どうぶつ

2011年1月 3日 (月)

ホワイトタイガーのお話

新年あけまして、おめでとうございます。

今年も「ポレポレで行こう!」を、よろしくお願いいたします。

…と言いつつ、昨年11月の一時休止以降、記事更新が停滞気味で
大変申し訳ありません。秋以降、仕事が忙しくなってしまったのも
あるのですが、もうひとつのブログ「一枚の動物写真」の更新や、
ふだん動物園で撮影した写真のデータ整理などを整理していたら、
睡眠時間が大幅に削られるという状況に陥り…

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睡眠不足はいかんねぇ。
(コツメカワウソ 多摩動物公園・東京都)

言い訳がましくて恐縮なのですが、「ポレポレで行こう!」の方も
ホントにポレポレ(スワヒリ語で「ゆっくりゆっくり」の意味)で
更新させていただくことにしました。

とはいえ、当ブログ「ポレポレで行こう!」は、私自身にとっても、
動物のことを調べながら書いているので、勉強になっております。
ポレポレの更新になっても、しっかりと続けて行こうと思います。

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お、決意表明だね? (モルモット 安佐動物公園・広島市)

さて、今回は…

12月31日をもって干支はトラからウサギへバトンタッチしましたが、
昨年末、「一枚の動物写真」の方にホワイトタイガーの写真を掲載
したところ、「これはアルビノ?」という質問をいただきました。

「そういえば、ホワイトタイガーのことって、書いていないな…」
ということで、今回はホワイトタイガーにまつわるお話です。
(昨年末にこのテーマで書いておくべきでした!)

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昨年末でようやくお仕事終わったのに…
(ホワイトタイガー 東武動物公園)

ホワイトタイガーの写真を撮っていると、周囲からこんな声を聞く
ことが、たしかによくあります。

「コレって、アルビノって言うんでしょう?」
「アルビノのトラなんて、珍しいよね」

ご存知の方も多いかと思いますが、アルビノは遺伝子情報の欠損を
原因とした遺伝子疾患のために、メラニンの欠如してしまった動物
(人間を含む)のことを言います。

メラニンが欠如するため、肌や体毛が白くなるので体中が「真っ白」
になってしまいます。そのため、体が白い動物を見ると「アルビノ」
と思われる方が多いのでしょう。

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カンガルーのアルビノです (金沢動物園・横浜市)

動物におけるアルビノは、

・白くて目立つために、捕食動物に狙われやすい
 →動物の色や模様は保護色の役割をしていますが、メラニンが
  欠如すると色や模様がなくなり、保護色ではなくなって目立つ。
・視力が弱いために俊敏性が低く、攻撃力が弱い
 →捕食動物(肉食動物)にとって視力と俊敏性が弱いのは致命的。
  攻撃力が弱くなると、生きていけない。
・紫外線への免疫性が弱い
 →メラニンは太陽の紫外線から体を守る役割をしているが、それが
  欠如すると紫外線が原因の病気になりやすくなる。

…といった理由から、特に野生動物においてはアルビノが生き抜いて
いくことは非常に難しいのが現実です。

なので、「アルビノ=珍しい」というのは事実なのです。
もしホワイトタイガーがアルビノならば、珍しいトラかもしれません。

ところが結論から言うと、ホワイトタイガーは「アルビノ」ではないのです。
「ふつうトラといえば、黄褐色に黒の縞なのに…」と思われる方も多いと
思いますが…では、何が違うのでしょう。

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ボクはアルビノじゃないんだよ、実は!
(ホワイトタイガー とべ動物園・愛媛県)

「アルビノ」の原因は、遺伝子情報の欠損による「メラニンの欠如」
というお話をしましたが…これは、簡単に言えば「遺伝子の異常」と
いうことができます。

ところが、ホワイトタイガーは「遺伝子の異常」が原因ではなく、
遺伝子の突然変異が原因…つまり、遺伝子そのものはあくまで正常で、
何かのキッカケで「白い動物」になってしまった、ということです。

実は地球上には「白い動物」が数多く存在します。
その代表的なのは北極圏に住むホッキョクグマ(シロクマ)でしょう。

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シロクマは白いからシロクマ?シロクマだから白い?
(ホッキョクグマ 上野動物園・東京都)

黒や茶色のクマが多い中で、ホッキョクグマだけは真っ白です。
でも、ホッキョクグマを「アルビノ」と言う人はいませんよね。

「それは保護色だからでしょう?」と思われる方が多いでしょう。
まさしくその通りで、獲物を狙うにあたり氷雪の中では体の色が白い
ほうが目立たなくて有利なので、ホッキョクグマは白いのです。

つまり、ホッキョクグマの遺伝子の中には「白い」という情報があり、
「ホッキョクグマ=白い」ということになった…ということなのですが、
これは、正常な遺伝子情報であって、遺伝子の異常が原因のアルビノ
とは全く異なります。簡単に言えば、ホッキョクグマは「白いクマ」という
「種類」ということですね。

実は、ホワイトタイガーもこのホッキョクグマと同じで、言うなれば
「白いトラ」という「トラの種類のひとつ」なのです。
(アルビノは動物の個体単位での現象なので「種類」とは言いません)

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でも、ホワイトターガーは氷雪地帯の動物じゃないよ
(氷雪地帯に住むアムールトラ 多摩動物公園・東京都)

そうなんです。

ホワイトタイガーはアルビノではなく、「白いトラ」という種類だという
ことはわかったけど、氷雪地帯に住まないベンガルトラが、白くなる
必然性がわかりません。

氷雪地帯に住む動物には、ホッキョクグマのほかにシロオオカミや
ホッキョクギツネなどの哺乳類のほかに、シロフクロウ、ハクチョウ
などの鳥類にも白い種類が数多くありますが、彼らは「白いこと」が
生存するに好都合であったという、いわば「進化の結果白くなった」
と言うことができます。

でも、氷雪地帯がないインドに住むベンガルトラが、なぜ白いのか…
それを「進化の結果」と説明することはできません。

実は、ホワイトタイガーが白い理由は、なんとホッキョクグマと同じく
「保護色」に由来するものなんです。

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ボクが白いのは「保護色」だなんてねぇ…
(ホワイトタイガー 東武動物公園・埼玉県)

そこには、壮大な地球の歴史…つまり、大きな気候変動を乗り越えて
生き抜いてきた哺乳類の「DNA」が背景にあるのです。

地球にはこれまで「氷河期」「間氷期」と呼ばれる氷雪期がありました。
哺乳類はこれらの厳しい時期を乗り越えてきたわけですが、そうした
氷雪期においては保護色である「白いこと」が生き抜く上で有利であり、
現在の哺乳類の遺伝子の中にも「白いこと」という情報が残っている…
と考えられています。

突然変異によって、この「白いこと」という遺伝子情報が表現化すると
白く変化した種類(これを白変種といいます)が出現してくる…という、
何とも壮大な話なのですが、これが白変種の有力な説なのだそうです。

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ホントに壮大すぎて、想像がつかないな…
(ホワイトタイガー とべ動物園・愛媛県)

氷雪地帯を生息地としない白変種は、トラの他にライオン、ウマ(白馬)
などがあり、哺乳類のみならず鳥類(青いインドクジャクの白変種である
シロクジャクが有名)にも白変種が存在することから、そうした白変種は
「氷河期を生き抜いてきた動物の末裔の証し」と言えるのかもしれません。

氷河時代の遺伝子が、現在まで脈々と引き継がれてきているというのは、
なんともドラマチックな説ですが、この説を知った時に私は「そういえば」
と思い当たることがありました。

それは…コチラをぜひご覧ください。

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2010年12月18日 (土)

シマウマの縞

今日はシマウマのお話です。

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むにゃむにゃ、シマウマですよ~
(グラントシマウマ 茶臼山動物園・長野市)

動物園でシマウマはよく見かける動物ですが、東アフリカのサバンナでも
シマウマはヌーに次いでよく見る動物です。

私が十数年前にケニアを初めて訪れた時、アンボセリ国立保護区へ向かう
途中で「初めて見た野生動物」が、このシマウマでした。
なにせ、初めて見た野生動物でしたから大感激で、豆粒ほどのシマウマを
写真に撮った覚えがあります。

でも、そのあといろんな動物たちに巡り合うと、よく見かけるシマウマは
珍しくもなくなり、だんだん興味も薄れてきて、写真すら撮らなくなって
しまいました。

そんなシマウマなのですが…

今では逆に、白と黒のシンプルなストライプがとても美しく思えてきて、
よく見かける動物とはいうものの、サバンナでも動物園でもよく写真に
撮る動物のひとつです。

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シンプルだからこそ、美しい…それがシマウマの魅力です
(グレービーシマウマ 多摩動物公園・東京都)

「シマウマ」という名前のとおり、「シマ」がある「ウマ」なのですが、
実際にはウマよりはロバに体型が似ていて、ロバに近い動物ということが
わかります。

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耳の形とか、シマウマさんに似ているでしょ?
(ロバ 東武動物園)

言うまでもなくシマウマの特徴は、その縞模様です。

白と黒の縞模様。道路の横断歩道が「ゼブラゾーン」と呼ばれるほどに、
その白と黒の縞模様はシマウマの代名詞とも言えるでしょう。

「シマウマの縞は、白地に黒?黒地に白?」とよく質問されるのですが、
これはどちらも不正解。縞模様は毛の色ですから地肌の色とは関係なく、
シマウマの実際の地肌の色は「黒」なのだそうです。
つまり、正解は「黒い肌から、黒い毛と白い毛(正確には白い毛ではなく
透明な毛=人間の白髪が白い毛ではないのと同じ)」ということですね。

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地肌は黒いんだって。みんな、知ってた!?
(グラントシマウマ マサイマラ国立保護区・ケニア)

さて、この縞模様ですが…なんで縞模様なのでしょう?

動物の「なんで?どうして?」にはいろんな説があって、「結局の所は、
よくわからない」ということも多々あるのですが、このシマウマの縞も
そのひとつかもしれません。

シマウマの黒い縞模様の部分は、太陽の光をよく吸収して温度が上がり、
白い縞模様の部分は光を反射して温度が上がらないので、そこに空気の
小さな対流が起こり、体温を保つ効果がある…

などという、かなり大胆な(?)説がある一方で。

シマウマの縞は、人間の指紋と同様に個体によって違い(これは事実)、
家族や仲間を識別するために縞模様がある…

という、いっけん真っ当な説もあるのですが、いちばん一般的な説は
「カモフラージュのため」というものです。

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シマウマだから縞があるの?縞があるからシマウマなの?
(グラントシマウマの親子 安佐動物公園・広島市)

「カモフラージュ」ということは、つまりライオンなどの肉食動物から
身を守るための模様ということなのですが、草原の中で白と黒の縞模様
となると、カモフラージュどころかかえって目立ってしまいそうです。

ところが、それは人間の目で見るから目立つのであって、ライオンなど
他の哺乳動物から見ると、目立たなくなってしまうのです。

それはなぜか。

実は霊長類(人間を含むサルの仲間)以外の哺乳動物は、色を識別する
能力が低いのです。これは、恐竜が地球上で繁栄していた頃の哺乳類が、
恐竜が寝静まった夜に活動していたことの名残だと言われています。

なので、人間が見たらこんな風に見えるシマウマも…

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白と黒の縞模様がハッキリと浮き出て見えます。
(グラントシマウマ マサイマラ国立保護区・ケニア)

ライオンたちが見ると、こんな風に見えるのかもしれません。

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周囲のブッシュと見分けがつきにくくなります。
(上と同じシマウマの写真を白黒処理したものです)

また、シマウマは群れで暮らしているので、縞模様が集団になると…

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人間の目で見ると、3頭のシマウマの境い目がわかりますが…

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モノトーンで見ると、シマウマの境い目がわかりにくくなります。
(グレービーシマウマ 多摩動物公園・東京都)

つまり個体を識別したり距離感を測りにくくなるため、ライオンなどが
襲おうとしてもターゲットを絞りにくくなる、ということになるのです。

肉食動物に捕食されることから逃れることで生きてきた草食動物たちは、
「捕食されにくくする」という進化を遂げてきました。
シマウマの縞模様も、その進化の結果…と言えるのかもしれませんね。

「進化」という必然性の結果で、この縞模様が生まれてきたとはいえ、
こうした美しい縞模様の動物になったということは、進化というものも
あながち無粋でもないなぁ、と思います。

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2010年12月 9日 (木)

ツノ、ありますけど…(3) キリンのツノは何本あるの?

今回のタイトルをご覧になって「え?キリンにツノがあったっけ?」と
思われる方も少なくないと思います。

長~い首と長~い脚のキリン。その独特なスタイルの印象が強いため、
それ以外のキリンの特徴は、あんまり記憶に残っていない、というのも
無理からぬことです。

でも、キリンのぬいぐるみなどには、たいていツノが付いているので、
「うんうん、あるよね、ちゃんと頭に2本のツノが立っているよね」と、
おっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、そんなキリンのツノのお話です。

では、早速ですが、キリンのツノは何本あるでしょう!?

この質問に正確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。

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え?2本じゃないの?鏡を見たことがないから、わからないなぁ
(アミメキリン 大森山動物園・秋田市)

これまで「ツノ、ありますけど…」のシリーズでは、
◆ウシ科とシカ科のツノの違いのお話
◆サイのツノのお話
…をしてきました。

簡単に言えば、ウシ科のツノは骨の一部で、体格とともに成長し続け、
抜け落ちることがなく、シカ科のツノは骨と分かれていて、1年ごとに
生え変わります。

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ウシ科のツノは、骨の一部だから抜け落ちないんだよ!
(アジアスイギュウ 多摩動物公園・東京都)

ウシ科やシカ科のツノは、必ず頭の左右対称に1本ずつ生えるのに対し、
サイのツノは頭の真ん中に生えてくるのですが、それはサイのツノが
骨格に由来するものではなく、毛が変化してできたものだから…という
お話でした。

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サイのツノは真ん中…もともとは毛が変化したものだからねー。
(クロサイ とべ動物園・愛媛県)

ここで、キリンにお話を戻しましょう。

キリンはウシ亜目に属する動物で、ウシ科やシカ科の動物たちと同様に
反すう胃を持っています。(反すうはリンクさせる)
そして、やはり他のウシ科動物と同様に上顎歯がなく、長い舌を器用に
使って木の葉を絡め取って食べています。

そうした生態はウシ・シカ科そのものなのですが、キリンはどちらにも
属さず、「キリン科」という別のグループを構成しています。
「首が長いから?」「背が高いから?」と思われるかもしれませんが、
同じキリン科の中には首が短いオカピもいて、首の長さだけが分類の
基準ではありません。
(キリンの祖先は首が短かったと言われています→詳しくはコチラ!

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ボクもキリン科だよ~
(オカピ よこはま動物園ズーラシア)

では、ウシ科やシカ科と何が違うのか…
その違いのひとつが「ツノ」なのです。

しつこいようですが、もういちどおさらいをします。
【ウシ科のツノ】
 骨の一部で体格とともに成長し続け、抜け落ちることがない。
 →死んで骨になっても、ツノは頭骨とくっついたまま
【シカ科のツノ】
 骨と分かれていて、1年ごとに生え変わりる。
 →死んで骨になると、ツノは頭骨から離れてしまう

骨とくっついているか、離れているか…それが大きな違いなのですが、
実はキリンは、「ウシ科のツノ」と「シカ科のツノ」の両方の特徴を
持っているのです!!

…といっても、「離れている」けど「くっついている」というのは、
いったいどういうこと?と思われますよね。「もしかして謎かけ?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが…実は本当の話です。

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離れているけど、くっついている!?どういうこと??
(アミメキリン サンブール国立保護区・ケニア)

キリンのツノは、子どもの頃は頭骨と離れていて、オトナになるに
ツノの中に骨の芯が出来てきて、それが頭骨とつながるのです。

今年の3~6月に国立科学博物館で開催された「大哺乳類展」の
「陸のなかまたち」では、子どもとオトナのキリンの頭骨の標本が
展示されていて、これを確かめる機会がありました。

たしかに…

それを見ると、確かに子どものキリンの頭部にはツノはあるものの
頭骨とはくっついていなくて、分離して展示されていました。
一方、オトナのキリンの頭骨にはしっかりとツノがついていました。

つまり、ツノという点に限って見てみれば…

子どものキリンの頭骨標本は、シカ科の頭骨と同じ
オトナのキリンの頭骨標本は、ウシ科の頭骨と同じ

ということになります。キリンは、そのツノの生成だけを見れば、
「最初はシカ科、あとでウシ科」ということになるのですね。

ただ、最終的に頭骨とツノがくっついていること、そしてシカ科の
ツノのように枝分かれしたり、頭骨にくっついていない子どもの頃
でもツノが抜け落ちないことを見ると、キリンのツノはウシ科に
近いもの、と言えるかもしれません。

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ボクのツノは、まだ頭の骨にくっついていないんだ…
(マサイキリンの子ども マサイマラ国立保護区・ケニア)

ちなみに、ウシ科と同様に頭骨にツノがくっついている構造なのに
シカ科のようにツノが枝分かれして、さらに年に1回生え変わる…
という、これもまたウシ科とシカ科の中間みたいな動物もいます。

別名「エダツノ(=枝角)レイヨウ」と呼ばれる「ブロングホーン」
という動物で、ウシ、シカ、キリン等が属するウシ亜目の中にあって
「ブロングホーン科」という、これまたウシでもシカでもない科に
属しています。ブロングホーン科には、ブロングホーンしか属して
おらず、キリンとオカピの2種類が属すキリン科よりもさらに小さい
グループです。

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ボクがブロングホーンだよ。
(ブロングホーン 金沢動物園・横浜市)

このブロングホーン、日本の動物園では大変珍しい動物で、横浜市
金沢動物園にしか(それも1頭だけ!)いません。
ウシ科、シカ科、キリン科、サイ科の動物は、各地の動物園で見られ
ますが、ブロングホーンを見ないことには「ツノの全種類制覇」には
ならないですから、ぜひ横浜市立金沢動物園へ行ってみましょう!

「ツノ、ありますけど…」シリーズを書き始めてから、いろいろと
調べていくと、ひと言に「ツノ」と言っても様々な種類があることが
わかりました。

結局、ツノって何なの?ということなのですが、一般的には「武器」
としての役割が大きいようです。メスや縄張りを争うオス同士の戦い、
天敵に襲われたときの反撃に、ツノ使われることがあるのはご存知の
とおりですが、その他にライオンのタテガミと同様、その「立派さ」
でオスの優劣を決める(特にシカ科)ことにツノが使われることも
あるようです。

あと、もうひとつの使われ方は…

背中を掻くことにも、ツノはよく使われています。
もっとも、これはツノ本来の役割ではなく、「便利な使い方」という
ことなのですが…ツノで背中を、気持ち良さそうに掻いている様子は
サバンナでも動物園でも、よく見られる光景だったりします。

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カユイところにツノが届く…便利だね!
(ベイサオリックス サンブール国立保護区・ケニア)

さて、結局キリンのツノは何本か、ということですが。

なんと!キリンにはツノが5本もあるのです!!

「え~!?そんなにあるの?」と言う方も多いかと思いますが…
それも無理はありません。目立つのは頭の上の2本だけですから。
あとの3本は、目の間に1本と、後頭部に2本生えているのです。

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ここにツノがあります!
(アミメキリン サンブール国立保護区・ケニア)

ただ、「あとの3本のツノ」は、成長したオトナにしか生えておらず、
キリンの頭骨標本を見ても、ちょっとした隆起にしか見えませんから、
「そう言われれば…」というレベルのものです。

しかし、同じキリン科でもオカピにはツノが2本しかないところから、
どうやらこれはキリン科の特徴ではなく、キリンそのものの特徴、と
言うことができるかもしれません。

ツノは動物の分類にも使われるくらいに、奥深いものですが…

人間の世界でも「ツノ」というのは「例え」としてよく使われるのは
ご存知の通りで、花嫁さんがかぶる「角隠し」がその代表例でしょう。
もっとも、こちらは「嫁入りにあたって、怒りの象徴である角を隠す」
という意味(俗説)だそうで…

人間にとってのツノは、どうやら「女性の怒り」のシンボルであり、
男性陣からすると「怖さの象徴」というところは、哺乳類の他の動物
たちとは「ツノ」の意味が大きく異なりますね。

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男性のみなさん、ツノに攻撃されないように気を付けましょうね
(アミメキリン 宇都宮動物園・栃木県)

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2010年10月17日 (日)

お父さん、がんばって!

先日、私のもうひとつのブログ「一枚の動物写真」に、こんな記事を
載せたところ、読者の方からいくつかのコメントをいただきました。

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座っているダチョウを見かけたので、そっと近付いてみたら…
オスのダチョウが卵を大事に温めていました。
(ソマリアダチョウ サンブール国立保護区・ケニア)

寄せていただいたコメントは、「お父さん素敵!立派!」といった
ご意見が過半数。でも、そうしたコメントを寄せていただいたのは、
もちろんほとんどが女性です。

ふだんは、コメントを寄せていただくのは男性・女性半々なのですが、
この日だけは女性が多く、男性からのコメントは少なかったのは事実。

やはり、男性陣にとっては「耳が痛い」内容だったのでしょうか。

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耳が痛い話は、タヌキ寝入りでやり過ごすに限るね。
(ホンドタヌキ 茶臼山動物園・長野市)

「一枚の動物写真」のほうは、この「ポレポレで行こう!」とちがい、
その名のとおり1枚の動物写真に短いキャプションという構成なので、
動物の詳しい生態については説明していません。

なので…

卵をじっと温めているオスのダチョウの写真と、短いキャプションを
ご覧になった男性の皆さんは、「こ、これは…触れないでおこう」と
思われたのかもしれませんね。

その背景には…、
 「自分は子どもの面倒を、カミサンに任せきりだからなぁ」
と、ちょっぴり後ろめたい気持ちがあったからかもしれませんね。

でも、実は…

哺乳類は、基本的に「お父さんは子育てをしない」というのをご存知
でしょうか。実際に、私がブログに載せたのはダチョウ…つまり鳥類。
哺乳類ではないのです。

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やっぱり子育ては、カミサン任せで行こう~!
(アカカンガルー 多摩動物公園・東京都)

鳥たちが、オスとメスが交代しながら卵を温め、ヒナが孵るとやはり
オスもメスも甲斐甲斐しくヒナたちにエサを与える姿…

そうした姿をテレビの番組などでご覧になった方も多いでしょうし、
実際にツバメやヒヨドリなどの子育ての様子を、ご覧になった方も
少なくないのでは、と思います。

あまりにも大型で、鳥類であることを忘れてしまいそうなダチョウも、
オスはちゃんと子育てに参加し、ヒナを育てていきます。

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ダチョウは夫婦でヒナを大切に育てていきます。
(マサイダチョウの家族 マサイマラ国立保護区・ケニア)

では、鳥類ではオスも子育てに参加するのに、なぜ哺乳類ではオスは
子育てに参加しないのでしょうか。

その違いは、実は鳥類と哺乳類のいちばん「大きな違い」に起因して
いるのです。では、その違いとは何でしょう?

鳥類と哺乳類のいちばん大きな違いとは…飛べること?

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コウモリは哺乳類だけど、空を飛べるよ!
(インドオオコウモリ 長崎バイオパーク・長崎県)

そうですね、コウモリは哺乳類なのに、空を飛ぶことができます。
それに、ダチョウは鳥類なのに、空を飛べません!

では、クチバシがあること?

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鳥にクチバシ、これは切っても切れない関係だね。
(オオサイチョウ 東武動物公園・埼玉県)

いえいえ、哺乳類にもクチバシがある動物がいるんです。
その名はカモノハシ。残念ながらカモノハシの写真がないので、
その姿をここでご紹介することができませんが…

さらに、驚くことにカモノハシは卵まで産むんです!!
でも、カモノハシは哺乳類に分類される動物。それはなぜ??

ここで「哺乳類」という文字を、改めてよく見ると…
つまり、ホニュウルイとは「哺乳する動物」という意味。つまり、
「お乳で子どもを育てる動物」、それが哺乳類なのですね。

カモノハシは卵から産まれた子をお乳で育てるという、非常に
珍しい動物なのですが、お乳で子どもを育てるということから、
「哺乳類」に分類されているのです。

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哺乳類とは、お乳で子どもを育てる動物を指すのです。
(インパラの母子 マサイマラ国立保護区・ケニア)

鳥類はオスとメスと交代で卵を温め、ヒナが孵るとオスもメスも
せっせとヒナにエサを運び、与えます。
この行動はオスもメスも関係なくできることで、ヒナを早く育て、
巣立たせるためには、オスとメスの共同作業をした方が効率的。

なぜ、そんなに効率的に育てなければならないか、というと…

いっけん安全そうな巣も、外敵に見つかってしまったら危険。
ヒナは飛べないので逃げられず、一発で餌食になってしまいます。
そのためには、一刻も早く育って巣立つことが大切なのですね。

さらに巣立っても、ヒナ鳥たちが成長して翌年に繁殖できるまで
育つ確率は非常に低いため、親鳥はヒナ鳥がひとり立ちすると、
また次の子作りを始め、できるだけ多くの子孫を残さなければ
なりません。

自分たちの種の保存のために、鳥たちは効率的に子どもを育てて
いく必要がある…ということなのですね。

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効率的といってもね、ちゃんと大切に育ててるよ。
(ライラックニシブッポウソウ ナクル湖国立公園・ケニア)

では、哺乳類はどうでしょう。

哺乳類はお乳で子どもを育てます。つまり、母乳で育てるという
わけなのですが、「母乳」というくらいですから、この役はオス、
つまり父親にはできません。

子育てに参加できないどころか、母子と一緒にいると食い扶持が
増えてしまうため、逆に邪魔モノ扱いされることになります。

そのため、哺乳類の多くはメスが子育てを担当し、オスは子育てを
せずに、ひとりで放浪していることが多いのです。

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ゾウの群れは基本的に母系集団。成熟したオスはいません。
(アフリカゾウ マサイマラ国立保護区・ケニア)

ここまで読まれた男性諸氏!

「オレ様も哺乳類だから、子育てはカミサンに任せておけば…」と
思うには、まだ早いですよ!

こういう光景をサバンナで見かけることがあります。

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中には、子どもと一緒にいる父親を見ることがあります。
(ライオンの父子 マサイマラ国立保護区)

「基本的に哺乳類のオスは子育てをしない」というのに、なぜ?
百獣の王ライオンなんて、最も子育てしなさそうな動物なのに、
この子どもとの仲むつまじい光景はいったい…!?

実際には、哺乳類の中には子どもと一緒にいるオスもいるのです。

たとえば、タヌキやキツネ、オオカミなどのイヌ科の動物たちは、
群れの中で父親が非常に重要な役割を果たしています。

その「役割」とは、教育係。
群れの中の規律や狩りの方法、危険察知の仕方など、生きるために
必要な知識を、子どもたちに教えていく役割…

とても重要な役割ですね!

いちばんわかりやすいのはサルの群れで、オスのボスザルは、
自分の子どもでなくとも、まだ小さいうちは、踏んづけられ
ようが乗られようが怒ったりしませんが、ある程度成長して
分別がつくようになってくる頃から、群れの中でのルールを
教えていくようになるのは、ご存知のとおりです。

その他、高度な社会性を持つことで知られるミーアキャットも、
オスは教育係として重要な役割を持っているのだとか…

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ウチのボスは、特にコワイんだ…今朝も怒られちゃった!
(ニホンザル 大森山動物園・秋田市)

つまり…

哺乳類のオスは、基本的には「子育て」はしませんが、高度な
社会性を持つ動物では、オスは「教育係」として重要な役割を
担っていて、子どもにとっては欠かすことができない存在という
ことになるのです。

「オレは哺乳類だから、子育てはカミサン任せでいいんだな!」
…と思った父親のみなさま。どうやら、哺乳類の世界はそんなに
甘くはないようで、やはり家族の中での父親の存在は重要という
ことのようですよ。

くれぐれも…

「食い扶持が増えるだけ」の存在にならなうように、ご注意を!

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ゾウの子育ては、母親任せだから気楽でいいゾー。
(オスのアフリカゾウ マサイマラ国立保護区・ケニア)

ちなみにオスのライオンですが…。

エサとなる獲物を狩るのはメスの役割ですが、食べる順位は一番。
子育てはおろか、子どもに狩りの仕方を教えるのも母親の役割…
と、群れのオスのライオンは、とにかく怠け者ですが。

でも、他のオスから子どもを守るという重要な役割を担っていて、
イザという時は命がけの闘いをするのです。普段は怠け者でも、
イザという時は頼りになる存在…というワケですね!

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父親のみなさま、がんばって!!
(オスのライオン 東武動物公園・埼玉県)


fight!

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2010年10月13日 (水)

キツネさんの悲劇

先日、私が書いているもうひとつのブログ「一枚の動物写真」に、
ヨーロッパオオカミが穏やかな顔で寝ている写真を掲載したところ、
「オオカミって、怖いイメージなのに…」という感想をいただき
ました。

以前に「オオカミって悪者なの?」という記事を掲載したことが
ありますが…「怖い」というイメージは、言うまでもなく人間が作り
あげたものであって、当のオオカミにとっては迷惑な話ですよね。

オオカミと並び、「悪者」のイメージがある動物といえば…

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まさか、ボクのこと!? …なんて言わないでよね?
(ホンドギツネ 東武動物公園・埼玉県)

そう、残念ながらキツネさんです。

「え?そうかなぁ…」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
日本人にとってキツネは、稲荷神社で神様のお使いとして祀られて
いるように、実は神聖なる動物というイメージがあるので、「悪者」
のイメージがあまり強くない…というのが実態かもしれません。

オオカミと同様、農作物を荒らすネズミを捕らえてくれるものとして、
キツネも古来から日本では「豊穣の神」であり「富をもたらすもの」
という側面が強かった…というのもあるでしょう。

ところが、そういうイメージを持っているのは日本人くらいのもので、
特にヨーロッパでは「陰険で狡猾な動物」という印象が強いのです。

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いま、穴掘りで忙しいから…そんな話は後回しにして!
(ホンドギツネ 盛岡市動物公園)

その理由は、2つの寓話によるものです。

ひとつは、言うまでもなく「イソップ物語」です。

イソップ物語には、実に多くのキツネが登場します。
「すっぱい葡萄」「キツネとツル(原題はツルではなくカラスだとか)」
「お腹のふくれたキツネ」「井戸の中のキツネとヤギ」「病気のライオン
とオオカミとキツネ」などなど…

これらの物語に登場するキツネは、ずるがしこく悪さをたくらむけれど、
最後は失敗して痛い目に遭う…という共通したパターンを持っています。

イソップ物語は道徳的な教訓を与えるための物語であると同時に、当時の
世情を風刺した側面もあり、ずる賢く振舞い、世渡りを上手にやっている
「イヤな奴」の代表としてキツネが登場し、最後にしっぺ返しを食らって
逃げていく姿に、当時の人々は小気味よさを感じていたのでしょう。

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はぁ、穴掘りは疲れるなぁ。え?僕がずる賢い?なんのこと!?
(ホンドギツネ 盛岡市動物公園)

もうひとつの寓話は、フランスの「ルナール物語」です。

このルナール物語というのは、紀元前の作とされるイソップ物語よりも
はるかに後、12世紀後半に作られた物語です。
キツネのルナールが主人公で、多くの部分でイソップ物語と共通性があり、
言うなればイソップ物語の中からキツネが出て来る物語を抽出し、当時の
「現代版」にアップデートされたもの…と言えるかもしれません。

やはり、当時の世情を風刺したものとして、当時のフランスをはじめ
主にヨーロッパ各地で大流行し、数々の「枝編」と呼ばれる物語が生まれ、
さらにルナール物語をベースとした「別の」ルナール物語が世界各地で
生まれたようです。

このルナール物語。
現在では「キツネ物語」という名前の方が一般的で、フランス語でも
ルナール(renard)とは「キツネ」を意味します。

フランス語でキツネのことをルナールと言うので、「狐物語」というワケ
ですね…と言いたいところですが、それは逆なのです。
実は、このルナール物語が世に出る前までは、フランス語でキツネは
「グーピル(goupil)」と呼ばれていたのです!!

つまり。

あまりにも「ルナール物語」が流行したため、いつしかキツネのことを
「ルナール」と呼ぶことになり、それが最終的に定着して、フランス語で
キツネのことを「ルナール」と呼ぶことになったのですね。

試しに「goupil」を仏和辞典で調べてみると…
goupil 【古】狐(=renard)
と、ちゃんと書いてあります。(クラウン仏和辞典)

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ボク、フランス語はわからないけど…
(ホンドギツネ 井の頭自然文化園・東京都)

これはキツネにとって哀れとしか言いようがありません。

「ずる賢い」というイメージと、「ルナール」という主人公のキツネが
セットのまま、「ルナール=キツネ」という意味になったのですから!
「キツネ=ずる賢い」という構図は、崩れようがないのです。

キツネさん、ここまで来ると本当にかわいそう…
もしかしたら、オオカミよりもかわいそうな存在なのかもしれません。

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そんな…ボクは何も悪いこと、してないのにナ。
(ホンドギツネ 富山市ファミリーパーク)

言うまでもなく、本物のキツネは「ずる賢い」などということはなく、
森や野原の生態系の中でも無くてはならない、重要な存在です。

キツネを「害獣」として駆除している実態もあるようですが、それは
あくまでも人間がキツネの生活範囲の中に入って生活しているからで
あったり、狩猟目的で本来の生育地ではない場所に移入されたものが
家畜を襲うようになったことが原因で、キツネそのものが「害のある
動物」というものでもありません。

野生のキツネは、家族の絆が非常に強いく、高いコミュニケーション
能力があることでも知られており、非常に「賢い」動物です。
本来は身近な野生動物のひとつとして、親しまれるべき動物なのだと
私は思います。

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野生の仲間たちも、平和に暮らせるといいなぁ…
(ホンドギツネ 井の頭自然文化園・東京都)

ちなみにスペイン語でキツネは「zorro」(発音はソーロ)だそうで、
「怪傑ゾロ」のゾロもこのzorroから来ているそうです。

もっとも、コチラは「ずる賢い」のではなく、強きをくじき弱きを助く、
大盗賊にして真の紳士、いわば正義のヒーローなのですが!

zorro

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2010年10月 6日 (水)

みんなで仲良く! ~生物多様性条約

机の中を整理していたら、こんなメモを見つけました。

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かわいい動物たちのイラストが描かれた小さなメモ帳です

たぶん…数年前に多摩動物公園で買ったものでしょう。

動物たちが楽しそうに仲良く集まっている様子が、とっても可愛いなぁ。

ほのぼのとメモ帳を眺めていて、ふと思いついたことがありました。
「生物多様性条約って、結局はこういうことなのかな」…と。

10月11日より、名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議が開催
されます。

この国際会議が開催されるのに関連して、テレビ番組などで動物たちを
特集した番組が放送されているので、「動物に関連する条約らしいぞ?」
ということはわかるのですが…

でも「動物」ではなく「生物」だし、「多様性」なんて難しいコトバが
入っているし…結局のところ、この条約って何のことよ!?
動物保護に関しては、ラムサール条約とか、ワシントン条約なら知って
いるけれど、それとどう違うのよ!?

…と思う方も、多いのではないでしょうか。

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セイブツタヨウセイ? それって、美味しいのかい?
(ナイルワニ マサイマラ国立保護区・ケニア)

たしかに、野生生物保護の国際条約としては、「ラムサール条約」と
「ワシントン条約」が有名です。

ラムサール条約は、湿地の保存を目的とした国際条約。
湿地の生態系を守ることが目的で制定された条約で、その制定は古く
1971年です。

海に囲まれ、湖沼も多い日本には、ラムサール条約に登録された湿地が
多いため、自然保護に関する国際条約の中では、私たち日本人にとって
馴染みのある条約かもしれません。

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フラミンゴの大群で有名なケニアのナクル湖も登録されています。

いっぽうのワシントン条約。
こちらは絶滅の恐れがある動植物の国際取引を規制する条約です。

条約の対象となる動植物は「附属書」という形でリストアップされており、
絶滅危惧のレベルに応じて、取引規制の強さが異なります。

直接的に野生動植物の保護をする条約ではありませんが、生きている
状態の動植物だけでなく、例えば牙や骨、皮などから作られた製品の
取引まで規制するという点では、かなり強力な条約だと言えます。

どちらも有名な条約ではありますが、簡単にまとめれば…
 ラムサール条約:湿地の生態系を保存することが目的
 ワシントン条約:絶滅の恐れがある動物の保護が目的

ということになり、地球上の野生動植物から見れば、限定的な内容と
言わざるを得ません。

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実際には、地球上にはいろんな動物たちがいるのですから…

実は、湿地に住む動植物も、絶滅の恐れがある動植物も、その動植物
だけを保護したところで「絶滅の危機から救う」ことにはなりません。

例えば…

ラムサール条約で湿地の生態系をいくら保護しても、湿地に流れ込む
川が枯れてしまったら湿地も環境が変化し、生態系が崩れてしまいます。

川を健全な状態に保つためには、上流の森林を守る必要がありますし、
森林を守るためには、森の中に生きる動物たちも重要な存在です。

森の中でも、シカが増えすぎたら森が食害によって荒れてしまいますから、
シカを適正な数に保ってくれる天敵…たとえばオオカミなどの存在も重要
になります。

つまり…

「オオカミが湿地を守る」ということも、言えなくもないのです。
これはまさに「風がふけば桶屋がもうかる」の世界ですが、湿地の生態系
には、湿地以外の多様な動植物も関与している、ということに他なりません。

…ということは。

いくらラムサール条約やワシントン条約で、特定の動植物を保護しても、
根本的な「野生動植物の保護」になっているワケではなく、野生動植物を
保護するためには、いかに多様な動植物が生存できる環境を維持、保護
するかが大切…ということになるワケです。

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野生動植物は、多様な動植物の関与の中で生きているのです。

ここで、ようやく「生物多様性条約」の登場です。

生物多様性条約というのは、実は「ラムサール条約」や「ワシントン条約」と
いった、限定的な条約の上位に位置している条約です。

…と言うと、難しく聞こえてしまいますが、つまり、こういうことです。

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「地球全体の動植物」を対象にしたのが生物多様性条約です。
※この図は概念的な考え方を示したもので、各々の条約の関連性を
 正確に表したものではありません。
※ここに示した条約は、自然環境保護を目的とした条約の一例です。

野生の動植物たちは、お互い深くに関係して生存しています。
なのに、個別の動物や環境を保護するための条約はあっても、動植物
全体の関係性(=多様性)を保護するための条約がない…

そんな背景から生まれたのが「生物多様性条約」なのです。
地球上の生物が、互いの関係を良好に保てるようにしましょう、という条約。
保護の対象は、地球上の動植物全体です。

地球上の動植物全体を対象としている、という特徴の他に、この条約には、
ほかの自然保護条約にはない特徴があります。

それは人間との共存を考慮し、「多様な動植物の持続可能な利用」を明記
していることです。

つまり、野生動植物や自然環境が存続できるレベルで利用をすると同時に、
人間もまた「地球上の多様な動植物の一員」として、動植物の多様性を維持
する責務も負う、というのが主旨なのだろうと思います。

D30_8586
私たちも、地球上の多様な動植物の一員なのです。

10月に始まる生物多様性条約会議。

難しい顔をした人たちが世界中から集まってきて、議論を交わし、最終的に
声明を採択し発表するのでしょうけれど。

そこでは、要するに「私たちを含めた地球上の仲間たちが、どうしたら皆で
仲良く暮らしていけるのか?」を考えている…と思うと、難しい名前の条約も、
身近に感じることができませんか?

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みんなで仲良く!それが生物多様性条約の主旨なのです。

Convention on Biological Diversity

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2010年9月22日 (水)

よく噛んで食べよう ~ウシ亜目のお話

9月のお彼岸まで続いた残暑。

でも、天気予報によると、彼岸過ぎから秋らしい気候になるとか…

ようやく秋…ですね。

秋といえば、なんといっても待ち遠しいのは「美味しいモノ」です。

秋の味覚といえばサンマ。今年は不漁で高値が続き、なかなか手が
出にくいですけれど、一度は食べておきたいものですね。

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高値のサンマ?そんな贅沢な…オレはアジだよ、アジ!!
(コツメカワウソ 長崎バイオパーク)

お店の果物も、梨やぶどうが並びはじめたり…

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木の実もたくさん実る季節だしね
(ニホンリス 井の頭自然文化園・東京都)

美味しいモノが揃い始めると、お腹もよく空くようになりますね。

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昨日のお肉は美味しかったなぁ…あー、お腹空いた。
(ユキヒョウ 多摩動物公園・東京都)

そんな時に…楽しいモノをいただきました。

見る角度によって絵柄が変わる、というものなのですが…

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いち!

R0013970
に!

R0013972
さん!

R0013973
よん!

…変化がわかりましたか?

ちょっとわかりづらいかもしれないので、アップにしてもう1回。

R0013976
いち!

R0013977
に!

R0013980
さん!

R0013982
よん!

キリンさんが、お口をもぐもぐさせているんです。
早く動かしてみると、これがなかなか面白い。ついつい、何度も
動かして見入ってしまいます。(かなり癒されます)

写真だと、この変化はなかなかわかりづらいですね。

こういうのを、レンチキュラーというのだそうですが…
何度も撮り直したのですが、なかなか上手く撮れませんでした。

…というワケで、実物のキリンだとこんな感じになります。

Tama_dsc_0891
いち!

Tama_dsc_0892
に!

Tama_dsc_0893
さん!

Tama_dsc_0894
よん!
(アミメキリン 多摩動物公園・東京都)

キリンは偶蹄目(正確には鯨偶蹄目)ウシ亜目という分類に
属する動物です。ウシ亜目というのは、別名「反すう目」と
よばれ、反すうをするのが特徴です。

キリンがこの口の動きをしている時は、反すうをしている時。
ご存知のとおり、反すうとはいちど食べた物を口に吐き戻し、
よく噛んでからまた胃に送り込むことを、何度もくりかえす
ことです。

反すうをする動物といえば、すぐにウシを思い浮かべますが、
ウシの他にこのキリンや、ヤギ、ヒツジ、ガゼルやインパラ
などのアンテロープ、シカの仲間など、実に多くの動物たちが
ウシ亜目に属していて、反すうをしています。

実はこのウシ亜目、長い進化の過程の中で、草食動物の中では
現在もっとも繁栄している動物のグループと言われています。

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ウシ亜目は、地球上最大の草食動物グループです。
(マサイマラ国立保護区・ケニア)

草食動物には、他に大きなグループとしてウマを代表とする
「ウマ目(別名「奇蹄目」)」というグループがあります。

ウマ目にはウマ、シマウマ、ロバなどのウマ科の他に、サイ科、
バク科がありますが…その3種類しかいません。

ウシ亜目に属する動物は、シカ科、ウシ科、キリン科などの
6種類で、ウマ目の3種類と大差ないような気がしますが…

ウシ亜目のシカ科、ウシ科に属する動物たちは種類が非常に
多いため、ウシ亜目にはウマ目よりもはるかに多くの種類の
動物たちがいるのです。

実は…

5000万~2300万年前には、ウマ目には現在よりも多くの種類が
存在したことが知られており、気候変動によりその多くが絶滅
してしまいました。

さらに生き残ったウマ目も、ウシ亜目の勢力に押されて衰退し、
ウマ、サイ、バクの仲間しか残らなくなってしまったのです。

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ウマ目には、かつてはもっと多くの種類がいたそうです…
(グラントシマウマ ナクル湖国立公園・ケニア)

ウマ目は衰退するいっぽう、ウシ亜目は逆に繁栄をしてきた…
なぜ、そんなことが起こったのでしょう。同じ草食動物なのに。

その最も大きな理由は「反すう」にあると言われています。

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え?反すうに理由があるって? 反すうも悪くないねぇ
(アフリカンバッファロー マサイマラ国立保護区・ケニア)

草食動物は、当然のことながら草を食べているわけですが…

草は肉に比べるとカロリーがはるかに少ないため、草食動物は
草をたくさん食べるだけでなく、徹底的に消化しないと、生存に
必要なエネルギーや養分を摂取することができません。

それゆえに草食動物は「草や葉から、いかにしてエネルギーや
栄養を摂取するか」という風に進化してきました。

ある動物は、盲腸を長くすることで食べた草を消化器官の中に
長く滞留させ、できるだけ養分を吸収するようになりました。

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ウマの盲腸は、なんと1m近くあるそうです。
(モウコノウマ 千葉市動物公園)

さらに、盲腸を長くするだけでなく、摂取した栄養分の消費を
抑えるために、睡眠時間を長く取っている動物もいます。

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コアラは盲腸がウマ以上に長い上に、1日20時間近く寝て
エネルギー消費を徹底的に抑えています。
(コアラ 埼玉県こども動物自然公園)

※コアラの生態についてはコチラもご覧ください!

しかし、ただ単に盲腸を長くしただけでは、食べた草は十分に
消化できません。というのも、繊維質が多い植物を効率よく
消化するためには、その繊維質を細かく切断する必要がある
からです。

つまり…「よく噛み砕く」必要がある、というこですね。

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いつもモグモグ、たまにペロリ!
(ホルスタインの子供 マザー牧場・千葉県)

反すうする動物は、いったん食べて胃に送り込んだ草や葉を
口に戻してまた噛み砕き、再び胃に送り込む…ということを
繰り返しているのですが、実はそれだけではありません。

反すうする動物の胃は、他の草食動物の胃とは構造が異なり、
4つに分化した胃を持っています。

4つのうち前方3つの胃には微生物が住んでおり、反すうと
組み合わせることにより、繊維質の多い草葉をその微生物が
まず徹底的に消化します。

その後、4番目の胃に送り込んで、栄養分をたっぷり含んだ
微生物を分解して、栄養分を体内に取り込む…という構造に
なっているのです。

正確に言うと、反すうする動物は植物から直接栄養を摂る
のではなく、いったん微生物に植物を十分に食べさせたあと、
その微生物を分解・吸収する、ということになりますね。

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なんだか、難しい話になってきたねぇ…
(ウォーターバック マサイマラ国立保護区・ケニア)

そうですね…ちょっと難しい話になっちゃいました。

つまり反すうする動物は、反すうして繊維質が多い草や葉を
よく噛み砕きながら、微生物の力を借りて消化することで、
繊維質が多い草葉を徹底的に消化する、ということですね。

これは、かなり徹底した消化方法です。

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徹底的に消化する、それが僕らウシ亜目の流儀です。
(ターキン 多摩動物公園・東京都)

でも、実は…

微生物を借りて消化するというのは、反すう行動を行わない
ウマ目でも、実は同じなのです。

ウマ目は胃ではなく腸に微生物がいて、そこで微生物の力を
借りてゆっくりと消化しています。

しかしウマ目は反すうを行わないため、消化しにくい繊維質は
そのまま腸に行くことになり、「徹底的に消化」という点では、
反すうして繊維質を細かく砕きながら消化するウシ亜目の方が
「徹底している」ことになります。

つまり…

栄養分が少ない草葉を徹底的に消化するために、「反すう」は
有利に働く行動で、理屈から考えると、
 ・同じ量の草ならば、ウマ目(=反すうしない)よりもウシ亜目
  (=反すうする)の方がより多くの栄養分を得られる。

 ・同じ栄養分を得るなら、ウマ目よりもウシ亜目の方が少ない
  量の草から得ることができる。

ということになるのですね。

それが、進化の過程では、ウマ目よりもウシ亜目の方が有利に
働き、同じ草食動物でも、結果としてウマ目は衰退、ウシ亜目は
繁栄したのだろうと、考えることができます。

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やっぱり、よく噛むことは大切なんだねー。
(ヤギ 遊亀動物園・甲府市)

ウマ目とウシ亜目には、そうした消化構造の違いがあるため、
サバンナでは、たとえばシマウマとヌーとでは食べる草の部分が
違ったりしますし、また、歯の構造も違います。

そのあたりの話は、「草食動物の共存(3)」に書いてあります
ので、ぜひコチラもご覧ください。

今回も、ちょっと(かなり?)難しい話になってしまいましたが…

ただ、これだけはひとつ!

結果的に、草食動物は「よく噛んで食べる」ウシ亜目が優位になり、
進化の過程で生き残ってきたのです。。

…ということは、「よく噛んで食べる」というのは、生き残る秘訣。
つまり、長生きの秘訣なのかもしれません。

みなさん、食欲の秋ですが、バクバク食べずによく噛んで、そして
よく味わいながら、ゆっくりと食べましょう!

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よく噛んで、食欲の秋を楽しもうね~!
(アミメキリン 金沢動物園・横浜市)


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2010年9月19日 (日)

敬老の日に寄せて

明日は敬老の日。

この頃になると、長寿の動物の話題がニュースに出たり、動物の
長寿を祝うイベントが動物園で催されたりするものです。

最近の「長寿動物」のニュースの中では、広島市安佐動物公園の
クロサイが、世界で登録されている動物園のクロサイとしては、
夫婦そろって最高齢…というのがオドロキでした。

新聞によると、安佐動物公園のクロサイのメス「ハナ」が44歳で、
世界最高齢。連れ合いのオス「クロ」が43歳で世界第2位。

これまでに2頭は10頭の子をつくり、今では「えさを食べるのも、
木陰で昼寝するのもいつも一緒」(朝日新聞 9月11日)だとか。

残念ながら、まだ安佐動物公園には行ったことがなく、また、
このクロサイの夫婦は高齢のため、一般公開をしていないそうで、
写真をここに掲載することができませんが…

「夫婦そろって」というのは、なんともおめでたいことです。

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僕らも長生きしなくちゃねぇ。(クロサイ 愛媛県立とべ動物園)

そんなニュースの一方で、長生きしてきたものの、残念ながら
亡くなっていった動物たちもいます。

最近では、長野市茶臼山動物園のライオン「ライ太」(享年23歳)、
そしていしかわ動物園の「デカばあちゃん」こと、カバの「デカ」
(享年58歳・推定)が、天寿をまっとうしました。

どちらも平均寿命よりはるかに長く生き、特にデカばあちゃんは、
カバの平均寿命が約40年と言われる中で、58年も生きたのですから、
とてつもない「ご長寿」だったワケです。(世界2位の長寿でした)

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昨年会ったときは、とっても元気だったデカばあちゃん。
この写真を撮影した日は、奇しくも昨年の敬老の日でした。

このデカばあちゃんは、以前の名は「カバ子」。
1952年ケニア生まれで、翌53年に菓子メーカー「カバヤ食品」が
購入して来日。キャラメルのキャンペンガールとして西日本や
東海地方を巡回して、子供たちを大喜びさせていました。

その後、岡山・北九州の動物園を経て1962年にいしかわ動物園の
前身である金沢動物園へやってきて、長く市民に親しまれてきた
そうです。

デカばあちゃんが亡くなった時は、金沢に住む私の友人からも
「子供の頃から親しんできただけに、とてもショック…」という
連絡が入ってきましたが、なんとアメリカ大リーグで活躍している
松井秀喜外野手からも遠征先から弔電が届いたとか…
(松井秀喜外野手は、いしかわ動物園のすぐ近くの出身です)

デカばあちゃんが、いかに市民に親しまれてきたかが伺われます。

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もうこの姿を見られないのは、なんとも寂しいことです。
(カバのデカばあちゃん いしかわ動物園)

さて、こうしてニュースになる長寿動物といえば、ゾウやサイ、
カバやライオン、キリンなどの大型動物が多いようです。

実際のところ、動物は大型になるほど長い年数を生きる傾向があり、
その寿命が人間の寿命と近ければ近いほど、生きた年数を人生と
重ね合わせることができるため、話題になるのだと思います。

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井の頭自然文化園の「はな子」は、私が幼い頃から知っています。
(ゾウのはな子に関するブログは
コチラへ)

しかし…

「長寿」というのは、本来はそれぞれの動物たちの平均寿命に対し
「さらに長生きした」ことを言うものですから。

日本最高齢の井の頭自然文化園のアジアゾウ「はな子」は63歳で、
これは文句なく「長寿」と言えますが…

イエネコならば平均寿命は10~15年程度ですから、18歳で長寿だし、
ハツカネズミは1.5~2年ですから、2年数ヶ月でも十分に長寿です。
動物園の人気者ライオンは、体格の割には寿命が20年と短く、
国内最高齢のライオンである徳山市動物園の「レオ」(23歳)は、
人間で言えば100歳近くになるそうです。

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私の知人宅のこのネコは、なんと20歳になるそうです。
(長崎県Mさん宅の愛猫 あいちゃん)

「動物たちには『時間』という概念はない」ということを、以前の
ブログで書きましたが(そのブログはコチラ)、あえて動物たちに
私たちの「時間」の概念を当てはめてみると…

日本人の平均寿命は男性が79.6歳、女性が86.4歳ですから、仮に
日本人男性の平均寿命を基準に単純計算すると、
 ライオンにとっての1年=日本人の4年に相当
 イエネコにとっての1年=日本人の5年4ヶ月に相当
 ハツカネズミにとっての1年=日本人の40年に相当
…ということになります。

これは、つまり…

ハツカネズミにとっては、私たちの40倍の早さで時が流れていて、
ライオンでも私たちの4倍の早さで時が流れている…ということに
なるワケです。

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ハツカネズミは、私たちの40倍の早さで時が流れていくのです。
(ハツカネズミ 横浜市野毛山動物園)

そう考えると、動物たちにとっての日々は、私たち以上に濃厚な
ものであり、大切にしてあげなければならない…と私は思うのです。

敬老の日は、長寿を祝う日ですが…

長生きを祝うだけでなく、地球上に生きとし生けるものすべてが
少しでも長く生き続けられるように、生命の大切さを改めて考え、
その重たさを実感する日でもあるような気がします。

人間自身はもちろんのこと、動物たちの「寿命」をも、私たちは
変えてしまう力を持ってしまったのですから…

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地球上の生きものたち、みんなが長生きできますように…
(ユキヒョウ 多摩動物公園・東京都)

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2010年8月25日 (水)

わたくし、アライグマです

最近、動物園で気になる動物がコチラ。

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なんだよー、「気になる」だなんて…コッチが気になるじゃんか。
(アライグマ in 市川市動植物園)

アライグマです。

アライグマは元々は北米~中米に住む動物。「クマ」と名が付きますが、
クマの仲間ではなく、イタチの親戚と言ったほうが近いかもしれません。

野生のアライグマは雑食性で、カエルやトカゲなどの小動物から昆虫類、
川の小魚や植物の果実まで、何でも食べます。

動物園によっては、リンゴやイモなどの食べ物をジャブジャブと洗う姿を
見ることができますが…

野生の個体が水際で小動物を漁る際の姿が、手を洗っているように見える
ことからその名がついた…と言われていて、「食べ物を洗っているのでは
ない」という説が有力だったのですが、最近の研究で野生の個体も「洗う」
という行為をすることが確認されました。

「洗うからアライグマ」というのは、最近立証されたことなのですね

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やっぱりアライグマだからね。洗いますよ、そりゃ。
(アライグマ in 秋田市大森山動物園)

さて、このアライグマ。

どこの動物園に行っても必ずいる、と言っても良いくらい、ポピュラーな
動物なのですが、アライグマの写真を撮っているとよく聞くのが…

「あ、フウタがいるよー!」

という子供の声。「フウタ」とは、言うまでもなく千葉市動物公園の
レッサーパンダ、風太のことです。「後ろ足で立つ」ということで
にわかに大ブレイクした風太。

千葉市動物公園には風太の像まで建っています。

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風太さん、ついに像が建つまでになりましたか… (千葉市動物公園)

風太の影響で、レッサーパンダは脚光を浴びることにになったのですが、
それまでは「パンダ」といえば白黒の「ジャイアントパンダ」のことで、
レッサーパンダはちょっと隠れた存在でした。

むしろ風太登場以前は、逆にレッサーパンダを見て「あ、ラスカルだ!」
と言われていたそうで…つまり、アライグマの方が人気だったのです。

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風太?知らないなぁ…そいつは空でも飛ぶのかい?
(アライグマ in 秋田市大森山動物園)

ちなみに「あらいぐまラスカル」が放送されていたのは1977年。

フジテレビ系列の「世界名作劇場(カルピス子供劇場)」で放送されて
いたのでした。当時、この番組を子供の頃に見ていた人たちは、今は
もう40歳代(私もそうです)になるワケで、今の子供たちは「ラスカル」
なんて知らないかと思いきや…

先日、秋田市の大森山動物園でアライグマを撮影していたとき、小さな
子供がアライグマを見て「あ!ラスカル!」と呼んでいたのを耳にして、
ちょっぴり嬉しくなりました。

今の子供たちも、「あらいぐまラスカル」を知っているのですね。
永遠の名作だもんなぁ…。

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ラスカル?知らないなぁ…そいつも空でも飛ぶのかい?
(アライグマ in 秋田市大森山動物園)

そんなラスカル、いや、アライグマですが…最近「お気に入り」なのです。

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だからさぁ…なんで「お気に入り」なのよぉ~
(アライグマ in 群馬県・桐生が岡動物園)

まず、このつぶらな瞳です。

動物写真を撮る時の原則は、「目にフォーカスを合わせること」なので、
いつもファインダー越しに動物の目をみつめるのですが…

このアライグマのつぶらな瞳に見つめられると、ちょっと弱いんですよね。

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見つめられると、ついつい見つめちゃうんだけど。
(アライグマ in 長野市・茶臼山動物園)

アライグマはとても好奇心旺盛な動物なので、大きなレンズを向けると
興味津々で見つめてくれるのです。レンズを向けると、怖がって逃げたり、
視線をそらす動物も多いのですが…

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何を見てるんだよー、上から視線なんて失礼だなー
(アライグマ in 長野市・茶臼山動物園)

そして次に、けっこう仲間どうしの仲が良いことです。たまに小競り合い
していることもありますが…

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どれどれ、歯グキを見せてごらん?
(アライグマ in 秋田市大森山動物園)

大勢のアライグマがいる長崎バイオパークの光景は圧巻で、寒い時期に
行くとこのとおり。

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みんな集まれば暖かい、とはいえ…この秩序の無さはどうでしょう?
(アライグマ in 長崎バイオパーク)

さらに、仕草がけっこう変化に富んでいて、なかなか楽しいのです。

なんでこうなるの!?という格好をしてみたり…

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この格好で、苦しくないのでしょうか?
(アライグマ in 長崎バイオパーク)

よくわからないけど、ひとりで(一匹で)悩んでみたり…

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アライグマだって、悩むことがあるんだよ…
(アライグマ in 長崎バイオパーク)

暑さのあまり、でれ~っと伸びてしまったり…

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今年の夏は、あづいよ~ アイスキャンディが食べたい…
(アライグマ in 羽村市動物公園)

とにかく見ていて飽きないのです。いろんな仕草を見せてくれるので、
最近はアライグマでの滞留時間が長くなってきてしまいました。

そんな可愛いアライグマなのですが…

実は日本では、野生化してしまったアライグマが農作物を荒らしたり、
屋根裏に住み着いたりして問題を起こしています。

日本の生態系に悪影響を与える動物として、特定外来生物に指定されて
いるだけでなく、日本生態学会の「日本の侵略的外来種ワースト100」
という、いかにも「侵略者」「悪者」という動物に指定されています。

言うまでも無く、これはペットとしてアライグマを飼い始めたものの、
成長すると気性が荒くなるアライグマに手が負えなくなり、野山に
放した(捨てた)ものが、野生化したものです。

もともとは人間の勝手で輸入され、飼われたものが、またまた人間の
勝手で捨てられ、さらに害獣指定までされて、駆除の対象となる…
野生化したアライグマは、ただ生きてきただけなのに、アライグマに
とっても、影響を受ける日本の野生生物たちにとっても、何とも切ない
展開です。

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ホントは、平和な動物なんだけどね…
(アライグマ in 秋田市大森山動物園)

…と、なんだか重たい話になってしまいました。

最後にひとつ「発見」したことを…。

この記事を書くにあたって、改めて「あらいぐまラスカル」を調べて
みたのですが、ラスカルの体は茶色。しっぽの模様も茶色に白の縞。
アライグマより、レッサーパンダによく似ています。

著作権の制約があるので、ラスカルの絵を掲載することはできませんが、
レッサーパンダとラスカルをぜひ、見比べてみてください。

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もしかして、ラスカルとは僕のこと!?
(レッサーパンダ in 市川市動植物園)

いまだに、レッサーパンダを見て「あ!ラスカルだ!」と言う子供に
遭遇したことはないのですが…。

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アライグマに似ている(?)レッサーパンダのかわいい姿はコチラ

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2010年7月28日 (水)

真夏の動物園より…

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暑中お見舞い申し上げます。
(ボルネオオランウータン 都立多摩動物公園)

いやはや、連日暑いですね。

私が子供の頃は、気温が30℃ともなると「暑い!」と思い、プールの授業が
待ち遠しかったものですが…昨今では気温30℃は「東京の夏なら当たり前」
という気温になってしまいました。

たった三十数年で、それだけ温暖化が進んだということなのでしょうが…

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暑いよぉ~ (クモザル 桐生市立桐生が岡動物園)

これだけ日中は35℃前後まで気温が上がり、夜も25℃を下回らない日が
続くと、もはや日本の夏は「温帯の夏」ではなく「熱帯の夏」に近いのでは
ないだろうか、と思ってしまいます。

そんな暑さの中、動物園の動物たちも…

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日本の夏は暑いです… (シフゾウ 都立多摩動物公園)

動物園には、暑い場所に住む動物から寒い場所に住む動物まで、いろいろな
動物がいます。言うまでもなく、寒い場所に住む動物にとって、日本の夏は
かなり堪えるようで…

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もう、やる気が何も起きませ~ん
(レッサーパンダ 県立いしかわ動物園)

中国内陸部の寒い所に住むレッサーパンダはもちろんのこと、その名の通り
いかにも暑いところが苦手そうなユキヒョウも、

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この暑さ、何とかならんのかねぇ… (ユキヒョウ 都立多摩動物公園)

どうにもならない様子ですし、

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ここ日本生まれのペンギンたるもの、暑さに負けてはならぬ…
(フンボルトペンギン 愛媛県立とべ動物園)

と、じっとガマンしていたペンギンも、

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やっぱり、プールは涼しいねぇ… (同上)

と、たまらずプールに飛び込んで涼んでいる様子。
寒いところの動物ばかりでなく…

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もう、ここから動けませ~ん (アジアスイギュウ 多摩動物公園)

暑い東南アジアからやってきたアジアスイギュウでさえも、この有り様。
同じく東南アジアにいて、暑さには強いはずのアジアゾウも、

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暑いから、外に出たくないよ…
(アジアゾウ 長野市立茶臼山動物園)

…と、外に出たがりません。夏の砂浜に行くと、甲羅干しをしている人を
よく見かけますが、本家本元の「甲羅干し」のカメさんも、

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こんな日に水から出て甲羅干しなんて、干からびちゃうよ。
(アカミミガメ 桐生市立桐生が岡動物園)

と、さすがに水から出てきません。

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雨でも降らないかなぁ… (ミーアキャット 羽村市動物公園)

そう、夕立でも来て涼しくなって欲しい気持ちも、よ~くわかりますが、
ひとたび雨が降ると、降ったら降ったで集中豪雨になったりしますから、
この夏はホントに異常ですね。

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うーん…たしかに、異常だ。 (アライグマ 羽村市動物公園)

そんな暑さの中で、暑いのをそれなりに楽しんでいる動物もいたりします。

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こんにちは~、ベンガルトラのシズカです。暑さに負けていませんか?
(ベンガルトラ 都立多摩動物公園)

トラはネコ科の動物なのに、水遊びが大好きです。

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ひゃ~、気持ちイイ! (同上)

トラがいる動物園には、たいていパドック(運動場)には小さなプールが
あって、夏の暑い日にはプールで涼んでいるトラを見ることができます。

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ん?この気持ちよさを、他のネコ族はご存知ない!? (同上)

東南アジアの温暖な地域に住むベンガルトラは、泳ぎも達者なのですが、
同じトラでも、寒いところに住むアムールトラなどは泳がないのだとか。

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暑いけど、ボクは泳ぎませんっ! いや、泳げませんっ!!
(アムールトラ 長野市立茶臼山動物園)

水と縁が深い動物といえば、やはりコチラの動物でしょう。

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ひょえ~、気持ちいい~! (カバ 愛媛県立とべ動物園)

いかにも涼しげなカバさんです。他の動物たちからも羨ましがられそう。

真夏の動物園も、動物たちのダレた姿を見ることができて、それはそれで
けっこう楽しいものです。夏休みも始まったことですし、真夏の動物園も
ぜひ遊びに行ってみてください。「真昼は暑くて…」という方には、夜の
動物園もオススメ。動物園によっては「ナイトZOO」として、夜8時くらい
まで開園している所もありますから。

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真夏の動物園に来るときは、暑さ対策をお忘れなく~
(ヒョウ 愛媛県立とべ動物園)

その通り、真夏の動物園は地面からの照り返しも多く、想像以上に暑い
ですから、、日焼け対策だけでなく、十分な水分補給もお忘れなく!

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