  欠如すると色や模様がなくなり、保護色ではなくなって目立つ。
・視力が弱いために俊敏性が低く、攻撃力が弱い
 →捕食動物(肉食動物)にとって視力と俊敏性が弱いのは致命的。
  攻撃力が弱くなると、生きていけない。
・紫外線への免疫性が弱い
 →メラニンは太陽の紫外線から体を守る役割をしているが、それが
  欠如すると紫外線が原因の病気になりやすくなる。

…といった理由から、特に野生動物においてはアルビノが生き抜いて
いくことは非常に難しいのが現実です。

なので、「アルビノ=珍しい」というのは事実なのです。
もしホワイトタイガーがアルビノならば、珍しいトラかもしれません。

ところが結論から言うと、ホワイトタイガーは「アルビノ」ではないのです。
「ふつうトラといえば、黄褐色に黒の縞なのに…」と思われる方も多いと
思いますが…では、何が違うのでしょう。

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ボクはアルビノじゃないんだよ、実は!
(ホワイトタイガー とべ動物園・愛媛県)

「アルビノ」の原因は、遺伝子情報の欠損による「メラニンの欠如」
というお話をしましたが…これは、簡単に言えば「遺伝子の異常」と
いうことができます。

ところが、ホワイトタイガーは「遺伝子の異常」が原因ではなく、
遺伝子の突然変異が原因…つまり、遺伝子そのものはあくまで正常で、
何かのキッカケで「白い動物」になってしまった、ということです。

実は地球上には「白い動物」が数多く存在します。
その代表的なのは北極圏に住むホッキョクグマ(シロクマ)でしょう。

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シロクマは白いからシロクマ?シロクマだから白い?
(ホッキョクグマ 上野動物園・東京都)

黒や茶色のクマが多い中で、ホッキョクグマだけは真っ白です。
でも、ホッキョクグマを「アルビノ」と言う人はいませんよね。

「それは保護色だからでしょう?」と思われる方が多いでしょう。
まさしくその通りで、獲物を狙うにあたり氷雪の中では体の色が白い
ほうが目立たなくて有利なので、ホッキョクグマは白いのです。

つまり、ホッキョクグマの遺伝子の中には「白い」という情報があり、
「ホッキョクグマ=白い」ということになった…ということなのですが、
これは、正常な遺伝子情報であって、遺伝子の異常が原因のアルビノ
とは全く異なります。簡単に言えば、ホッキョクグマは「白いクマ」という
「種類」ということですね。

実は、ホワイトタイガーもこのホッキョクグマと同じで、言うなれば
「白いトラ」という「トラの種類のひとつ」なのです。
(アルビノは動物の個体単位での現象なので「種類」とは言いません)

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でも、ホワイトターガーは氷雪地帯の動物じゃないよ
(氷雪地帯に住むアムールトラ 多摩動物公園・東京都)

そうなんです。

ホワイトタイガーはアルビノではなく、「白いトラ」という種類だという
ことはわかったけど、氷雪地帯に住まないベンガルトラが、白くなる
必然性がわかりません。

氷雪地帯に住む動物には、ホッキョクグマのほかにシロオオカミや
ホッキョクギツネなどの哺乳類のほかに、シロフクロウ、ハクチョウ
などの鳥類にも白い種類が数多くありますが、彼らは「白いこと」が
生存するに好都合であったという、いわば「進化の結果白くなった」
と言うことができます。

でも、氷雪地帯がないインドに住むベンガルトラが、なぜ白いのか…
それを「進化の結果」と説明することはできません。

実は、ホワイトタイガーが白い理由は、なんとホッキョクグマと同じく
「保護色」に由来するものなんです。

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ボクが白いのは「保護色」だなんてねぇ…
(ホワイトタイガー 東武動物公園・埼玉県)

そこには、壮大な地球の歴史…つまり、大きな気候変動を乗り越えて
生き抜いてきた哺乳類の「DNA」が背景にあるのです。

地球にはこれまで「氷河期」「間氷期」と呼ばれる氷雪期がありました。
哺乳類はこれらの厳しい時期を乗り越えてきたわけですが、そうした
氷雪期においては保護色である「白いこと」が生き抜く上で有利であり、
現在の哺乳類の遺伝子の中にも「白いこと」という情報が残っている…
と考えられています。

突然変異によって、この「白いこと」という遺伝子情報が表現化すると
白く変化した種類(これを白変種といいます)が出現してくる…という、
何とも壮大な話なのですが、これが白変種の有力な説なのだそうです。

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ホントに壮大すぎて、想像がつかないな…
(ホワイトタイガー とべ動物園・愛媛県)

氷雪地帯を生息地としない白変種は、トラの他にライオン、ウマ(白馬)
などがあり、哺乳類のみならず鳥類(青いインドクジャクの白変種である
シロクジャクが有名)にも白変種が存在することから、そうした白変種は
「氷河期を生き抜いてきた動物の末裔の証し」と言えるのかもしれません。

氷河時代の遺伝子が、現在まで脈々と引き継がれてきているというのは、
なんともドラマチックな説ですが、この説を知った時に私は「そういえば」
と思い当たることがありました。

それは…コチラをぜひご覧ください。

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