ひとりごと

2012年8月28日 (火)

ジャーナリスト 山本美香さんの訃報に寄せて

ジャーナリストの山本美香さんが、シリアでの戦闘に巻き込まれて亡くなりました。
ニュースでも大きく取り上げられたので、ご存知の方も多いかと思います。

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山本美香さん
享年45歳…僕と同世代です。

生命の危険があっても、災害現場や紛争地域に赴くジャーナリストたち。
そこには大きな使命感があるであろうことは、理解しているつもりでしたが…
これまでは、亡くなられたというニュースを聞いても、「壮絶だなぁ」とは思っても、
なんだか遠い世界での出来事のように思っていました。

でも、今回は違いました。

お恥ずかしい話なのですが…
これまで僕は、山本さんのことを知りませんでした。
でも、山本さんがこれまでに残された、さまざまな言葉から…
「伝えることの大切さ」というものを、教えられたような気がするのです。

山本さんは、これまでにもアフガニスタン、イラクなどの危険な紛争地域に入り、
現地から私たちにレポートを送り続けました。
実際に私たちが目にした、悲惨な紛争の映像の中には、山本さんが取材し、
送ってくれた映像も多々あったのだろうと思います。

山本さんのようなジャーナリストは、TV局や新聞社の記者が入れないような、
大変危険な地域まで足を踏み入れて、取材活動を続けています。
戦争を扱った映画で、戦闘シーンを見るだけでも恐ろしいものですが…
実際に銃弾や砲弾が飛び交う現場の恐ろしさは、想像を絶するものでしょう。

そんな現場に入り、取材を続けた山本さんを支え続けてきた思いは、
「誰かが記録する必要があると思っている」
「伝えていくことで戦争が早く終わるかもしれないし、拡大を防げるかもしれない」

という、とてもシンプルなものだったそうです。

そして、山本さんは著書「戦争を取材する」の中で、子供たちに対して
「校庭に地雷が1つ埋まっているとしたら」と、問いかけています。
それはきっと、紛争の地にいる子供たちの状況を、日本の子供たちにも身近に
感じて欲しい…という願いからだったのではないか、と思います。

僕は、こうした山本さんの言葉に触れて…
「伝えること」と同時に、「身近に感じてもらうこと」の大切さを改めて感じました。

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サバンナモンキー
(タランギレ国立公園・タンザニア)

人間が豊かさを求め、享受していく一方で、声をあげることなく住処を追われ、
そして絶滅していく動物たちがいる…
その動物たちにも、体温があり、感情がある。壮大な進化の歴史の結果、
この地球に生まれてきた生命であることは、私たちと何ら変わりがない。
そうした動物たちの飾らない姿を捉え、身近に感じ、彼らもまた私たちの大切な
仲間であるということを、より多くの人に伝えていきたい。

僕はそんな思いを持って、動物たちの写真を撮り始めたのですが…
ここのところ、その思いも漫然としたものになっていたのが、正直なところです。
山本さんは、そんな僕に対して「原点に返れ」と教えてくれたように思うのです。

奇しくも、このブログを書いている今日…
環境省から、ニホンカワウソなど8種の動物が「絶滅した」と認定されました。
かつては日本各地にいた、ニホンカワウソ。
それが絶滅したのは、私たちが原因であることは言うまでもありません。

絶滅した仲間は、もう戻って来ません。
さらに言えば、絶滅寸前で手を打っても、もう遅いのです。
「絶滅する」という言葉が出る前に、仲間である動物たちを守らなければ…
地球の宝である、貴重な動物たち、生命が失われていってしまうのです。

そのためには、地球の生き物たちの素晴らしい世界を伝え続け、
彼らが、私たちにとって、より身近な仲間であると訴え続けること。
それが、動物と向き合う僕の務めなのだ、という思いを新たにしました。

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ライオンの親子
(セレンゲティ国立公園・タンザニア)

僕が撮っているのは、動物たち。
そして僕が撮影するのは動物園や、せいぜいアフリカのサバンナ。
山本さんのように紛争地域に入り、取材をしているワケでもありません。
ましてや、僕はプロのカメラマンでも、ジャーナリストでもない。
山本さんの思いに、そんな自分の思いを重ねるなどということは、
とても畏れ多いことだとは重々承知しているのですが。

同世代でもある山本さんの意思を、自分の心の中に引き継ぎつつ…
動物写真というフィールドで、僕として出来ることを精一杯やっていこう。
そして、より多くの人たちに動物たちの魅力を伝えていこう。
そんなことを、いま思っています。

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マサイキリン
(マサイマラ国立保護区・ケニア)

山本さん、ありがとうございます。
山本さんの言葉に、僕はチカラをもらいました。

ご冥福を、心よりお祈りいたします。


【追記(意見)】紛争地域のジャーナリストについて

今回の山本さんの事件に際しても、「自己責任」という声が聞かれます。
こうした事件に際しては、そうした声が必ずあがるものですが…

これまで、山本さんが取材してきた地域は、政府の圧力などによって、
厳しい報道規制がされていて、紛争の事実が表に見えない地域。
簡単に言えば、市民を巻き添えにし、多くの生命が失われているから、
報道規制をかけ、その事実を世界から隠そうとしている国や地域です。

そのような地域では、誰かが報道しなければ事実が世に出ません。
放っておいたら、市民を巻き添えにした戦闘が平然と続けられます。
山本さんたちジャーナリストは、そうした事実を世界に伝えるために…
そして世論を動かして、紛争を止めるために取材を続けています。

ジャーナリストの中には、その身分を特権階級と勘違いしている人や、
名声を得たいがために無謀な行動に走る人がいるのも、事実でしょう。

しかし、山本さんのように「真実を伝える」という目的で取材を続け、
自己責任を承知で、「紛争を止める」という思いで危険な地域に入り、
取材を続けているジャーナリストがいるのも事実です。

そうした思いで取材を続けるジャーナリストたちの活動については、
「無謀」「自己責任」とくくるのではなく、彼らが何を伝えようとしたのか、
それを見極め、我々もそのメッセージを受け止めていくべきではないか、
…と、個人的に思います。

アメリカ国内の世論を動かし、泥沼化したベトナム戦争を止めたのは…
危険な前線で、取材していた記者たちの写真だったということ。
その事実を、私たちは忘れてはなりません。

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2011年3月 1日 (火)

おかげさまで…

動物にまつわるお話を書き綴ってきたこのブログ「ポレポレで行こう!」も
おかげさまで2万アクセスを超えました。

ブログを開設してから1年4ヶ月、当初は週2回更新で始めたものの、
もうひとつの動物写真ブログ「一枚の動物写真」を始めてから週1回になり、
そのうち更新が不定期になってしまい…と、現在ではタイトルとおりの
「ポレポレ(ゆっくりゆっくり)更新」ですが、多くの方に読んでいただき、
とても嬉しく、そして感謝の気持ちでいっぱいです。

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読んでいただいた方に感謝しなくちゃいけないね!
(ニシローランドゴリラ 千葉市動物公園)

これまでに書いた記事を改めて読み返してみると、どれもこれも稚拙な文章が
長々と綴られていて気軽に読めるものではなく、果たしてブログという場の
内容として相応しいものなのかどうか、疑問に思えるのですが…

とはいえ、これまでに記事を書き続けてきた自分のことを振り返ってみると、
ひとつひとつの記事を書く度に動物たちのことを知り、驚き、動物たちへの
思いを新たにしてきたように思います。

これからも、そうした新たな思いを熟成させながら「ポレポレで行こう!」を
ポレポレで更新していこうと思っていますので、今後も引き続きご愛読のほど、
なにとぞよろしくお願いいたします。

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これからも、よろしくおねがいいたします!
(ハーテビースト マサイマラ国立保護区・ケニア)

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2010年12月 1日 (水)

一枚の動物写真

今年の8月から、「一枚の動物写真」というブログを始めました。

動物ブログ「ポレポレで行こう!」は、動物にまつわるいろいろなお話を
書き綴るブログとして続けてきましたが、どうも「お勉強」的な雰囲気に
なってしまうので…

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お勉強は、イヤだよぉ (コツメカワウソ 多摩動物公園)

もっと気軽に動物たちのさまざまな表情を楽しんでいただき、動物たちに
親しみを持っていただけるようなブログができないものかなぁ…と思い、
書き始めたのが「一枚の動物写真」です。

「一枚の動物写真」ブログは、動物写真1枚と簡単なキャプションだけで
構成されていて、「ポレポレで行こう!」とはある意味対極的なブログ。
キャプションは、その写真の動物たちのぼやきだったり、独り言だったり。
中には、写真の情景の説明や、私の思いだったりすることもありますが、
基本的には「動物たちのつぶやき」をキャプションにするようにしています。

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ボクたちが、つぶやいているよ!(アミメキリン 宇都宮動物園)

実は…この「一枚の動物写真」を始めるには、ちょっと抵抗がありました。

というのも、動物たちには動物たちの世界があり、そこに人間の勝手な
感情移入をしたり、ましてや人間の言葉での「つぶやき」を入れることが、
動物の世界を紹介する者として良いことなのかどうか…

そんな迷いが、私自身にあったからです。

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「ポレポレで行こう!」でも、ボクたちはつぶやいていたけどねー
(ホンドタヌキ 井の頭自然文化園・東京都)

一方で、私には、

地球の仲間である動物たちに、まずは親しみを持って欲しい。
親しみの中から、野生動物たちへの関心を持ってもらえれば…

という思いがあります。

「親しみ」を持ってもらえなければ、いくら動物と人間の関わりについて
説いたとしても、所詮「人ごと」になっちゃうからです。

そんな迷いと思いが交錯する中で、動物に親しみを持ってもらえるなら…
という思いから、敢えて「動物がつぶやく」ブログを書き始めました。

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案ずるより、産むが易し…と言うじゃないか。
(ニシローランドゴリラ 千葉市動物公園)

毎日毎日、私がこれまでに撮りためてきた動物写真の中から1枚をえらび、
それに短いキャプションを付けてブログに掲載する。
動物に関心がある方から「そんな、動物がしゃべるワケないじゃないか」と
お叱りを受けそうなブログ…

そんなブログを恐る恐る書き始めてから、間もなく4ヶ月を迎えるのですが、
多くの方からコメントの書き込みや、メッセージをいただけるようになり、
とても嬉しいだけでなく、「チカラ」をたくさんいただきました。

何が「チカラ」になったか、というと…

「動物大好き!」と、動物たちに関心を持っていらっしゃる方がとても多く、
動物たちへの思いや感慨を、コメント欄やメッセージに寄せてくださる方が
多かったことです。このことは本当にチカラに、そして励みになりました。

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いろんな方からの声が、励みになるんだよね。
(アカゲザル 井の頭自然文化園・東京都)

動物の存在を表現する方法は、ひとつだけではないのだ…と、コメントを
寄せていただいた皆さんに教えていただいたような気がします。

さて、しばらくお休みをいただいていた「ポレポレで行こう!」も再開です。

こちらのブログでは、これまでと同様に動物にまつわるお話を詳しく書いて
いく予定です。相変わらずの長い文になるとは思いますが…

引き続き、よろしくお願いいたします!

一枚の動物写真

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2010年10月27日 (水)

クマの不幸

最近、連日のようにクマによる被害がニュースや新聞で報道されて
います。今年はクマのエサとなるドングリが全国的に不作なので、
冬ごもりを前に食欲旺盛なクマが人里までエサを求めて下りてきて
しまっているのが原因、と言われていますが…

北海道ではドングリが不作でないにもかかわらず、クマが人里まで
下りてきているそうです。

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最近、ニュースによく出ているんだけど…悲しいニュースだな。
(ツキノワグマ 盛岡市動物公園)

今年はたまたまドングリの事情があって、人里に下りてくるクマが
多くなり、ニュースになる機会が増えていますが…
実は、人とクマが遭遇してケガをしたり、人里に下りてきたクマが
農作物を荒らすといったことは、今に始まったことではありません。

環境省によると、「クマを目撃した」という報告があがった件数は
例年でも2000件以上もあり、その数は増加しているそうです。

これは、言うまでもなく人とクマの距離が短くなっているのが原因。

ドングリが不作でもない北海道でも、クマが人里に出没する件数が
増えているのは、人との距離が近くなるにつれ、人を恐れなくなる
クマが増え始めた…というのが原因のひとつと言われています。

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たしかに、このツメで襲われたら大怪我をしてしまいますが…
(ツキノワグマの手 盛岡市動物公園)

人に危害が加えられるような局面では、人里に下りてきたクマが
射殺されてしまうのは、やむを得ないと思います。
ただ、そうして射殺されたクマの映像を見る度に、いたたまれない
気持ちになります。

開発によって狭められた住み処の森に、食べ物が少なくなる一方で、
人里には農作物や残飯などの食べ物が豊富にあるわけですから、
食べ物を求めて人里に下りてくるのは、クマにとっては自然な行動。

こうして射殺されたクマたちも、決して人を襲おうとか、農作物を
荒らそうと思って人里に下りてきたワケではないのですから。

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ホントは、人を襲おうなんて、思ってもいないんだけどな。
(ツキノワグマ 上野動物園)

私がいちばん心配なのは、こうしたニュースが数多く出ることで、
「クマは人を襲う危険な動物だ」「危険な動物は駆除して当然だ」
といった「クマ=悪者」という声があがることです。

本州全域の森林に住むツキノワグマは、雑食性ではあるものの、
基本的には草食性で春は木の芽、夏は昆虫類やアザミなどの草花、
秋はドングリなどの木の実、アケビなどの果実を食べています。

北海道に住むヒグマは、シカやイノシシなどを捕食することもあり、
ツキノワグマよりは肉食性が強い雑食ですが、それでも人間を襲う
ということはありません。

野生のライオンが人間を襲おうとしないのと同様に、ヒグマたちは
「人間=食べる対象」とは思っていないからなのです(→注1)

そんなツキノワグマやヒグマが、なぜ人を襲うことがあるのか…
それは、クマが身の危険を感じ、自分や子供たちを守るために、
接近してきた人を襲ってしまうのです。

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実はノンビリ、ゆったり、大人しいんだよ。
(ツキノワグマ とべ動物園・愛媛県)

大切なことは、人にとってもクマにとっても幸せな環境を作ること。

人里にクマをおびき寄せたのは、人間が原因です。

例えば里山の荒廃。かつて森と里との境目にあった里山は、動物と
人間との境界線の役割(緩衝地帯)を果たしていました。

でも、山村の過疎化・高齢化が進み、里山を手入れする人が少なく
なったことで緩衝地帯がなくなり、クマがいきなり人里へ出没する
ようになってしまった…というのは、ご存知の方も多いでしょう。

また、後継者がいなくなって放置された果樹園も、クマにとっては
絶好のエサ場になります。放置されたとはいっても、毎年ミカンや
リンゴなどの果実が実り、食べ放題なワケですから…

過疎化や高齢化が進む山村では、こうした問題は何とも解決し難い
ことだとは思いますが、少なくともクマが人里に出没するように
なった背景には、そうした問題があることは認識しておきたいです。

さらに、最近の登山やアウトドアブームで人間が山林の中に入り、
そこに残していった残飯をクマが食べて味を覚え、人里まで下りて
くるようになった…といったケースもあるようです。(注2)

そんなことが、人にとってもクマにとっても不幸な環境を作って
しまっているのですね。

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ホッキョクグマも、生息地のアラスカでは、人里に出現して
同じような問題が起きているとか。
(ホッキョクグマ 上野動物園)

クマが人里に下りてくる原因を作っているのが私たち人間ならば、
人里に下りて来ないようにするのも私たちの役割です。

かつては、九州全域にいたツキノワグマも、ここ50年ほどは九州での
目撃情報がなく、熊本、大分、宮崎の各県では絶滅宣言が出ています。
ここ数年急増している人里での捕獲(捕獲されたクマは、ほとんどが
殺処分されているのが現実)により、野生のクマの数が激減している
地域もあると聞いています。

このままでは、またひとつ、日本から野生動物が消えてしまうことに
なりかねません。

そうならないよう、野生動物たちと私たちが共存できる環境とは何か、
そして、私たちにできることは何なのか…今回のクマ出没ニュースが
そんなことを考えるきっかけになれば、と願うばかりです。

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クマは、本来は私たちと共存できる存在なのですから。
(ツキノワグマ 盛岡市動物公園)

(注1)人食いライオンと人食いクマ
過去には人食いライオンや人食いクマがいたことは事実です。
これらは、不用意に近づいた人間を自己防衛のために襲った動物が、
人を食べてしまい「人間=食べ物」という認識を持ってしまったため、
その後も人を襲うようになったものです。

そのため、ケニアではライオンが人を襲う事故が発生すると、襲った
個体を徹底的に探し出し、そのライオンの一家全員を射殺します。
やむを得ない処置ではありますが、これも不注意な人間がライオンの
領域に近づき過ぎて起こったことで、生命を絶たれたライオンにも、
貴重な野生動物を失った私たちにも、両方にとって不幸な出来事です。

(注2)森林で残飯を捨てること
私たちにとっては食べ残しでも、森林の動物にとってはご馳走です。
いくら穴を掘って埋めても、鼻の良いクマやイノシシにとっては、
見つけるのは容易なことで、隠しても何の意味もありません。

また、キャンプ場や河原のバーベキュー場も、日中は人でいっぱい
でも、夜はすぐ近くの森から野生動物が下りてくることもあり、
そこでいったん残飯を見つけると、また再び下りてきてしまいます。

残飯やゴミは一切残さず、持ち帰る。
そんなことも、実は野生動物たちを保護するために役立つことです。

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2010年10月10日 (日)

あの時の感動を忘れずに ~ブログ開設1周年~

動物のさまざまな話題を中心とした当ブログ「ポレポレで行こう!」も、
ようやく開設1周年を迎えました。

文章が非常に長く、決して「気軽に読める」ブログではありませんし、
重たいネタゆえに「週2回更新」を原則としながらも、更新の間が空いて
しまったり…そんな「ポレポレで行こう!」ですが、こうして1年間も
続けることができ、さらに1周年直前で「1万アクセス」を迎えることが
できたのも、懲りずに読んでいただける皆さんのおかげです。

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読んでいただける皆さんのおかげだねぇ、だいぴんさん
(ニホンカモシカ 茶臼山動物園・長野市)

この「ポレポレで行こう!」が何を隠そう、初めて書いたブログで…
つまり、自分の写真を公の場に発表するのも初めて、というワケで。
さらに、自分の文章を公開するのも、小中学生の頃の文集以来のこと。

どうやったら楽しんでいただけるのか、手探りの状態で始めました。

最初は写真数枚と簡単な動物の紹介で始めようと思ったのですが、
生来の「動物の話題になると、つい熱くなる」という性格が頭をもたげ、
とてもそんな「簡単に」済むワケがなく…

案の定、どんどん文章が長くなってしまいました。

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ホント、まず前置きが長いよね、このブログは。
(シンリンオオカミ 大森山動物園・秋田市)

ただ、この1年間で…

ブログを書くために、本や論文(!)を読んでいろいろと下調べをする
ことで、それまで散漫だった知識が整理されただけでなく、新たな知識、
動物たちに対する驚き、そして動物たちが置かれている状況や、人との
関わり、取り巻く自然環境の問題など、いろいろと考えさせられたのも
事実です。

最初は単なる動物紹介のつもりで始めたブログも、だんだんと「動物に
関心をもってもらい、私たち人間とのかかわりの中で、動物たちについて
考えるキッカケになれば…」という思いを込めて書くようになりました。

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おぉ、たまには良いこと言うねぇ
(アミメキリン 八木山動物園・仙台市)

そんな思いを込めて書いている「ポレポレで行こう!」ですが…

これまでに書いた中で、現在のところアクセス数が多いページはコチラ、
井の頭自然文化園の「はな子」】です。

国内最高齢のアジアゾウ、東京都武蔵野市にある井の頭自然文化園の
「はな子」のお誕生会へ行った時に書いたブログですが…
掲載以来アクセスが常にあり、いろいろな方にお読みいただいています。

その他には、冬になり寒さが厳しくなると、このシリーズが大人気でした!

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そろそろ、温泉のシーズンだねぇ
(カピバラ 長崎バイオパーク・長崎県)

そう、お風呂に入るカピバラたちをご紹介した「カピバラが行く!」の
シリーズです。

このシリーズの取材には、なんと長崎バイオパークに通うこと3回!
このブログの中で「最もお金がかかったブログ」は間違いありません。
今年もまた、冬のシーズンになったら取材へ行こうと思っています。
(何といっても、年間パスポートを買ってしまったのですから!)

自分で言うのもナンですが…私が個人的にイチバンお気に入りなのは、
サバンナの風に聴く Back Ground Music」です。

サバンナの真ん中に立ったとき、頭に浮かぶ音楽はあるのか…?
というだけの内容なのですが、このブログを読み返す度にサバンナが
恋しくなってしまいます。

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今回も、長いブログになりそうだね。
(ブチハイエナ マサイマラ国立保護区・ケニア)

さて、そんな「ポレポレで行こう!」なのですが、続けていくうちに、
「動物写真と、そこに書かれている動物のつぶやきが面白い」という
読者の方の声を受けて、今年の8月に動物写真をメインとしたブログ、
一枚の動物写真」を開始しました。

とにかく毎日、1枚の動物写真と簡単なキャプションだけで綴って行く
ブログ。動物園とサバンナの両方の写真を使いながら、まずは365日を
目標に連載したいと思っています。

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2つのブログ、よくやるねぇ。がんばってねー。
(シタツンガ 東武動物公園・埼玉県)

「一枚の動物写真」を開始してしばらくして…アフリカでのサファリの
様子を記したブログはないかな、と思って探していたら…
ある方のブログに出会いました。「ある方」とはクラッシック音楽の
女性演奏家で、動物やアフリカとは直接は関係のない方なのですが。

その方の、10回にもわたり連載された「アフリカ・サバンナへの旅」を
読んで、素直に感動してしまったのです。

初めてケニアを訪れる楽しみ。サバンナに出て、見るもの、触れるもの、
全てにワクワクする気持ち。そして、いつまでも忘れられない感動が、
写真とともに綴られています。

そのブログを読んだときに、私が初めてケニアへ行った時の感動が心に
よみがえり、そのブログを書かれた方に共感してしまったのでした。

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初めてケニアを訪れた時の感動、いつまでも忘れたくないものです。
(朝陽の中のキリン マサイマラ国立保護区・ケニア)

動物写真を撮り始めて十数年。
撮りためた写真を発表する場として、まずはブログを始めたのですが…
そのスタート地点は、ケニアでの野生動物たちとの出会った時の感動。

サバンナでも動物園でも、動物たちと向き合うときは、あの時の感動と
ワクワク感をいつまでも忘れないでいたい…と思います。

これからも、動物たちへの思いを込めながら「ポレポレで行こう!」を
書き続けていきますので、引き続きよろしくお願いいたします

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2010年9月29日 (水)

ありがとうございました!

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ライオンの家族 (マサイマラ国立保護区・ケニア)

昨夜遅くに、この動物ブログ「ポレポレで行こう!」のアクセス数が
1万アクセスを突破しました。

昨年10月に開設した、このブログ。
アクセス数の増え方も、名前のとおり「ポレポレ(ゆっくり)」で、
1万アクセスまでほぼ1年かかりましたが…

これもひとえに、こんなに長く、まとまりのない文章が延々と続く
ブログにこりず、訪問いただいた皆様のおかげです。

大変ありがとうございました。

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夕陽の中のキリン (マサイマラ国立保護区・ケニア)

自分の写真表現の幅を広げることを目的として始めたブログですが、
記事を書くために、動物たちについてイロイロと調べていくうちに、
動物たちが直面している危機や、人間とのかかわりの難しさ、動物
たちと共存していくことの大切さを、実感するようになりました。

今では、まずは同じ地球に住む仲間として、動物たちを身近に感じて
いただき、それが共に生きていくことの大切さの発見につながって
もらえれば…という願いを込めて、記事を書き綴っています。

動物たちに、私ができることはチッポケなことなのですが…

それでも、動物たちを愛し、写真を撮り続ける私ができることを、
微力ながらも続けていきたいと思っています。

これからも、長い文章が自慢(?)のブログ「ポレポレで行こう!」を、
ポレポレで続けていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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ポレポレで行こう! (コツメカワウソ 多摩動物公園・東京都)

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2010年7月 4日 (日)

可愛く撮りたい!

「動物が大好きで、動物の写真を撮っているんです」という話をすると、
「ウチの子をかわいく撮りたいんですけど…コツはなんですか?」と
よく聞かれます。その「ウチの子」とは、言うまでもなく飼っている
ネコであったりイヌのことなのですが…

実はこの質問、答えるのがとっても難しいんです。

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我が家の家族の一員を、可愛く撮りたい…誰もが思うことですね。
(今回の写真はすべて、那須どうぶつ王国)

なぜ「答えるのが難しいのか」というと…

「ウチの子はカワイイ」と思って撮らないことです

というのが、私の答えだからなのです。なんとも冷淡な答え。それに、
「可愛く撮りたい」のに「カワイイと思ってはいけない」だなんて…
そんなの、矛盾していますよね。

でも、こんな経験はありませんか?

たとえば、写真館などでプロに撮ってもらった写真。

出来上がった写真を見ると、花嫁さんがすごく綺麗に写っていたり、
子供や孫がとっても可愛く写っていたり…あるいは家族がとっても
明るく朗らかに写っていて、素敵な「家族の肖像」になっていたり。
そんな写真を見て、「いい表情だなぁ」と新たな発見をする…。

写真館で初めて会ったカメラマンなのに、「なんでこんな表情を撮る
ことができるんだろう」、と驚いた方も多いのではないでしょうか。

もちろんプロのカメラマンですから、カメラもライティングも違うし、
モデルを上手くノセで、素敵な笑顔を引き出す技術も違うのですが、
いちばん違うのは、「被写体を客観的に見ている」ことだと思います。

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客観的に見ている、というのが「可愛く写真を撮る」コツ!?

普段から家族同様に過ごしているイヌやネコは、とても可愛いくて、
とにかく何をしても可愛く見えるものです。「我が子には目が無い」
というのは、親(=飼い主)としては当然のことなのですが…

でも、飼い主が普段感じている可愛さと、そのネコやイヌの普段の
姿を知らない人が見て感じる可愛さは、実は大きく違うのです。
つまり、飼い主が感じる「可愛さ」は主観的であるのに対して、他の
人が感じる「可愛さ」は客観的…ということなのですね。

写真館のカメラマンは、被写体となる人の「普段」を知らないだけに、
写真を見る人の立場で「その人の魅力」を客観的に捉え、その一瞬を
写真に写し込みます。なので、家族が見ても「おっ!」と驚き、新たな
魅力を写真の中に発見する喜びを与えてくれるのでしょう。

『ウチの子はカワイイ』と思って撮らないこと…というのは、つまり
「客観的に撮ること」という意味なのです。

ちなみに、某プロカメラマンは「家族の写真を撮ると、家族からは
いつも『もっと上手に撮って』って、不評なんですよ…」と嘆いて
おりましたが。

それも、やはり「家族を撮るときは、客観的になれない」ということ
なのでしょう。「客観的に撮りましょう」などと、クチで言うのは
簡単なことですが、実はプロにとっても難しいことなのですね。

Nasuanimalkd_d31_0609
ちゃんと、上手に撮ってよねー

そんなエラそうなことを言っている私自身、「客観的」に動物写真を
撮っているなんて、決して言えないですし…私自身は動物を飼って
いませんが、ふと気付くと「かわいいなぁ」と思いながらシャッターを
切っている自分がいたりしますから。

kawaii

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2010年6月30日 (水)

また再び感動と出会いたい…

昨夜のワールドカップ「日本対パラグアイ」の余韻が、まだ醒めません。

私は普段はJリーグも見ていないし、サッカーについてもそれほど詳しい
ワケではありませんが、それでも、今回のワールドカップは日本代表の試合
だけでなく、その他の国々の予選もテレビ観戦してしまいました。

サッカーに限らないことなのでしょうけれど、世界一流レベルのスポーツの
試合で見せてくれる選手たちの「技」は、無条件に素晴らしいものですし、
大きな感動を与えてくれるものです。

ワールドカップでは、その素晴らしい技をたくさん堪能しましたが…

やはり日本人としては日本代表チームの活躍を祈り、勝利を喜びました。
試合を重ねるごとにチーム力がアップしていく日本代表チームに感動し、
「この調子ならパラグアイ戦もイケるのでは?」と秘かに期待を膨らませて
いたのですが。

とても残念でした。

とはいえ、日本代表チームは、まさしく「完全燃焼」だったと思います。
それは、今回のパラグアイ戦だけでなく、これまでのひと試合ひと試合に
チーム全員で挑み、結束力を高めながら力を昇華させていった結果としての
「完全燃焼」だったと思うのです。

それゆえに、パラグアイに負けたこと自体も「残念」でしたが、私としては
「もう、このチームの試合を見られない…」ということが、とても残念に
思えたのでした。

そのいっぽうで、「4年後に、再び素晴らしい試合を見ることが楽しみ」と
思ったのも事実です。

話は飛びますが…

サバンナで素晴らしい光景に出会った話をすると、「そんなに素晴らしい
光景と出会ったら、もう帰りたくなくなるでしょう」とよく言われます。

確かにサバンナで過ごす最終日は、後ろ髪を引かれる思いになるのは
事実なのですが、実は「帰りたくないな~」というよりも「また次回、この
光景に出会える日が楽しみ」という思いの方が大きいのです。

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素晴らしい光景と出会ったときは、「去りたくない」という思いより、
むしろ「また会いたい」という思いの方が、強いものです。
(ケニア・マサイマラ国立保護区)

素晴らしいシーンが与えてくれる大きな感動は、心を豊かにしてくれる
だけでなく、さらに次回の感動への懸け橋になってくれるように思います。

今回のパラグアイ戦を見届けたあと、サバンナを去る日に私が感じている
「また出会いたい」という、清々しさに似た思いを心に感じたのでした。

サムライJAPAN、たくさんの感動をありがとう!
そしてまた4年後、大きな感動をたくさん与えてくれる日々が来ることを、
今から楽しみにしています。

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2010年6月27日 (日)

自然体であること ~白川義員さんに思う

私が尊敬する写真家のひとり、白川義員(しらかわよしかず)さん。

地球規模の壮大な自然を撮る、世界的にも有名な写真家です。
白川義員さんの写真は主に山や滝など、地球がつくりあげた造形美を
壮大かつ荘厳に撮ったもので、美しさを超越して神々しさを感じさせる
たいへんすばらしい写真です。

先日、白川義員さんが7年の歳月を費やして2002年に完成させた
山岳写真集「世界百名山」の制作ドキュメンタリー番組を見ました。

「世界百名山」ですから、中には標高8千メートルを超える山々もあり、
それらを空中から撮影するというのは、並大抵の仕事ではありません。
1935年生まれの白川さんが、酸素マスクを着けながら大判カメラを抱え、
エベレストやカラコルムの山々の空中撮影に臨むその姿には、「尊敬」
という言葉でもまだ足らない畏敬の念を禁じえませんでした、

しかし、山と向き合う白川さんは淡々としていたのが印象的でした。

撮影している時の白川さんの、目の前に繰り広げられる大地と光の美に
真正面から向き合いながら、銀塩フィルムに記録を取っていく姿には
「気負い」といったものが感じらません。

大自然の光景と対峙する、という感じではなく…
大自然の光景を全身でしなやかに受け止めながら、自分の眼に映った
壮大な光景を、レンズという「もうひとつの眼」を通してフィルムに
写しこんでいる、という感じなのです。

ありふれた表現かもしれませんが、そんな白川さんの姿には、まさに
「自然体」という表現が相応しいように思えました。

白川さんと私を比較するなど、おそれ多いことなのですが…

動物を相手に写真を撮っている私も、「自然体で光景を受け容れる」
ことを信条にしています。出会った光景に抵抗をせず、誇張をせず、
自分がその光景の中に置かれ、感じたことをそのまま表現したい…と
思いながら写真を撮っています。

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自分が感じたことをそのまま表現する…それは難しいことなのですが。
(早暁のフラミンゴ ケニア・ナクル湖国立公園)

正直に言えば、ケニアのサバンナで写真を撮り始めた頃は、美しい写真、
迫力ある写真を撮ろうと頑張っていました。

美しい光景と出会ったときは、アタマの中にタイトルみたいなものを
思い浮かべながら、シャッターを切っていたものです。
また、動物と出会っても「撮る動物」「撮らない動物」を選り好みして
自分のイメージに合う動物しか狙っていませんでした。

でも…そうやって撮った写真には、なぜか「チカラ」がない。
とってもキレイな色や構図だけど、ただそれだけ。時間が経って改めて
見てみると、「なんでこの写真を撮ったのかなぁ」という写真ばかり…。

そうした「どうして?」を何度も繰り返し、納得がいかず悔しい思いを
何度もしていくうちに…私は自分自身の愚かさに気付きました。

「出会った光景に、自分の思い込みを入れてどうする?」

出会った光景は、もう二度と出会うことができない一瞬。
その瞬間を大切にして、与えられたチャンスの中で自分が感じた一瞬の
思いを、そのまま素直にフレームの中に写しこむことが大切だと。

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いま出会った光景は、もう二度と出会うことはできないのですから…
(アフリカゾウの家族 ケニア・サンブール国立保護区)

たとえ凡庸に見える光景であっても、いま目の前に広がっている光景は
ひとつの光景に過ぎない。そうした光景の連続の中に、胸を打つような
美しい光景が現れる「一瞬」が必ずある…

そう考ると、自然の中で「光景を選ぶ」などというのは畏れ多い話で、
むしろ大切なのは「選ぶ眼」ではなく「一瞬を感じ取る心」なのではないか、
と思うのです。

そしてその「感じ取る心」とは、光景に挑んで得られるものではなく、
目の前に広がる光景を自然体で受け容れ、連続する一瞬一瞬の延長
線上に自分の身を置くことから得られるものだ、と思うのです。

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写真は「作り出すもの」ではなく「感じ取るもの」だと思います。
(夕陽の中のマサイキリン ケニア・マサイマラ国立保護区) 

白川義員さんの写真には、唖然とするほどのスケール感があります。
そうした写真を撮り続ける背景には…

 地球は悠久無限の宇宙にあって芥子粒のごとき一点の存在だ。
 人類はこの一点の命である宇宙船地球号に乗り合わせていることを
 心底認識したら、民族紛争や国境紛争や戦争そのものが馬鹿らしく
 なりはしないか、そこまで思いが到るほどの写真が撮れないか?

という思いがあるそうです。

そもそも、その壮大なスケールの「思い」自体にも敬服しますが、
その思いが「地球がつくりあげた造形美」にまで昇華し、これまで
誰もがきっと眼にすることができなかった美しい光景と出会っても、
「自然体で光景と向き合う」ことを失わずに淡々と撮り続けてきた
白川さんの姿勢に、私は敬服せざるを得ません。

そんな白川さんのドキュメンタリー番組を見ながら…

サバンナでヒョウと出会うと、我を忘れて無我夢中でシャッターを
切ってしまう自分を思い起こし、「あー、まだまだだなぁ…」と
思ってしまうのでした。

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まだまだ、修行が足らんねぇ、だいぴんさん。
(お昼寝ヒョウ ケニア・マサイマラ国立保護区)

ポレポレですが、少しでも白川義員さんの「自然体」に近付くべく、
もっともっと写真を撮って修行をしたいと思います。

polepole

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2010年3月29日 (月)

「シマウマの強制引っ越し」に思う

3月25日の朝日新聞「世界発2010」に、干ばつが続き草食動物が
激減したケニアのアンボセリ国立公園へ、ライオンのエサとするために
ケニア各地からシマウマとヌーを計7000頭「引っ越し」させる計画が
始まった…という記事が掲載されていました。

以前にこのブログでも、ケニアでは昨年雨季に雨が降らず、大干ばつ
になって多くの草食動物が死んだ、という話を書きましたが(その時の
コラムはコチラ)、キリマンジャロを望むアンボセリ国立公園では2007年
以降、年に2回の雨季にほとんど雨が降らず、他の地域よりも深刻な
干ばつが続いています。

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キリマンジャロを望むアンボセリ国立公園

干ばつが続くと草や水が不足し、草食動物が生きていけなくなります。

新聞記事によると、アンボセリ国立公園では「シマウマが約7000頭から
982頭に」「ヌーは約1万2千頭から143頭に」減ったというのですから、
これはもう「激減」というよりは「全滅」に近い状況です。

ここまで草食動物が激減すると、ライオンなどの肉食動物も食べ物に困り、
国立公園周辺で遊牧をしているマサイ族の家畜を襲いはじめてしまいます。

家畜が襲われるというのは、住民にとっては死活問題ですから、相手が
貴重な野生動物であるライオンであっても、自分たちの生活を守るため
には殺してしまうことがあります。

いっぽう、ライオンは観光立国であるケニアにとって貴重な「観光資源」。
観光客に人気があるライオンが周辺住民に殺され、減ってしまっては、
観光客も減り、ひいては国の経済にも悪影響を与えかねない…。

今回の「引っ越し作戦」は、住民とライオンたちとのそうした軋轢を防ぎ、
両者の「共存」を図ることで国の経済を守る、苦肉の策ということでしょう。

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観光立国のケニアにとって、確かにライオンは重要ですが…
(マサイマラ国立保護区)

ただ、草食動物が激減した今回の原因は、気候変動や異常気象が原因で、
シマウマやヌーを引っ越しさせるというのでは、根本的な解決になりません。

今回のような引っ越し作戦では、再び干ばつが起きたら同じことの繰り返し
になるし、狩りやすい家畜の味をおぼえた肉食動物が、そう簡単に元通り
野生動物を狩るようになるとも思えません。

そういう点で、この「引っ越し作戦」はかなり場当たり的な策なのですが、
私には「なぜ、そんな対策を…?」と批判をする気にはなれません。
それは、こうした対策を採らざるを得なくなった背景には、私たち自身も
決して無縁ではない、と思うからです。

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ヌーやシマウマは、サバンナの生態系を支える動物です。
(マサイマラ国立保護区)

地球温暖化の原因は二酸化炭素などの温室効果ガスにある、というのが
有力な説ですが、アフリカ全53カ国が排出する二酸化炭素の総排出量は
全世界のたった3.6%に過ぎず、アメリカ、中国、ロシアはもちろん、EU、日本、
インド各国の総排出量にも満たないのです。

いっぽうサバンナの生態系は、乾燥化ギリギリの気候の下に成り立っており、
わずかな気温の上昇であっても乾燥化が進行し、生態系を崩しかねない…
という、非常に脆く微妙なバランスの上に成り立っています。

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サバンナの動物たちは、微妙なバランスの上で生きています。
(マサイマラ国立保護区)

二酸化炭素の排出が少ないはずのアフリカが、アフリカ以外の国々の
影響で温暖化(=乾燥化)が進み、野生動物の生態系が崩れつつある…

さらに言えば、乾燥化が進むことによってアフリカの人々が耕作できる
地域がどんどん狭まり、野生動物たちが住む場所をさらに追われていく
だけでなく、アフリカの人々の貧困が加速度的に進んでいる、とも言われ
ています。

つまり私たちは、アフリカの野生動物や人々の生活と無縁ではない…
と言っても過言ではないのです。

幸いなことに、私たちの身の回りでは温暖化の直接的な影響がまだ少なく、
リアリティに欠ける部分がありますが、地球上では既に影響が顕在化して
いる場所があり、野生動物たちも危機的な状況に陥っています。

そんな現実を知りながら、私たちに何ができるのか考え、小さなことから
でも取組んでいきたいものです。

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この子たちが成長していける環境を守るのも、私たちです。
(マサイマラ国立保護区)

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